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アリア奮闘記  作者: 羽月
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今日も朝からいつもの庭に来て噴水の前で本を読んでいた。


「・・・またいるのか」


ふと、顔を上げると殿下が目の前に立っていた。


「おはようございます。殿下」


私は立ち上がって殿下に挨拶をした。


「・・・あぁ」


それだけ言うと殿下はさっきまで私が座っていたところに腰を下ろした。


「・・・座らないのか?」


「よろしいのですか?お一人になりたいのではないのです?」


「かまわない」


そっけないが、邪険にされているわけではないらしいので殿下の隣りに座った。


「今日もいいお天気ですわね」


「あぁ」


「・・・リーナ様とても素敵な方でしたわ。でも、候補者になる気はないと申しておりました」


昨日リーナが言っていた事を殿下に話した。


「あたりまえだ。私たちは兄妹同然に育った。今更女としてはみれん。・・・大体、あの趣味に付き合えるものはこの世にいないのではないか?・・」


最後の言葉は濁していたけれど聞き取れてしまった。


「・・・なかなか個性的なご趣味ですわね・・・。でも、リーナ様はとっても素敵な方でしたわ」


殿下は目を丸くして珍しいものでも見るようにこちらを見ていた。


「・・・・ほぅ。リーナが趣味を明かしたのか?めずらしい」


「いいえ。たまたま図書室でご一緒になったんですわ。その時に持ってらしたご本があまりにも衝撃的でしたけど・・・」


「あぁ。それはまたタイミングの悪いところに居合わせたものだな」


ふっと殿下の顔が綻んだ。


「そうですわね。でも、そのおかげでリーナ様と仲良くなれましたもの」


昨日の事を思い出して、私も頬が緩んだ。


「・・・・そうか」


気のせいだろうか?

そっぽを向かれた気がしたのだが・・・・。


「それはそうと、アリア姫の騎士はまだ到着しないのか?」


「・・・えぇ。そのようですわね。至急と言っておいたのですが、全く何をしているのやら・・・」


「・・・そいつは信用できるのか?」


「えぇ。もちろんですわ!もともと我が国の騎士団に所属しておりました」


「・・・ほう。・・・では、こちらに到着したら私のところへ来させるようにしてくれ」


「・・・ええ?もちろんご挨拶に伺うつもりでしたが・・・」


「そうか。ならばそうしてくれ」


そう言うと、殿下は王宮へ戻っていった。


なぜかまた殿下の後ろ姿はご機嫌を損ねたような雰囲気を纏っていた。

政務がお忙しいのにお引き留めしたのが悪かったのだろうか?

いまいち殿下の怒るツボがわからなかった。


「・・・・それにしても、本当に何をしてるのかしら・・・」


まだ来ない彼を思ってため息が出た。

そろそろ到着してもいい頃だ。

相手は何せ早馬を飛ばしてくるはずなのだから。


「・・・あの人が来ないといつまでたっても城下に下りれないじゃないの・・・」


ぶつぶつと言いながら、私も部屋に戻ることにした。

しかし、後宮に入ったとたん聞き覚えのある声が響いた。


「アリア!!」


「・・・・・ミーナ様・・・・」


また、ため息が出てしまった。

ため息の数だけ幸せが逃げるって本当なのだろうか・・・。


「あなた今、殿下とお話しされてたそうね!まだ、殿下との挨拶も終わってないのに抜け駆けするつもり!?」


そう。候補者全員と殿下とで挨拶もかねて今晩、夕食をご一緒することになっている。

リーナ様は別として、他の候補者はそれまで殿下にお目にかかることはない。


「いいえ、ミーナ様。庭を散歩していたらたまたま殿下にお会いしただけよ。話していたって言ってもご挨拶をしただけだわ」


一応、そう言っておかないと後々面倒なことになるに決まってる。


「嘘おっしゃい!殿下とご一緒に座ってお話していたじゃない!」


・・・・見ていたのか。


「本当よ。殿下がお疲れの様だったから座られたけれど、今日は天気がいいですね。程度の話しかしてないわ」


「・・・いつもいつもあなたばっかり!!どうしてあなたなの?あなたがいるからいけないのよ!!」


ドンっと衝撃があったかと思えば体が床に打ちつけられた。


「・・っいた・・」


ミーナはハッとして私を見下ろした。


「・・・あなたがいけないのよ!いつも私の邪魔ばかりするから!!」


そういうと自分の部屋の方へ帰って行った。

ミーナに突き飛ばされたまま寝転がっているのも何なので起き上がろうとした。


「!!!っつぅ・・・」


どうやら足をひねったらしい。


「うーん・・・。どうしようかしら・・・」


とりあえず、床を這うようにして壁まで行き、そこに座りこんだ。



おぉ!めちゃくちゃ王道な言葉を吐いていますね。ミーナ様。

なかなか、本当に言う人はいないような言葉なのに。。。


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