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アリア奮闘記  作者: 羽月
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「心辺りがないのならば、いいのだ。ただし、これからもルイガをつける事にはなる。今回の事で貴方が疑いをかけられるよう仕向けた奴が居る事が確かになったからな」


私に疑いをかける・・・・。

一体なぜそんな事を??


「・・・わかりました。しかし、ルイガ様のお仕事は大丈夫でしょうか?」


本来ならば騎士団団長という立場だ。

他にもやる事は多数あるだろう。


「・・・・貴方は・・・。構わない。ルイガがいなくても何とかなる」


殿下がそういうと、今まで静かだったルイガが傍に来た。


「そうそう。普段こき使われまくってるんだから、綺麗な姫様の護衛なんて天国の様だ」


ルイガの言葉が今まで重かった空気をがらりと変えてくれた。


「ルイガ!そんなに仕事がしたくないのだったら、別にいいのだぞ?副団長に言って団長になってもらおう」


ルイガの発言に殿下はジロリと睨んだ。


「殿下!それは勘弁して下さいよ!副団長にバレたら何をさせられるか・・・!おぉ!想像しただけで鳥肌がたつ!!」


そう言って両手で自分を抱きかかえるようにすくみあがった。

こちらの副団長はとても優秀なのだろう。・・・ルイガを怖がらせるくらいなのだから。

そう思うと笑いがこぼれた。


「・・・ルイガの弱みはな、副団長なんだ。俺は最初、現在の副団長を団長にするつもりだったんだが、副団長が自分は団長の器ではないと。まとめる事が上手いのはルイガの方だと、自分は副団長になったんだがどうも団長の手綱は副団長が握っているらしいな」


いつの間にか殿下も、私の隣にくるとそんなルイガを見ながら小声で私に話しかけてきた。


「ふふ。そうなんですか。・・・もしかして、副団長様は女性の方なのですか?」


「ああ。ルイガとはいいところまでいっているのだがな、肝心なところでお互い上手くやらないからいつまでももどかしいままだ」


ふふ、と殿下を見上げると思った以上に殿下との距離が近かった事で思わず顔をそらしてしまった。


「・・・・2人の世界を作られるのなら、俺は退散いたしますが?」


にやりとこちらを見て笑うルイガの声で、私たちはハッとして傍を離れた。


「・・・ごほん。・・・とにかくだ。ルイガの事は心配しなくても副団長が上手くやってくれる」


殿下の声は少し上ずっている様に聞こえたが、隣りを見ると先程とはあまり変わらない様子だった。


「わかりました。では、ルイガ様をお借りいたします」


私も、先程の事を意識していると思われたくなかったので普通を装ったのだが、心臓はまだバクバクが止まらない。

しかし、そんな私をよそに殿下は急に真面目な顔になりこちらに振りかえった。


「それから、アリアーデ姫。今回の事で、婚約者選びが少し早まりそうだ。宰相は貴方が間者と思っているらしく、早く国に返せと言ってきている。議会の者達も同様でアリアーデ姫以外で正式な婚約者を選ぶべきだと言っている。だが、私は妃を迎えるつもりはない。今回の事をキッカケにその事も訴えようと思っている。しかし、このままアリアーデ姫に疑いをかけたまま国にお返しするつもりもないから、早めにこの犯人を見つける。それまではもう少し辛抱してくれるか?」


今までの圧力的な感じではなく真剣に向き合って私に問いかけてくれている事がわかった。


「・・・・わかりました。私もこのままではとても後味が悪いので、ご協力できることはさせて下さい」


「・・・そうか。助かる。しかし、危ない真似は今後しないようにな」


厳しい目でこちらを見られてしまったら頷かない訳にはいかなかった。


「・・・はい」


「約束だ。では、部屋に戻ってもらっても構わない。・・・・朝から、呼び出してすまなかった」


「いいえ。私の方こそお話せず申し訳ありませんでした。・・・では、殿下ご政務頑張ってくださいませ」


何気なく発した言葉に、殿下はなぜか目をまるくされ驚いたようにこちらを見ていた。


「・・・・どうかされましたか?」


何か、変な事でも言ったのだろうかと不安になったが、殿下は「なんでもない」と言うと後ろを向いてしまった。

殿下の行動に謎が残るもののあまり長居をしてしまってはお邪魔だろうと殿下に挨拶をし、部屋を退出した。


「・・・くくく」


部屋を出たところで、ルイガがイキナリ笑いだした。


「・・・何がおかしいの?ルイガ様」


「っい、いえっ。くっ・・。・・・・っなんでもありませんよ」


なんでもないという様子ではまったくないのだが・・・。

ルイガは、一呼吸おいて笑いがおさまるとこちらを見て、にっこりと笑った。


「申し訳ありませんでした。あの様な殿下を見たのは初めてで、ついうっかり笑いがこぼれてしまいました」


「・・・あの様なって?」


先程の事だろうか?


「いえ、アリア姫は気にされなくてよろしいと思いますよ?いや、むしろ気にされると殿下はお困りになるかもしれませんね」


またもや、にっこりと笑顔を返され、それ以上の追求は出来なかった。
















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