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「あら。ナーシャ様ハンカチを忘れてらっしゃるわ」
「まぁ本当ですね。では、私が届けてまいりましょう」
「・・いえ。私もいきますわ。少し気分転換もしたいし、先程出られたばかりだからすぐに追いつくでしょう」
そういうと、部屋を出てナーシャの部屋へと向かった。
ナーシャの部屋へ向かうまでには、会えるだろうと思っていたら廊下の先の方から声が聞こえた。
「・・・・・・ですわ・・・」
くすくすとナーシャ様の声が聞こえた。
「まったく、王子が選んだ候補者だと言うから見に行ってみたけど、ただの田舎の小娘じゃない」
「左様でございますね。ナーシャ様の足元にも及びませんわ」
ナーシャとその侍女だろう。先程までとは全く違う態度でアリアの事を貶していた。
「・・・・アリア様・・・・」
マリアが心配そうにこちらを向く。
「ふふ。想定内だわ。心配しないで」
そう言うとアリアは息を吸った。
「ナーシャ様!!!」
すると、驚いたようにこちらを振り向いた。
「ア・アリア様。どうなさったの」
普通に取り繕おうとしているのがおかしい。
「えぇ。ナーシャ様ハンカチをお忘れでしたので、あわてて追いかけてきましたの。はい、こちらですわ」
そう言って、ナーシャの手にハンカチを握らせる。
「あ、ありがとうございます。あ、あの、さっきのお話聞いてらっしゃって・・・」
「・・・さっきのお話?なんのことです。何かはなしてらっしゃったんですか?」
聞いてないフリをするのが礼儀だろう。
それを信じたナーシャは明らかにほっとしたような顔だ。
「いえ。なんでもありませんわ。わざわざ届けて下さってありがとうございます。では、わたくしこれで失礼しますわ」
おろおろした態度が嘘のようにさっそうと部屋へと戻って行った。
「アリア様。よろしかったんですか?」
「えぇ。別に構わないわ。殿下もお可哀そうに」
「・・・・お顔が笑ってらっしゃいますよ・・・」
マリアにそう言われて、あわてて両頬を抑えた。やはり、私は顔に出やすいらしい・・・。
「まったく・・・。さぁ、お部屋にもどりましょう。次の方が来られます」
少し散歩がしたかったが、マリアに咎められあっという間に部屋に戻ることとなった。
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のんびり休む間もなく次にやってきたのは、コーネリア国の第3王女ミーナだった。
「ミーナ様。ご無沙汰しております」
「こちらこそ。お懐かしゅうございますわ、アリア様」
ミーナは、言わばアリアの天敵だ。それがなぜか候補に選ばれているのだ。
「ミーナ様は確か、こちらの宰相様とご親戚なんですわよね?」
「えぇ。母がこちらの出で、母の兄上が宰相様でいらっしゃいますのよ。それにしても、あなたが候補だなんて、殿下も一体どういうおつもりなのかしらね」
「あら。どういう意味かしら?」
「まぁ、ご自分でわかってらっしゃらないの?シュテルン国など、この国にとってなんの利益もありませんのに、あなたが殿下に選ばれたと聞いて、殿下は何を思ってらっしゃるのかと思って、あなたに伺いにきたんですわ」
「あら、ご自分が選ばれなかったから僻みかしら?そんな事は私にきかれても知らないわ。殿下に直接きけばよろしいんじゃなくて?」
図星をさされたのか、顔を真っ赤にして怒り始めた。
「相変わらず失礼な人ね!!はっ、どうせあなたが誘ったんでしょう?それとも泣き落としでもしたのかしら?汚いことしてまで妃になりたいのかしら。さすがやる事がちがうわね」
「失礼なのはそちらでしょう?あなたこそ、宰相様のお力を借りて候補者になったんじゃなくて?私に突っかかりに来るより殿下のところへでも言った方が有意義なんじゃないかしら」
「!!!不愉快だわ。私これで失礼させてもらいます!!」
本当の事だったらしく、荒々しく部屋を出て行ってしまった。
「・・・相変わらずミーナ様とは相性が合いませんね・・・」
「えぇ。相性という問題ではない気がするわ。本当嫌になるわ。ミーナまで候補者だなんて・・・はぁ・・・」
本当に、殿下に同情してしまう・・・・。
超嫌味なお姫様が登場!
ホントに嫌な感じです。