01
初!連載です。
「アリア様!!!」
女官長エレナの声が城中に響いてるんじゃないかってくらいで私を呼んでいる。
でも、私はそれに答えてあげない。いや、あげないんじゃない、答えられないのだ。
「大変!エレナにバレちゃったわ!」
今の私の格好は、シュテルン王国第三王女とは思えない町人のような格好だったのだ。
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「アリア様!またですか?女官長にバレたら今度こそ外に出してもらえなくなりますよ!」
彼女は私専属の侍女で一番の理解者マリアだ。
「大丈夫よ!今日の女官長はお父様達の会議に出席してるんですもの。その間ならバレる心配はないわ」
慣れた手つきでマリアから借りている服に袖を通す。
借りているといっても、返す事無くこうして毎回使わせてもらっているので、ほぼ私の服といってもいい。
もちろん、換わりに新品の服を返してるけどね。
「はぁ~。一度目・二度目ならまだごまかせますが、こう頻繁に出歩かれてはさすがに私も庇いきれませんからね?」
マリアは、私が言い出したら聞かない事をよく知っている。
諦めたように溜息をつき、しぶしぶ私の身支度を手伝ってくれる。
そして、見つかった時にはなんだかんだといいながら、庇ってくれるのだ。
そんなマリアには申し訳ない気持ちが少しはあるのだが、どうしてもやめられないのだ。
「ごめんなさいね、マリア。でも、王女としてこれも必要な事だと私は思うの。市政を知らなくては国の事など考えられないわ」
そう、城下町に行くことは施政にも役に立つ。
それに町の人たちが、どんな生活をしてどんな事を望んでいるのか。
子供たちの未来の為、この国の繁栄の為必要なことなのだ。
「アリア様?もちろん市政の観察もあるんでしょが、本当は違うでしょう?しおらしい振りはやめてください。」
キッと鏡越しに睨みながら私を見るマリアには何もかもお見通しだ。
「あら。マリアには隠し事は無理ね。もちろん!食べ歩きは欠かせないでしょう!?」
そう!何よりの楽しみは城下のおいしい食事!
初めて、城を抜け出したのもいつかの晩餐で食べた城下の食べ物が忘れられなかったから。
だってだって!城ではマナーがどうだ、食材がどうだと縛られてばかりで全然面白くない。
味はもちろん、国一番のシェフが作るから美味しいんだけど、静まりかえった中で食べる食事は全く美味しく感じられないのだ。
最初は珍しいだけで、城下に下りて行っていたけど、今では皆と会話しながら食べる食事から離れられない。
だからこうして、女官長の目を盗んでは城下に下りて行っているという訳だ。
「まったく。王女様ともあろう方が城下の方達と食事をしてるなんて、王様に知れたらどんな罰を受けることだか・・・」
「ふふっ。お父様より怖いのは女官長の方だと思うけれど?」
「そう思われるならそろそろ止めてくださいよ!」
「マリアったら。そんなの無理に決まってるでしょう?」
「いや・・・。そんな極上の笑顔で言われても困ります・・・。はい。出来ましたよ。」
鏡をのぞくとそこにはもう王女はいない。
普通の女の子となったアリアがいた。
「アリア様。時間は夕方の鐘が鳴るまでです。それ以上はごまかせませんからね。」
「わかったわ。必ずその時間までには戻ります。それまで、よろしくね。マリア」
「くれぐれもお気をつけて」
そういうとマリアは、城の外に繋がる隠し扉を開け見送ってくれた。
女官長も参加している会議が、これからのアリアの人生に関わる会議だということなど知らずに・・・・・
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城下町は緑が豊かで、町も賑わっている。
「アリサ!!今日は寄って行かないのかい?」
食堂のおばさんから声がかかった。
「うん!後で寄らせてもらうわ!ちょっとクレインの店に行ってくる」
町では「アリア」ではなく「アリサ」と名前を変えて探索している。
もちろん、町の皆には私が王女という事は秘密だ。
バレてしまったら、今の様にフランクな関係でなくなってしまうだろう。
それでも、一応、一国の王女である。
城下で何があるかわからない為、私を知る人物のもとへ向かう。
「クレイン、いる?」
扉をあけると、お店として成り立っているんだろうかと思うような店内の暗さだった。
「・・・・またいらしたんですか?アリア様」
店の奥から出てきたクレインは、ぼさぼさ頭に身なりを気にしてもいない野暮ったい男だった。
「今はアリサよ。毎回いっているけど、もうちょっと身なりを整えたらどうなの?城にいたころはもっと素敵だったのに・・・・」
「身分も隠しやすいですし、これでいいんです。」
いや、絶対身ぎれいにする事がめんどくさいだけなんだろう。
城でもいやいやな感じがあったもの。
「今日は、夕方の鐘が鳴る前には城に戻らなくてはならないの。どう?町の様子は変わりない?」
「変わりも何も、一昨日もいらしたばかりでしょう?早々、何かあっては困ります」
軽く嫌味も入った言葉が返ってきた。なんだか嫌な予感がする。
「毎度毎度、申し上げていますが・・・・」
「さって!今日も時間がないから早く食堂へ行かなきゃ」
あぶないあぶない。クレインのお説教って長いから貴重な時間がなくなっちゃうところだったわ。
私は、さっき声を掛けてくれた食堂へ向かうことにした。
店に入ると、見知った顔ばかりだ。
「おぅ!アリサ。今日は何の話をしてくれるんだ?」
「アリサは物知りだからな。この前の羊の話は役に立ったぜ」
「ほら、アリサ。今日はトンフォーユ(豚の煮たもの)だよ。食べていくだろ?」
食堂に入った時から、私のお腹の虫は叫びっぱなしだ。
「もちろん!頂くわ!おばさん。おじさん、今日は役に立つお話じゃないけど、ある国の王妃様のお話なんてどうかしら?」
ここで食事をしながら、私が知っている限りの知識や話題を話す事が、町へ来た時の日課になっていた。
「ある近隣王国の現在の王妃様のお話なんだけど・・・・・」
話始めると、食堂にいた皆がアリサの周りに集まってくる。
そして、酒を飲みながら、食事をしながらアリサの話に耳を傾けるのだ。
アリサはこんな時間がとても愛おしかった。
「そういえば、フィルナリア王国で今、王子の花嫁探しをしてるらしいぜ」
アリサの話が終わると、一人の男が話始めた。
「なんでも、その王子は全て一人でやる完璧な人間らしく、妃もいらないっていってるらしいぜ。でも、世継ぎが生まれないと困るからって周りのやつらが近隣の王国から花嫁を探してるって話らしい」
「はぁ~・・。そりゃ、妃になる人は気の毒だなぁ」
「いや、でもフィルナリア王国っていやぁ、ここらへんじゃ一番大きな国だろう?そんな所の妃になれるっていうなら、あたしゃ立候補したいもんだけどねぇ~」
「あっはは!そりゃ、王子のほうがお断りだろ!」
「なんだってぇ!おまえさん、立ち入り禁止にしてやろうか」
アリサも、食堂のおばさん達が会話をしているのを聞いて笑っていた。
「この国にも、王女が3人いたろ?誰か候補になるんじゃないか?」
そんな言葉に、私は、姉様達の事を思い浮かべた。
第一王女の姉様はもう、お嫁に行ってるからないとしても、順番的に第2王女の姉様の所に話がきそうだ。
年齢的にいっても、姉様もそろそろお嫁に行かれる頃でしょうし。
そうしたら、私がお婿さんでもとってこの国を守っていかなきゃ!
リーンゴーン♪
リーンゴーン♪
そんなことを考えてるうちにいつの間にか、夕方の鐘の音が聞こえてきた。
「!!いっけない!私、帰らなきゃ!!」
考え込んでいる内、すっかり約束の時間になっていた。
アリサは急いで、城に戻るのだった。
はじめまして<(_ _)>
思いついたまま気ままに書きなぐっております。
見苦しい点が多々あると思いますが、何卒、ご容赦お願い致します。