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シン話創セイ  作者: Y/UMA
奴隷ショウ人
26/29

第十五話「反撃の狼煙」

書いた人;Y

「しかしね兄貴、俺は郵便屋とはちょいとばかし因縁があるんですよ」

 木机でグラスを呷る看守の愚痴は続く。

「そいつの着けてるそのバッジ、そうですその郵便屋バッジです。そいつを見ると当時の古傷が疼くんですよ」

「……はぁ。だから俺は、お前のような盗賊崩れのゴロツキを雇うことには反対だったんだ」

「今、何て言いました?」

 グラスを持つ手が怒りで震えだす。

「私怨で仕事を見失うようなクズの同僚なんていらないと言ったまでだ」

「言ってくれるじゃないかよ!あんただってどうせロクな人間じゃねぇくせによぉ!!」

 未熟な後輩を適当にあしらって少女を収監するために背中にガラスの割れる音を聞いた。

「今日という今日は――ぐわっ!」

 続く後輩の悲鳴と机の破砕音。咄嗟に振り向いた時には、先程の音をもたらしたのであろう割れたビンを持った少年が、鼻の先まで迫っていた。

「うおぉぉぉ!」

「くっ!」

 咄嗟に、得物を持っている方の手首を掴む。そのまま少年の背中を硬い土の床めがけて叩き付けた。

「ぐぁ!ぁぁあ!!」

 しかし少年は身を捻って足から着地した。足を痛めたようだが、さらに踏み込んで追撃をはかる。

「ガキにしちゃ中々やるようだが、これで終わりだ」

 タイミングを合わせて一歩引いて、そこから交差法気味のクロスチョップで少年の首をはねた。少年は自分の攻撃分の衝撃も追加されて奥へ吹き飛ばされた、はずだった。

「なら次はカーテンコールだな」

「何!?」

 先程床に放り出した少女が意地悪な笑みを浮かべ、両腕を捕まえていた。

「おらぁっ!!」

 直後、湿った天井が見えて、すぐにそれすら見えなくなった。


「えーと……、鍵どこに隠し持ってるんだ?」

「お前、無事だったのか!?」

「お前は失明でもしてしまったようだがな」

 郵便屋の少女、アップルは準備運動のような動きを見せた。

「よくわからないけど、無事ならなによりだ。上はもう押さえたのか?」

「いや。……みっけ!」

「どういうことだよ?作戦は失敗したのか?」

 倒した看守から奪った鍵を回すアップルに、少年、霧岡 匠人が尋ねる。

「失敗する作戦は成功した」

「……つまり?」

「とりあえずの強敵は退けたし、こうして奴隷牢まで隠密潜入できたし、ちゃんとお前とも合流できた。そういう意味では大成功だ」

 アップルは微塵も敗北を感じさせない笑顔で牢を開けた。

「さて、お前ら!アンサンブル・カーテンコールだ!恥ずかしがらずに全員出て来いよ!!」

『おおおおおおおお!!!!!』

 無数の商品の怒声が地下の隠し部屋いっぱいに反響し、それはまるで猛るドラゴンの雄叫びのようだった。


「十人ほど私に付いて来てくれ。ここに運ばれる途中にあった武器庫でちょっと装備を拝借しよう。他の皆は退路を固めていてくれ。全員無事に家に帰るまでが作戦だからな?」

『おおおおおおおお!!!!!』

 上で、遠足の行動予定でも説明するかのような調子で作戦概要が告げられる。

 勇み足で遠ざかっていく皆の、地鳴りのような足音の反響の中、匠人はただ一人その場に残っていた。さて、と思い切って匠人は地下牢の天井を睨み付けた。

「正面突破だ」


『行けぇー!絶対に生きてここから帰るんだー!!』『て、徹底防戦だ!一人たりとも外へは出すな!!』

 レンガの壁越しにでも充分に大きな喧騒を耳に、アップルが最後の守衛を投げて言った。

「さて、お色直しもすんだし、さっさとお披露目と行くかな!」

 特に外見の変わった様子の無い彼女に、皮の鎧に身を包んだ奴隷達が続く。絶望からの出口を目指して。

一部展開をUMAの希望に沿って変更しております。

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