17
しばらくそこでボーっとしていたが、痛みは増すばかりだった。
「アリア様?」
ちょうどそこにリーナとマーガレットが通りかかった。
リーナの右手には本が数冊抱えられている。きっと、例の本なのだろう・・・。
リーナの顔を見たことで安心したのかなんだか意識が遠のいていくようだった・・・。
「アリア様!!大変!おけがをされてるわ。マーガレット、誰か人を呼んできて頂戴!アリア様しっかりして!」
リーナの声が遠くに聞こえたきり、私は意識を手放してしまった。
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「・・・・んん・・・・イタッ」
足がずきずき痛んだ。
「アリア様、お目ざめになられましたか?」
「・・・リーナ様」
ベットの横にリーナが座っていた。
「・・・私、どうしたのかしら?」
「アリア様、左足を痛めておられて痛さのあまり気を失ったのですわ。医者にみせましたら、骨に異常はないそうですが全治2週間だそうです」
「そうですか・・・・。リーナ様が此処まで運んで下さったの?ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
ベットから体を起こしリーナに謝罪する。
「いいえ。運んで下さったのは通りかかった方ですわ。アリア様、一体どうしてあんなところでお怪我されていたのですか?」
「・・・その、転んでしまっただけですわ」
リーナに心配させないよう嘘をついた。
「・・・そうですか。お気をつけくださいね。今は何があるかわかりませんから」
なんとなく嘘に気付いているようだが、リーナはそれ以上深く追求してこなかった。
「では、お体に触ったらいけませんから、私はこれで失礼しますわね。また明日お見舞いに来させてくださいね」
「あっ!リーナ様、ありがとうございました」
リーナはにっこり笑うとマーガレットを連れて部屋を出て行った。
足をさすってみれば、ぷッくりと左の足首が腫れあがっていた。
「・・・夕食はさすがに無理かしらね・・・・」
これでは食堂まで歩くのも辛い。
「他国に来られてまで何をなされているのですか。アリア様」
いつの間に居たのかリーナが先程出て行った扉の前に男が寄りかかっていた。
「まぁ。クレイン、乙女の寝室にノックもなしに入るものじゃないわよ」
「これは失礼致しました。ノックしようとしましたらリーナ様が出てこられたのでお声をかけて入室させて頂いたのですが、お気づきになられなかったようですね。改めて、シュテルン王国騎士団副団長クレイン・アーベルただいま参上いたしました」
片膝をつき右手を胸にあて、騎士としての正式な挨拶をした。
「遠いところ御苦労様です。・・・・それにしても、少し時間がかかったようだけど?」
「うっかり、この街のガラス細工に見入っておりました。申し訳ありません」
全然申し訳なさそうに見えないのは気のせいじゃないだろう・・・・。
「それで、それは誰に怪我をさせられたのですか?アリア様」
クレインの目が鋭く光る。
町で店をしているときは、騎士としての威厳は必要ない為、ぼっさぼさの野暮ったい男なのだが、実は密会場所と町の中での情報を得る為、その身分を隠して町で働いているのだ。
また、たまに出歩く王女の護衛としての役割も担っていた。
本来のクレインは優秀な副団長である。
そんなクレインには何もかもお見通しといった雰囲気からアリアはいつも騎士の時の彼には逆らえない。
「・・・・ミーナ様に突き飛ばされて、転んでしまったのよ・・・」
「はぁ・・・。あの方もこちらにいらっしゃるのですか?貴方様が転ぶなんてありえない事を申されるから誰か庇っておいでかとおもいましたら・・・」
「別に庇ったわけではないわ。リーナ様にご心配をかけないようにと思っただけよ」
「あぁ。そうでしょうね。それがよろしいかと思います。それで、私はなぜここに呼ばれたのでしょうね?」
・・・・知っているだろうに、意地の悪い・・・。
「私が城下へ下りるときの護衛をしてもらいたいの」
「はい。伺っておりますとも。それで、なぜ私なのですか?」
「・・・・一度襲われてしまったのよ・・・。それで、危ないから一人で城下にいくのはよくないなぁーと・・・・」
「左様でございますね。懲りて下さい。いい加減私の仕事を増やさないでもらえませんか?」
クレインは溜息をつきながら嫌味をねちねちと繰り返す。
「そ、それだけじゃないわ!こちらのガラス細工を見たでしょう?あれを我が国でも運用できないかと思って、まずは貴方のお店で交渉して頂戴!」
クレインの趣味は各国の工芸品を集めることだ。さらにそれを自分の手で広げる為に城下で働く見返りとして今の店を構えているのだ。
「ぐっ・・・。それは魅力的な話ですね・・・。うーん。それならお受けいたしましょう」
上手くつれた。
しかし、ガラス細工をどうにかするにはきっと殿下の許可がいるだろう・・・。
早めに何とかしなくては・・・・。
彼とはクレインだったんですね!
実はかなりの強者です!