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アリア奮闘記  作者: 羽月
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部屋に戻ったアリアは、一体何が彼女をあんな本へと走らせたのだろう・・・。

と不思議でたまらなかった。


「アリア様?いかがされましたか?」


フィーナが心配そうに尋ねてくる。


「・・・いいえ。あまりにも衝撃的な出来事があったのだけど・・・。心配ないわ、ありがとう」


ふふふと優しい笑みを浮かべたアリアの美しさに、フィーナはぽっと赤くなった。

アリアも、それ以上深くは考えない事にし、歴史書を読み始めたのだった。


読み始めると、意外にも、この国の歴史は浅く、色々な国が合併して出来た国である事がわかった。

その為、首都以外ではいまだに内紛が起こっているところも多く、騎士団の数が足りていない様だった。


「・・・街はあんなに活気づいていたけれど、まだ地方の方では内紛が起こっているのね・・・・」


アリアの顔も思わず険しくなってしまう。


「その土地の習性を生かし、やり方を変えればよいのだろうけど・・・・。こんな大国となると、隅々にまで気を配る事が難しいのかもしれないわね」


ついつい、国にいた時の様に施政の事を考えてしまうのは、王女としての(さが)だろう。

しかし、最近はもっぱら城下に下りての情報収集ばかりだったので、少し目が疲れたようだ。


「フィーナ、私はちょっと庭に行ってきます。昨日も行ったから場所はわかるし、後宮内だから一人で大丈夫よ。夕食の時間までには戻ります」


フィーナに告げると、昨日行った庭へ足を運んだ。


「・・・ふぅ・・・。やっぱりここは落ち着くわ・・・」


昨日と同じ噴水の淵に腰をかけて周りを見渡した。


「ふふ。さすがに今日は殿下はいらっしゃらないようね。殿下には申し訳ないけれど、私もここにたびたび来させて頂こう」


太陽が傾き空が赤く染まる景色がまた何とも言えず、アリアの心を癒してくれた。





***********************




昨夜、夕飯を食べた後部屋に戻ると、マリアが取りに行っていた品物を持って部屋に戻ってきていた。

その中には衣類も含まれており、今日は昨日届いたばかりのドレスで、リーナ様の部屋へと向かった。


「失礼いたします。シュテルン国第3王女アリアーデでございます」


リーナの侍女が出てきて、中へと促す。


「お初にお目にかかります。私、アリアーデと申します」


ふと、顔をあげたそこには昨日見た可憐な少女が椅子に座っていた。


「どうぞ。おかけになって下さい。アリアーデ様」


椅子をすすめる少女は昨日見た印象とは全く異なっていた。


「・・・・ありがとうございます。こちら、我が国特産の紅茶です。お口に合うかわかりませんが、よろしければ召し上がりください」


驚きを隠しつつ、持ってきた紅茶を手渡した。


「まぁ。お気遣い頂きありがとうございます。せっかくですので、今から召しあがらせて頂こうかしら。マーガレット、こちらの紅茶を入れて下さる?あ、そうだわ、アリアーデ様。私の侍女ではこちらの紅茶のおいしい入れ方がわかりませんわ。ぜひ、あなた様の侍女様からお教え願えませんか?」


にっこりと可憐な笑顔とともに、お願いをされてしまっては聞かない訳にいかない。


「えぇ。もちろんですわ。マリア、リーナ様の侍女様とご一緒にお茶を入れてきて頂戴」


「かしこまりました」


マリアとマーガレットは2人そろって部屋を出て行った。


「ふふ。アリアーデ様、昨日はお恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ありませんでした」


2人きりになると、リーナは昨日の話を始めた。


「いいえ。こちらこそリーナ様とは存じあげずご挨拶が遅れてしまってすみません」


あまりの衝撃さに、少し考えればわかるものの、頭が働かなかったようだ。


「とんでもございませんわ。私が遅れてしまったのが悪いのです。皆様すでにご挨拶はお済だそうで・・・。私、実はあなた様にお会いできるのをとても楽しみにしておりましたのよ」


「私に・・・・ですか?」


「えぇ。レオンお兄様がお選びになった方がどのような方かとても興味がありましたの」


「リーナ様は殿下と従妹様でいらっしゃいましたね。このようなものでとてもがっかり致しましたでしょう?」


「いいえ!とんでもございませんわ!さすがレオンお兄様とほめて差し上げたい位ですわ」


いやいや、むしろがっかりしてください・・・。


うっかり、口に出してしまいそうになった。


「そんな・・・。私など殿下には不釣り合いです。やはり、リーナ様のような素敵な女性が殿下の婚約者にぴったりだと思いますわ」


少しうつむき加減に哀愁を漂わせてみた。


「うふふ。どうしてそんなお話になったのかしら?私、本当に怒ってますのよ。今回の訪問はその事を問いただすためにやってきたんですもの」


私の哀愁はなかった事になったらしい。

しかし、リーナ様の話を聞いていると候補になった事がおかしいとでも言うようだ。


「リーナ様?あなたは、妃候補になられた事良く思っていらっしゃらないのですか?」


「まぁ!もちろんですわ!どうして私がレオンお兄様の婚約者なんかにならなければいけませんの?そんなもの熨斗付けて返してやりますわ」


・・・・ちらりと見える昨日の面影・・・。

やはり、こちらの方が素のようだ。

それにしても、熨斗まで付けて返されるのか・・・・。少し王子が哀れな気がしてきた。





リーナ様はどうやら猫を被ることがお上手な感じですね・・・。



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