第十八話「走馬灯」
書いた人;Y
大きな家々の点在する、大きな小さい村。その大きな狭い公園で、俺は大きな少女の話を聞いていた。
「やったよ、メッツォくん!私ついに騎士免許もらったんだー」
彼女は、百七十はあるはずの俺の目の前に、ごく自然に騎士免許をかざして見せる。
「騎士免許?」
なるほど確かに騎士免許のようだ。鉄板に刻まれた名前が、彼女の名前がエリノア=オルテガであるということを教えてくれている。
ん?
「そうだよ!明日から町へ行って、騎士としての訓練を積むの!」
「おい、ちょっと待ってくれ!俺、そんな話、初めて聞いたぞ!?」
おい、ちょっと待ってくれ。エレが嬉しそうなのはいい。けど、この妙な響きの、高いガキの声はなんだ?
「だって、びっくりさせたかったし……。それに言ったらメッツォくん絶対に引き留めるでしょ?」
「エレはさみしくないのかよ!?」
またあの声だ。頭に直接響く様な声。それに、この声の主もエレのことをエレと呼んでいる。いったいどうなっているんだ?
「ううん、私だってさみしいよ?だから――」
待てよ、この場面――もしかして……?
「――だから、今日は一日中メッツォくんと一緒に……」
やっぱりそうだ!これはガキの頃の俺の記憶!つまり、あの声の主は他ならぬ俺自身というわけだ。
その証拠に、俺の目はあの時の様に、顔を赤らめて続きを飲み込んでしまった彼女の顔に釘づけだったし、俺の鼻はあの時の様に、汗と石鹸の匂いを感じていた。俺の耳はあの時の様に、続く彼女の勇気の賜物を聞いて赤くなっていたようだし、俺の口はあの時の様に、それを朝日のせいだと言った。
それから俺達はあの時の様に、手をつないで、あの時の様に、二人で初めてのデートをした。
一人称視点にしてみましたが、いかがでしょうか?