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エレナはため息を着くとゆっくりと話し始めた。
「・・・・アリア様。落ち着いてお聞きください。セイリーンの傷は深く心の蔵にまで達しておりました。出血もひどく助けることは困難だと・・・・」
そこでエレナは言葉を詰まらせた。
「・・・・・それで、セイリーンは・・・・?」
震える手をしっかりと握り締めた。
「・・・・アリア様が気を失っているときに亡くなりました・・・・・」
目を伏せて答えるエレナは涙を流すのを我慢しているようだった。
「・・・・亡くなった・・・・?・・・・・それは・・・・・・・私の・・・・・せい・・・・・」
それを聞いたエレナは凄まじい勢いでそれを否定した。
「違います!!アリア様のせいではございません!!」
「ううん・・・・・私をかばったの・・・・・セイリーンは・・・・・私のせいで!!!!いやぁ!!!!」
私が取り乱す中、扉からノックの音が聞こえた。
返事も待たずに入ってきたのはクレインだった。
「クレイン様!!返事も待たずに部屋に入室するとは何事ですか!!」
エレナは私を落ち着かせながらもクレインを睨んでいた。
「・・・アリア様と少しお話をさせてください」
「見てのとおり、今は錯乱状態なのです。お話など・・・」
「いいえ。今話をするべき人間は私しか居ないと思います」
まっすぐに見つめてくるクレインにエレナはアリアを見るとため息をついた。
「・・・はぁ・・・。わかりました。よろしくお願いいたします。クレイン様」
エレナは錯乱状態の私をそのままクレインへと預け、部屋を後にした。
「いやぁ!!私が!!私がぁ!!」
「・・・・・・アリア様」
「セイリーン!セイリーン!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「アリア様」
「私が・・・私がいなくなればよかったの!!私がいけなかったのだから!!私が死ねばよかったのよ!!」
私が叫んだと同時に右頬に鋭い痛みが走った。
「アリア様!!」
クレインの声にハッとし、無意識のうちに右頬を押さえていた。
「・・・・申し訳ございません。痛かったですか?」
右頬を抑えていた私の手の上にクレインの手が重ねられた。
言葉が出ない私は必死に首を横に振った。
「アリア様。死ぬなどと言わないでください。あなたはこの国になくてはならない存在なのですよ?」
優しく私に話しかけるクレインに私はまた心が締め付けられる思いだった。
「・・・・なくてはならない存在?ううん・・・。私のせいでセイリーンは死んでしまったのよ?私がいなければ・・・私があんなところに行かなければ、セイリーンが死ぬことなんてなかったのに!」
「アリア様!!」
クレインの鋭い声に思わず体がびくりと固まった。
「・・・・セイリーンはあなたをお守りして亡くなったのです。命をかけて守った命を粗末にするおつもりですか?セイリーンの死を無駄にするおつもりなのですか?」
クレインの瞳には悲しみと怒りが含まれていた。
「・・・無駄・・・?」
「そうです。あなたがそうやってご自分を責めることはセイリーンを責めることと同じことです。守られた命は今以上に大事にして生きてください。ご自分を大事にすることで、あなたを守ったセイリーンも喜ぶでしょう。そして、あなたが自分を大事にする事で、他の者も救われるのです。どうか・・・・どうか、それを心に留めておいて下さい・・・・」
クレインの涙が頬をつたっていった。
「・・・・ごめんなさい・・・。クレイン。本当にごめんなさい。・・・もう言わないわ・・・。私、もう逃げない。ちゃんとセイリーンに守ってもらったこの命を大事にする」
「はい。・・・私もセイリーンが守ったあなたのお命。あなたがご自分を大事にされる限りあなたをお守り致します」
クレインは膝をつき、私に騎士の誓いをした。
その時から、クレインは私の騎士となりいつでも身を守ってくれた。
そして、私が間違っている方へ行こうとしたらいつも正しい道へと導いてくれた。
1話程抜かして投稿してましたので、訂正して投稿致しました。