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アリア奮闘記  作者: 羽月
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「・・・・とは言っても、実際私が出来る事って何かしらね?」


妃候補を外された今、簡単に殿下に会うこともままならない。

これでは、何をすればいいのか、殿下がどう動いているのかも把握出来なかった。


「そうですね・・・。とりあえず殿下も何かお考えの様ですし、様子を見てみますか?」


「そうね・・・。でも、いい加減部屋に籠っているのも退屈なのよね・・・・」


顎に手を置き考えてみるが、いいアイデアは浮かばない。


「でしたら、久しぶりにお散歩などされてはいかがですか?・・・ただし、私もご一緒させて頂きますが」


マリアは最後を強調するように言った。


「・・・そうね。ゆっくり散歩でもしてみましょう」


少し頭の中をすっきりさせる為にも、外の空気を吸う事にした。

殿下を信じると決めてからは、何をするにも怖くなかった。


「久しぶりにこの庭にも来るわね」


着いたところは後宮の庭だった。


「しかし、大丈夫でしょうか?候補を外れたはずの私どもがこちらに来ても・・・」


マリアは心配そうにこちらを見ていた。

他の候補者達も私が候補を辞退したことをすでに知っているだろう。

その上で、こんなところを見られたらなんと言われるかわかったものじゃない。


「そうね。他の方に見られても行けないし、少し歩いたら図書室に行ってみましょう?何かわかるかもしれないしね」


久しぶりの庭は太陽の光をうけて噴水から噴き上げられる水がキラキラとしていた。


「・・・なんだか、今の私の気分みたいね・・・」


くすりと笑うと、後宮の方から声が聞こえてきた。


「アリア様!誰かこちらに来られます!急いで隠れて下さい!!」


マリアは私の手を引いて建物の影に隠れた。

すると、その声はどんどんこちらの方へ近づいてきた。


「・・・やっと、あの人がいなくなってくれたわね!大体、この国を謀るなどと愚かな事を考える様な女に妃が務まるわけがないわ。まぁ、最初から選ばれるとは思っていなかったけれどね」


聞こえてきた声はナーシャだった。


「左様でございますね!これで、ナーシャ様が殿下のお妃様ですわ!!」


侍女は媚びるようにナーシャに話しかけていた。


「ほほほ!当然よ!あのリーナとかいう娘は最初から辞退を殿下に申し入れていたし、ミーナとかいう生意気な娘を殿下が選ぶはずないわ!大体、他国から妃を選ばなくても我がハリュー家と縁を結べばフィルナリア国も更に安泰ですのに」


「まったくですわ!しかし、そうなるのも時間の問題です」


「そうね。さぁ、これから忙しくなるわ!妃になるに相応しいドレスや小物の用意をしなくては!早速仕立て屋を呼んでちょうだい!!」


ナーシャと侍女は私たちに気づく事もなく庭を通り過ぎて行った。


「・・・・・どれだけ図々しいのでしょうね・・・。もう妃になる気満々ではありませんか」


マリアは眉間に皺を寄せ、ナーシャ達が去っていった方を見つめていた。


「・・・まぁ、でもあの会話ではナーシャ様が今回の件に関わっていらっしゃる様子はないようね・・・」


「そうでしょうか?・・・まぁ確かに、あの図々しさでしたら、もっとやり方が単純な様な気も致しますが」


毒をはくマリアに苦笑しながらもナーシャ達が去ったのを確認すると建物の影から出て、ナーシャが去った方とは逆の方へ向かった。


「アリア様?どちらへ?」


「図書室よ。少しあそこで時間をつぶしましょう」


「・・・しかし、問題があったのもあそこですし、やはりあまり近づかない方が宜しいのではありませんか?」


マリアは心配そうに私を見ていた。


「今の私に罪をかぶせたって仕方ないわ。それに、少し調べてみたい事があるの」


私は図書室に向かってまた歩き出した。

『調べてみたい事』

そう。少し気になっていた事があったのだ。

そもそも、どうやって私が読んでいた本がわかったのか?

なぜ、最後は借りてもいないのに、密書がみつかったのか・・・・。


「・・・あまり動き回られるとまた殿下よりお叱りがあるのではありませんか?」


心配そうに私の様子を伺うマリア。


「大丈夫よ。図書室をちょっと見たらすぐに部屋に戻るから」


大体、殿下にお会いすることももうないだろう。

渋るマリアを気にせず私はさっさと先へ進んでいった。

しかし図書室に着くと、入り口には鍵がかかっていた。


「あら・・・・。鍵がかかっているわ・・・」


「本当ですね・・・・。きっと殿下がかけられたんでしょう。さぁ!図書室には入れない事ですし、部屋にもどりましょう!」


マリアは安心した様に部屋へ向かって歩き出した。


「残念だわ・・・・」


部屋に入って確認したい事もあったのに、鍵がかかっているのなら仕方がない。

マリアに続き部屋へ戻ろうとした時、ふと後ろの方から誰かに見られているような気がした。


「アリア様?」


立ち止まって後ろを振り返る私にマリアが声をかけてきた。


「・・・・・なんでもないわ。行きましょう」


振り返った先にはだれもいなかった。

確かに、誰かに見られていた様な気がしたのだが・・・。








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