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クレインが車いすを持ってくる前に、マリアが部屋に戻ってきた。
「アリア様!!お怪我の具合はいかがですか?本当に・・・アリア様がクレイン様に運ばれてきたときには私心臓が止まるかと思いました」
涙を浮かべるマリア。
「心配かけてごめんなさいね。マリア。こちらに来てから貴方に心配ばかりかけてるわね」
マリアに笑顔を取り戻してもらおうとにっこりと笑いかけた。
「・・・心配はこちらに来てからだけじゃありませんわ・・・・」
クスリと笑いながらなかなか痛いところを突かれてしまった。
「そうだったかしら?ふふ。・・・それより、ここまで運んでくれたのはクレインだったのね・・・」
そんな事一言も言っていなかったので知らなかった。
「そうですよ。ふふ。クレイン様こちらにくる途中でリーナ様に泣きつかれたそうですわ」
「まぁ!リーナ様に?」
「ええ。アリア様が死んだらどうしようって泣かれたそうですわ」
「そうなの・・・。リーナ様には本当にご心配おかけしてしまったのね・・・」
リーナの気持がとても嬉しい反面、正直に話せなかったことをとても心苦しく思う。
なので、明日にはきちんと本当の事を話す事にしよう。
「ええ。でも、必死でクレイン様が慰めてらっしゃいましたからリーナ様も落ち着いたようでした」
「クレインが?慰めるなんて想像できないわね・・・。でも、リーナ様に粗相がないようなら良かったわ」
あの、嫌味の大王クレインが慰めるなんて・・・。
・・・やっぱり想像できないわ・・・・。
むしろ嗾ける姿が浮かんできてしまったわ・・・・。
コンコン
扉をたたく音が聞こえたかと思うと車いすを持ったクレインが入ってきた。
「・・・クレイン。返事をしてから入ってきて頂戴」
もし、着替え中だったらどうしてくれようか。
「それは申し訳ありません。車椅子を探して持ってくるだけで一苦労でしたものでうっかり忘れておりました」
まったく悪びれる様子が見受けられない。
むしろ嫌味かと思われるような言葉が入っている。
「それはご苦労さまでした。では、これから準備をするからクレインは席をはずしていてちょうだい。準備ができたらマリアに呼びに行かせるわ」
「はい。かしこまりました。では大人しく外で待たせていただきます」
やはり、クレインから『慰める』なんて行動は想像できなかった。
「では、マリアお願いしますね」
「はい!任せてください!今日は殿下との会食ですものね!しっかりと綺麗にさせていただきます!」
マリアはマリアで目を輝かせながらドレスを選び初めた。
・・・・よく考えたら、普通の付き人がいないのはなぜかしら・・・
アリア自身個性が強いため優秀ではあるがひと癖ある人間がどうしても集まってしまうようだった。
「本日のドレスはこれに決めましたわ!怪我をされていますから、コルセットはやめましょう。車いすに乗ることですしこちらの少し落ち着いたドレスで如何でしょう?」
マリアが選んだドレスは、肩ひもがなく胸元には綺麗なクリスタルがつけられた深い青色のAラインドレスだった。
「えぇ。とても素敵だわ」
「アクセサリーは胸元の飾りに合わせましてこちらのネックレスに致しましょう。では、着替えられたらメイクを致しますのでもうしばらくお時間頂きますね」
そういうとマリアはサクサクと準備を進めた。
少し話が短くなりました。