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「アリア様!!」
マリアの声が聞こえた。
「殿下よりお迎えが参りました」
「えぇ。行きましょう」
今回は何の用事があるというのか。
もうフリは用済みの様なのに・・・・
そう思うと足取りが重く騎士の後に続いた。
「殿下、アリアーデ姫をお連れしました」
騎士がそういうと中から返事があり、部屋へと入った。
「ご無沙汰いたしております、殿下」
ドレスをつまみ頭を下げ挨拶をした。
「顔を上げろ」
そう言われ、顔をあげると久しぶりに見た殿下の顔は怒りを露わにしていた。
「・・・ご機嫌麗しゅう・・・・」
「そう見えるのか?」
言葉の途中で遮られてしまった。
「いえ、まったく」
「・・・そうだろうな。私は今気分がとても悪い。なぜだかわかるか?」
そんなことは知るわけがない。
「・・・・いいえ。何かございましたか?」
「お前に心あたりはないのか?」
「全くございませんわ」
何が言いたいのかさっぱりわからない。
「・・・・先日、図書室であなたと騎士が逢引をしていたと私のところに報告があった」
・・・この前の事を宰相が殿下に報告したのだろう。
「逢引とはまたおかしな事が報告されるのですね」
「・・・・違うとでも申すのか?それを見たものがいるのにか?」
「事実ではございませんわ。こちらの国では護衛と一緒に図書室に行っただけで逢引とおっしゃるのでしたらそうなのかもしれませんが・・・?」
「・・・・そんなわけがないだろう。しかし、先日も庭で2人が会っていたようだが?」
「先日ですか・・・?・・・あぁ、あの時ですか」
きっと、ミーナと会った時のことだろう。
「みろ。心あたりがあるのだろう?」
「ありますが、2人きりではございませんでしたが?ミーナ様もいらっしゃいました。嘘だとお思いでしたら直接彼女にお尋ねになって下さい」
彼女が本当の事を言うとは思えないが・・・。
「・・・・・・・・」
「それで、もしかして、その事だけで呼び出したわけではありませんよね?」
黙ってしまった殿下に話を続けさせる。
「・・・いや、もちろんそれだけではない。・・・簡単に話すと、この国を崩壊させようとする輩がいるみたいだが、心当たりはないかな?」
崩壊?この大国を?
また無茶な話を・・・・・
・・・しかし、それをなぜ私に?
「・・・まさか、私がそれに噛んでいると?」
殿下は私の顔をまっすぐ見詰めていた。
「馬鹿な事を言わないでください!!この大国を崩壊するなど私にとってなんの得にもなりません!!ましてや、我が小国がそんな事を企てようものならば我が国など一溜まりもありませんわ!私がどれだけ国を大切にしてるか殿下だってご存じではありませんか!!」
あまりの事につい大声を出し殿下に噛みついた。
「・・・それは本当か?」
視線をそらさず殿下は問いかけた。
「当たり前です!!なぜそのような事を私がしなければならないのですか!!」
そういうと、殿下は深いため息をつき、ソファに腰を下ろした。
「はぁー・・・・。やはりそうか」
「・・・やはりとはどういうことですか?」
「そなたがその様な馬鹿げた事をするような人だとは思っておらん。しかし、そういった報告とともに証拠が上がって来ている」
証拠?証拠とは一体・・・・?
「・・・・・証拠とは何ですか?」
「これだ」
机の上に置かれたのは以前借りた歴史書だった。
「・・・これが何か?」
「中を見てみろ」
パラパラとめくると間に紙が挟まっていた。
見ると、明らかにこの国の事が書かれている密書であった。
「・・・・私がお借りした時にはこんなものありませんでしたが・・・・」
「そうだ。お前がそれを返した後にナーシャが歴史書を読んだ。その時にそのような物が入っていたと報告があったのだ」
「それだけでない。お前が図書室より持って行った本の中の何冊かに同じような物が入っていたと他の者が持ってきたのだ」
まさか・・・そんな・・・・。
「・・・・その顔は全く知らなかったようだな」
「・・・はい・・存じませんでした・・・・」
確かに足を怪我してから何冊か部屋に持って来ては本を読んでいたがまさか、その後そんな事があったとは・・・。
「ナーシャだけではない。ミーナやリーナまでもがそれを見つけるものだから公に出てしまう前にお前を呼んだ」
・・・ここ最近殿下と他の候補者たちが時間を作っていたのはその為だったのか。
そして、リーナ様が私を避けるようになったのも私を疑っていたから・・・?
「・・・・私はどうなるのですか?罪に問われて・・・」
知らない間に私自身が企みを働いていたと勘違いされ、リーナからも疑われていた。
あまりの出来事に涙が浮かんでしまう。
「・・・・心配するな。私がなんとかする」
そういうと殿下は側に近づき私の涙を人差し指で掬った。
「・・・・殿下・・・・・」
一体なぜこんなことになったのだろう。
一体誰が私を・・・?