39
部屋に戻ると、マリアが慌てて私の傍にやってきた。
「アリア様!!お待ちしておりました!!」
「どうしたの?マリア。そんなに慌てて」
「ええ!いち早くアリア様にお伝えしたくて!!リーナ様よりお茶会のお誘いがありました。アリア様に随分とご無沙汰してしまって申し訳ない。ぜひ参加してください。との事ですわ!!よかったですね!アリア様!」
「まぁ!本当に!早速、ぜひお伺いさせていただきますとお伝えして頂戴!」
マリアも頷き、急いでリーナの使者の元へと走った。
例の件があってリーナとも疎遠になっていたが、久々にリーナに会えると聞いて私も素直に嬉しかった。
「よかったわ。きっとリーナ様も殿下からお聞きになって私が犯人ではないとお知りになったのね!ふふ。とても楽しみだわ!」
リーナからのお誘いを受けたことで私はすっかり気分が良くなってしまっていた。
***********************
「ご無沙汰いたしております。アリア様」
「ええ!こちらこそ、体調が優れないとお伺いしましたが、お体の方はいかがですか?お見舞いにお伺い出来ず申し訳ありませんでした」
翌日の暖かい日差しの差し込む午後。
天気がいいからと、リーナの部屋のテラスでお茶をする事になった。
「いいえ。アリア様には何度も訪ねて頂いていると聞いておりました。しかし、体調の良くない時の私を見られるのが恥ずかしくお断りさせていただいてましたの。せっかくのお申出を断ってしまってごめんなさい」
「いいえ!こちらこそ気づかなくて申し訳ありません!」
リーナはにっこり笑うと少し俯いた。
いつものリーナとはどこか雰囲気が違っていた。
「リーナ様?まだ、体調が優れないのではありませんか?」
無理をさせてしまっているのだろうかと不安になり、リーナの様子を伺った。
「・・・・いいえ。アリア様・・・・」
すると今度は思いつめたようにこちらを向き私の目を見た。
「・・・・・・私、とても言いづらくて、とても信じられないのです」
「・・・どうされたのですか?」
「アリア様・・・・」
じっと見つめてくる目はなぜかとても悲しそうだった。
「リーナ様?」
意を決した様にリーナは口を開いた。
「・・・・・・・・どうか、自国にお戻りください」
リーナの突然の言葉に、私は返事を返す事も出来ず目を丸くさせた。
「・・・・アリア様。私、信じられませんでした・・・・。まさか、アリア様がこの国を陥れようとされているなんて・・・・・!!」
さらなるリーナの言葉に私はハッとして、思わず席を立ってしまった。
「リーナ様!!誤解ですわ!!私はそんな事しておりません!!」
叫ぶ様な私をリーナは一瞥し視線を外に移した。
「・・・・今さらですわ。アリア様。私、見てしまったのです。アリア様が書かれた密書を」
「・・・・私が書いた・・・?」
「ええ。先日頂いたお手紙と筆跡が同じでした・・・。・・・・私、レオナルドお兄様のこの国を陥れようとなさる方を許せません。・・・いくらアリア様でもです・・・。せっかく、お友達になれたと思っていたのに・・・・。まさか、私をだましていたなんて・・・・」
リーナの目には涙が浮かんでいた。
「・・・リーナ様。・・・・本当に信じて頂けないのですか?私がそんな事をすると・・・?」
「・・・するもしないも、実際になされているではありませんか・・・。お兄様にも報告させていただきました」
「え、ええ!存じております!殿下からお話も伺いました。しかし、殿下は私ではないだろうとおっしゃってくれています!」
「・・・・お兄様はお優しいから。あなたから本当の事を言ってくれるのを待っているのですわ。一度は貴方を選んだのですから」
「リーナ様・・・・・貴方は、本当に私がこの国を陥れようとしていると・・・?」
愕然とする私にリーナは鋭い目を向け、先程までとは違いしっかりとこちらを睨んでいた。
「どうやって信じろと!?私、確かに見ましたもの!アリア様の書いた密書を!!アリア様にならお兄様を任せられると思ったのに!!先に私の信頼を裏切ったのは貴方でしょう!?」
あまりのリーナの勢いに私は何も言えなかった。
リーナは私がこの国を陥れようとしていると本気で思っているのが伝わってきたのだから・・・。
「・・・・残念です。アリア様。お兄様から引導を渡される前に、ご自身でこの国をお出になる事が少しは償いになるのではないかしら。あなたの国の為にも・・・・」
りーなはそれきり外を眺めるばかりで、私の方を見ようともしなかった。
私は、今この場で泣き崩れそうな思いを叱咤し、リーナに挨拶をしその場を後にした。