第十話「ちっこいの」
全体を執筆した人;UMA
匠人が食糧物資を配っていると、反対方向から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「何だ?」
「分からないわ、とりあえず行ってみるわよ」
シルフィアが匠人を促す。
「ああ」
匠人は騒ぎがする方へと駆け始めた。
が、ふと思い出し、もう一人の仲間スピアに呼びかける。
「おい、スピア。お前も行くぞ?」
すると、反対方向を向いていたスピアはハッとしたように振り返った。
「あ、ああ。もちろんさ、僕達が行かないとね」
何故か動揺しているスピアを見て、匠人は首を傾げ、さっきまでスピアが見ていた方向を見る。
だが、村人以外は見つからない。
「ショート、行くわよ」
シルフィアに声をかけられた。
「ああ。しかし……まぁ、いいか」
探すのを諦め、振り返る。
だから、彼は見つけることができなかった。村人の人混みの中でほくそ笑んでいる左目に眼帯をつけた長い金髪の女に。
「うおっ!?何だ!?」
騒ぎが起こっている場所に駆けつけて、匠人は唖然とした。
「こんのクソガキ!?」
「こんのクソ無敵の怪物魔導士、に訂正しとけ」
「嘗めた口聞いてんじゃねぇ!!ぶん殴ってやる!!」
「嘗めた口を耳にした覚えは無いから、ぶん殴られてはやれないな」
一人の小さい男の子が、どうやらこの村の人間らしいガラの悪い男達をバッサバッサ薙払っている。
「この場合は、どっちを助けたらいいんだ?」
思わずシルフィアに助けを求めた。
「さあ?」
だが、彼女も戸惑っている様子だ。
匠人達が戸惑っている間に小さい男の子は最後の男を投げ飛ばしてしまった。
「ん?お前らは、何しに来たんだ?まさかはるばる街をこえて食糧をもらいにきたなんて言わないよな?」
「いや、違うけど。坊やこそどうしたの?もしかして迷子……じゃなさそうね」
シルフィアが言った。
「お前もか……」
ワナワナと体を震わしている男の子を尻目にスピアが口をはさむ。
「国の犬か……シルフィアよく見ろ、こいつは郵便屋だよ」
「なっ、こんな小さな男の子がか!?」
匠人は驚愕の表情を浮かべた。
「どいつもこいつも……」
男の子の体の震えが激しくなる。
「キリオカ、この国は有能でさえあれば年齢など意味をなさない国なんだよ。残念ながらね。それと、こいつは男の子じゃない、女の子だよ。まぁ、男の子に見えるのが当然なんだけどね」
「え?」「ハ?」
女の子は口を思いっきり歪ませ、体を震わせていた。その姿はまるで爆発寸前の爆弾のようだ。
「いい加減に、節穴空けるぞお前らぁ!!」
そして、爆発した。
アップルの台詞部分のみ、許可を得て、Yが手を加えております。