第八話其の一「大いなる異常と小さき正常」
「で?何でお前らついてきてんだよ?」
異常、ジオ ラターチはうんざりした口調で言った。
「何でって、君について行かない理由がないからだよ。非日常が僕の日常だからね」
日常、ギーザがにこにこしながらジオの後をついて来る。
「……目標を失った私にどこに行けっていうのよ?」
正常、復讐少女がさらにその後ろをトボトボとついて行く。
「だからって俺について来るのかよ?ハハッ、てめぇら異常だな」
「僕はいつでも日常だ」
「あんたら話が噛み合っていないわよ?」
「ハハッ、俺について来てもいいことねぇぞ?異常なだけだ」
笑うジオを復讐少女は睨みつけてから、首を横に振り、溜め息をついた。
「もとより、あなたに期待なんかしてないわ」
「言っただろう?僕は以前も自分が所属していた部隊が全滅したんだ。異常なんかなれっこだよ。正しいことを行えるならそれでいい」
ギーザは胸を張る。
「なら好きにしやがれ」
ジオは小さく笑い、足を進める。
「行き先はどこ?」
復讐少女はジオに尋ねた。
「行き先なんて知らずに前に進む方が異常だろうが?」
「あのねぇ……私は正常なの。行き先ぐらい知りたいわ」
復讐少女は溜め息混じりに言った。
「バジールだよ」
「バジール?」
復讐少女は聞き返す。
「小さな村だ。さっきの村と同じ理由で似たような状態にあるな」
同時刻、霧岡 匠人は馬車に揺られていた。
「人助けか、俺の得意分野だな。普段もこんな仕事なのか?」
匠人はシルフィアに尋ねた。
「いや、こういうのは特殊な仕事なのよ?普段は魔導書の回収とか、暴れる魔術師の撃退とか普通のことしかしないわ」
「いや、それ全然普通じゃないから」
「今回はフレア自身が決めた特殊な仕事なんだよ、新人」
スピアが言った。
「へぇ、そいつぁすげーや。で、シルフィア、目的地はどこだっけ?」
「ちょっ、新人!?僕の扱いが酷くないか!?」
「バジールよ、バジールって村」
「マイハニー、君までか!?」
馬車は目的地へと進んでいく。