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「待ちなさい!!!」
男の短剣が振り下ろされる寸前、セイリーンの声が聞こえた。
「その方を今すぐ離しなさい!!」
男が振り返るとそこにセイリーンが立っていた。
「ち!また見つかっちまった。静かにしねぇとこの譲ちゃんの命はねぇぞ!」
先程まで振りあげられていた短剣が今度は私の首にあてられていた。
「やめなさい!すでに此処に騎士が向かっています。今あなたが何かをすればすぐに捕まるでしょう。その方を解放すれば、ここにいた事は見逃してあげるわ!!」
セイリーンが大声で叫ぶが、男は一向に短剣を下ろすそぶりは見せなかった。
「・・・そうは言ってもねぇ。もう俺の顔を見られていちゃそう簡単にはいそうですか。とはいかないだろう」
がしかし、男は腕に抱きかかえていた私を地に降ろした。
そのスキにセイリーンの元へ走り出した。
「セイリーン!!」
だが、足を踏み出すと同時にまたもや腕を捕まえられた。
「おいおい。だからそう簡単にはいかないんだよ」
「アリア様!!・・・その手をお離しなさい!!」
男は持っていた探検を振り上げそのまま私めがけて振り下ろしてきた。
「死ねぇ!!!!!」
「きゃぁぁぁ!!!」
私はつかまれている腕とは反対の手で頭を被い目を瞑ってしまった。
しかし、刺された痛みはなかった。
そぉっと目を開けると目の前にはセイリーンの姿があった。
「・・・アリア様・・・ご無事ですか・・・・」
ニッコリと笑うセイリーン。
「・・・・セイリーン・・・・・」
助かった!!
セイリーンが助けてくれたんだ!!
・・・・そう思った。
だけど、助かったのは私一人だった。
「・・・ご無事でよかった・・・・・・」
その瞬間、セイリーンの体が傾いた。
「ちっ!この女邪魔しやがって。まぁどうせ殺るつもりだったし、手間が省けたか・・・。次は確実に行くぜ?お嬢ちゃん」
倒れたセイリーンの背中には短剣が突き刺さっていた。
男はそれを抜くとペロリと探検を舐めた。
「セイリーン!!!!!」
その場に倒れたセイリーンに私は覆いかぶさった。
「心配しなくても、お嬢ちゃんもすぐに一緒のところに連れていってやるよ!」
再び振り上げられた短剣に私はまた目を瞑った。
「アリア様!!!」
聞こえた声はクレインだった。他にも騎士を従えクレインが助けに来てくれたのだ。
クレインは振り上げられていた探検を自分の剣で弾き飛ばすと、すぐさまその男を捕らえた。
「・・クレイン・・・。・・クレイン!!セイリーンが!!セイリーンが!!!」
泣き叫ぶ私の声にクレインはこちらを振り返った。
「・・・セイリーン・・?セイリーン!」
クレインがセイリーンの側に駆け寄りその体を抱きかかえた。
「セイリーン!!セイリーン!!目を開けてくれ!!お願いだ・・・。セイリーン・・・」
クレインはセイリーンの体を抱えたまま泣き崩れてしまった。
「・・・クレイン様。こいつはどうしますか?」
クレインと一緒に助けに来てくれていた別の騎士がクレインに声をかけた。
涙を拭うとクレインはセイリーンを抱きかかえたまま立ち上がった。
そこにはセイリーンの恋人としてのクレインではなく騎士としてのクレインがいた。
「・・・そいつは牢屋に入れておけ。それよりもアリア様を部屋につれていきすぐに医者を呼べ。どこかおケガをしていなか確かめさせろ。セイリーン・・・・この侍女は私が連れていく」
そう言うと、クレインは私の方を見ることもなく王宮へと歩きだした。
「・・・・セイリーン・・・・・」
セイリーンの背中から大量の血が流れていた。
「セイリーン・・・・・セイリーン・・・・いやぁぁぁぁ!!!!!!」
目の前にした光景が蘇って来た私は叫び声を上げると同時にその場で意識を失ってしまった。
次に目が覚めたときには、自分のベットの上だった。
「・・・・私・・・どうしたんだっけ・・・?」
側にいたのは女官長のエレナだった。
「アリア様!!お気づきになられましたか!!」
「エレナ?私一体どうしたの?」
「・・・あぁ。ご無事でよかった。本当に・・・・」
安堵の表情を浮かべるエレナの様子に私は徐々に今まであった事を思い出してきていた。
「・・・・エレナ・・・。セイリーン・・・、セイリーンは!?」
ベットから起き上がる私にエリナは慌てた。
「アリア様!!落ち着いてください!!お体に触ります!!」
「セイリーンはどうしたの!?ねぇ!!エレナ!!」
エレナの手を振り払い私は問い続けた。
それを見て諦めたのか、エレナの顔はどんどん暗くなっていった。
「・・・・・・アリア様・・・・」
言葉に詰まるエレナ。
なんだかとても怖い予感がした。
「エレナ・・・?」