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「リーナ姫。よくよくお父上とお話しされる事をおすすめしますよ」
宰相はリーナを睨んでいたが、リーナは素知らぬ顔でやり過ごしていた。
「それよりも、殿下。こちらは私の姪のミーナと申します。昔から私の後をくっついて王宮に来ておりました。国に関する施政の勉強も、淑女としてのたしなみも身につけております。殿下の妃となるには殿下のお力になれるものを、と思い私から推薦させていただきました」
宰相がにやけた顔でミーナを紹介するとミーナが席を立った。
「殿下、お久しぶりでございます。私、伯父に付き添いましてたびたび王宮に上がらせていただいておりました。その際に殿下から何度かお言葉をかけて頂いて・・・・。私、殿下の為にこの国の為にお力になりたいと思いましたの。まだまだ不勉強な事があると思いますので、ぜひ殿下からご指導願いたいと思いますわ」
ミーナの顔は凛としてどこぞの姫かと思わせるようなもので、私は今まで一度も見た事のないような顔だった。
「申し訳ありません。ミーナ姫。人と会う事が多いものであまり記憶にないのです。しかし、国の為に色々勉強したいというのはとても良い心がけだと思います。だが、非常に残念なことに私の方もまだまだ力が及ばずお教えする時間がとれないのです。あなたの伯父の宰相はとても優秀だ。ぜひ伯父上より勉学に励んでいただきたいものです」
にっこりと、完璧に拒否した殿下。
言葉は柔らかいが、意味は辛辣だ。
ミーナも泣きそうな顔になっている。
「・・・・そうですわよね。お忙しい殿下にこの様な事を申し上げて申し訳ありません」
ミーナはゆっくり席に着いた。殿下の横にいる宰相もすこし顔を歪めてはいたが、特に何も言わなかった。
そんな中、殿下は私の方を一瞥し、ゆっくりと口を開いたのだ。
「皆に申し上げておきたいのだが、私は妃としてこちらにいるアリアーデ姫を望んでいます。私自身はアリアーデ姫意外に考えられない。候補に挙がった他の姫達にはとても失礼な話だと思っています。しかし、私の心は一目見たときから、アリアーデ姫に捕えられているのです。他の姫君達は私の心はつかまえられませんが、それでもよろしいのでしょうか?私は、それを考えるととても辛いのです。どうか、よくお考えになってこの先を選んでください」
殿下は目を伏せとてもつらそうな顔をされていたが、私にはどうみても嘘くさくみえてしまう。
その時、今まで黙っていたナーシャが急に立ち上がった。
「殿下!当然ですわ!!貴方様はこちらにいるアリア様をお選びになったんですもの。望まれてもいないのにこの様な場所に来てしまった私たちをお許しください。殿下がお心を痛められるなど、私にはとても耐えられません。しかし、先程も宰相様がおっしゃられたようにすぐに戻るということも叶いませんの。せめて・・・もう少しの間だけお傍においてくださいまし」
突然ナーシャが耐えられないといった表情で叫びだした。
ナーシャは確か殿下の妃になる事を望んでいたはずなのだが・・・。
ハンカチで口元を押さえる姿はとても悲しそうに見えた。
「・・・ナーシャ嬢。わかっていただけて光栄です。あなたにも辛い思いをさせると思いますが、早めに公爵のもとに帰れるよう手配させていただきます。それまで辛抱願えますか?」
「・・・えぇ・・ええ。もちろんですわ・・・。私それまでは殿下の為、アリア様の為しっかりサポートさせていただきますわ!」
そういうことか。
こちらを見る目がとても鋭かった。
殿下が非公式の場ではあるが私を妃にすると公言してしまった、それ以上は何も言えないのだ。
先程まで、泣いていたはずの涙はすっかり身をひそめ今は怒りがあらわになった目でこちらを見ていた。
「皆に分かっていただけてとても安心しました。これで、アリアーデ姫を堂々とデートにも誘えます」
なんとこれ以上他の方を煽るような事を言い出すとは思わなかった。
しかし、殿下はこちらに視線を向け、まさか断るわけないよな?的なオーラを出していた。
「・・・そんな、デートだなんて・・・。お恥ずかしいですわ・・・」
「いやいや、あなたと色々な話をしてみたいのです。明日昼頃迎えをやります。用意して待っていてください」
極上の笑みを向けられたが、寒気を感じたのはきっと私だけだったろう。
ミーナやナーシャはその笑顔にメロメロになっていたのだから・・・。
「・・・・では、殿下とお話できるのを楽しみにお待ちしておりますわ」
にっこりとこちらも負けないくらいの笑顔で答えた。
もちろん顔で笑って心で泣いているのだが・・・。
天気が良くないと、書く話もなんだか暗くなっていく気がします。
って、どんだけ天気に左右されてるんだ?って感じですね・・・。
まだまだ未熟者ですみません。
また次回も読んで下さると嬉しいです♪