19
目が覚めると窓辺に腰をかけ本を読んでいるクレインがいた。
「・・・クレイン。殿下へのご挨拶は済んだの・・・?」
ベットから上半身だけを起こしながらクレインに話しかけた。
「お目覚めですか?アリア様。足の具合はいかがです?」
クレインは本を閉じベットの傍まできた。
「ええ。だいぶ痛みは引いてきたみたい。薬が効いているのかしらね」
先程よりは痛みはない。しかし、触ってみると腫れは全く引いていなかった。
「それで、殿下の所にはちゃんと行けたの?」
「・・・はい。ご挨拶してきましたよ。夕食には参加できないことも伝えて参りました」
「そう。殿下は怒っていらしゃらなかった?」
もしかしたら、会食の時には他の候補者の方に何か言うつもりだったのかもしれないと、アリアは思っていた。
「・・・いえ?特になにもおっしゃられていませんでしたよ」
「・・クレイン。あなたまさか殿下になにか余計な事を云ったのではないでしょうね?」
身を乗り出してクレインを問い詰めようとして体を動かしてしまった為、また痛みが走った。
「っっ!!」
「言っていませんよ。ほら、動かれてはいけません。おとなしくしていてくださいよ」
私の手をとり元の体制に戻そうと体を支えた。
「・・・ありがとう」
悔しいが、今はクレインの手を借りなければ痛すぎて動けなかった。
ちょうどその時、部屋のドアが開いた。
「・・・・何をしている」
低く冷たい声だった。
「殿下?」
部屋に入ってきたのは殿下だった。
しかし一体なぜ殿下が?
というか、どうして誰もまともにノックをして入ってこないのか。
溜息をつきたい気持ちだった。
「・・・・お前たちは主従関係だろう。一体何をしているんだ?」
鋭い眼で私を見る。
どうやら、手をとって支えている姿に誤解をされているようだ。
「・・・何か誤解されていらっしゃいませんか?クレインはただ私を支えてくれただけですわ」
別に誤解されても構わないが、それを責められるような事は殿下と私の間ではないはずだ。
「支える?なぜ支える必要がある。そもそも、私がこうして尋ねてきているのに、ベットに入ったままだとは無礼だと思わないのか?」
ひどく機嫌が悪いようだった。
「・・・申し訳ありません。・・・実は、私の不注意で足を怪我してしまって立つことができません。ご無礼とは存じますがこのままで失礼します」
「・・なに?怪我だと・・・?」
眉間にしわを寄せ私とクレインを見た。
「はい。全治2週間との事で、御覧の通り立つこともままなりません。ですので申し訳ないのですが、今晩の会食も辞退させていただこうとクレインに殿下へお伝えするよう申し伝えておいたのですが、その事で何かおっしゃりに来たのではないのですか?」
「・・・確かに欠席をするとは聞いたが、怪我の事など知らない」
殿下にそう言われ、思わずクレインを睨んだ。
すると、クレインは余計な事を云わなかっただけだとぼそりとつぶやいた。
「・・・ちゃんと殿下にお伝えせず申し訳ありませんでした。しかし、そういう訳ですので今晩は参加を辞退させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
目と目で会話をする様に見えた2人の姿に少し苛立ちを覚えた殿下はアリアの申し出を却下した。
「ダメだ。足を怪我しているだけであれば食事はできるだろう。ちゃんと出席するように!」
そういうと殿下は踵を返し部屋を出て行ってしまった。
「・・・何をあんなにイラ付いていらっしゃるんでしょうねぇ、殿下は」
のんびりとしたクレインの口調に溜息をつきながらも、同意見だった。
「本当に・・・。しかし、どうしましょう。歩くのもちょっとしんどいのだけれども・・・・」
「では、車いすを借りて参りましょう。食堂まで私がお連れしますよ」
「・・・・仕方ないわね。そうして頂戴」
車いすで出席するということは、ミーナにとってみれば当てつけの様に見えるかもしれない。
それに、無理をして出席をすると助けてもらったリーナにも申し訳ない。
そう思って、欠席を願い出たのにそれすら聞いてもらえない。
まぁ、殿下は怪我をした経緯をしらないのだからしょうがないといえばしょうがないのだろうが、怪我した女性に無理にでも出席しろというのは少しどうかと思う。
完璧王子と言われていたが、さっぱりアリアには理解できなかった。
殿下の雰囲気がどんどん悪くなっていっています・・・。