第五話其の一 「喧騒」
UMA
「あーい、二番にぶち込んしゃっといて。あーい、そっちは七番に、てきとーに吐かせちゃっといて。あーい、シルフィア、あーい」
金髪を短くそろえた女性が部屋の中央で指示をとばしていた。
「ああ、ナールさん。こいつ、例の魔術結社の奴」
シルフィアが男を女性へと引き渡す。
「あーい、分かった。私が直接吐かせようかね?あーい、で?そっちのは?どこにぶち込めばいいんだい?」
女性が匠人を指で差す。
「ああ、こいつはぶち込まなくていいの。新しく仲間になったキリオカ ショートよ」
シルフィアが説明する。
「あーい、キリオカ、あーい。よろしく、あーい」
「どうも」
匠人は頭を下げた。
「あーい、それじゃあ、私は尋問に行く、あーい」
ナールが過ぎ去って行くのを見て、匠人はシルフィアに尋ねる。
「なぁ、ナールさんってもしかしてエルフ?」
「ん?ああ、耳で気づいたのね。そうよ、うちのギルドは色々な種族の人間が集まっているの」
「そう、例えば僕のように美しい人間などがね」
キラキラと光っている派手なローブを着た青年が突然現れて言った。
「へぇ、シルフィア、他の所にも案内してくれよ」
「ええ、いいわよ。次は第一食堂へ行ってみる?」
「いいね、食堂か。どんな料理があるんだろ?楽しみだ」
匠人とシルフィアはその青年の前をそのまま横切ろうとする。
「ちょっと待ってくれたまえ。新人、この僕を無視するとは何事だい?」
青年はガシッと匠人の肩を掴んだ。
「食堂にハンバーグはあるのか?」
「ええ、あるわよ」
無理やり振り払って匠人とシルフィアは先に進む。
「僕の話を聞きたまえ!!」
「……何のようですか?あの、俺急いでるんで」
「急ぐ必要はないだろう?僕の名前はスピア ルーベン、又の名を『永遠と凍てつく氷の槍』(エターナルフリーズスピア)。覚えておいてくれたまえ」
「なぁ、シルフィア。こいつなんか勝手に自己紹介始めたんだけど?とりあえず殴っていいか?」
「……駄目よ。しかしまぁ、あんたもまためんどくさいのに捕まったわね」
シルフィアが溜め息をつく。
「めんどくさいとは、これまた手厳しいねシルフィア。でも、君のそのツンとする態度の裏腹にある僕への愛はちゃんと受け取ってるよ、マイハニー」
バゴッと派手な音が鳴り、スピアが吹き飛ぶ。
「さ、食堂に行くわよ」
「おい、いいのかよ?なんか、痙攣してやがるぜ?」
「仕方ないわよ。馬鹿は死なないと治らないんだから」
「何?お前殺す気だったの!?」
「ああ、ここにいましたか。シルフィア、キリオカ。帰ってきたばかりで悪いけどあなた達にも仕事に行って貰わなくちゃいけなくなりました」
食堂への道の途中にフレアが立っていた。
「ハ?」
「何の仕事?」
シルフィアが尋ねる。
「ある村への支援活動です」