白き月夜に滅びの調べを
朽ち果てた
板葺き屋根のその上に
淡い光の帳が落ちて
蒼錆びた
時計の針のその先も
かつての栄華の夢を見る
在りし日の
面影を残した
白亜の廃墟
広いホールに
めぐる回廊
長い廊下もいまや朽ち果て
歩く者とてありはしない
軋む床板
割れた窓
テーブルの上の
皿とグラスもキャンドルも
テーブルクロスもそのままに
剥がれ落ちたタイルの欠片と
微塵に砕けたシャンデリア
枠だけ残ったステンドグラスに
ぼんやり滲む白い月
主のいない書斎の隅の
デスクの上にも明りが伸びて
どこからともなくゆっくりと
微かに流れるそのメロディ
闇の中をゆらゆらと
明りを求めて流れ出す
壊れかけのオルゴール
はじめはどこか密やかに
そして、だんだんはっきりと
長く
細く
緩やかに
所々、音が飛び
澄んだ音のすぐ後に
淀んだ音が交差する
破滅を歌うオルゴール
瓦礫に変わった温室を
崩れかけた屋根裏を
腐りかけたキッチンを
廊下を抜けて
階段を
窓をすり抜け
煙突へ
揺れる電燈
はためくカーテン
ゆらりゆらりと蠢く影に
そろりそろりと横切る影に
冷たく響くオルゴール
いまも彷徨う亡霊たちも
四隅に息づく影たちも
じわりじわりと滲み出る
滅びの甘美な喜びに
鉄錆び色の涙を流す
廃墟の中のオルゴール
歌い疲れたガラクタは
夜明けの光を待ちもせず
ぷつり
ぷつりと
こと切れて
闇夜の底に黙り込む
甘い香りの沈黙に
四隅の影も沈黙し
いまも彷徨う亡霊たちも
耳をすませて黙り込む
淡く白い月明り
廃墟を照らす女神の笑みも
楚々と空から降りて行き
闇が廃墟に溢れ出る
崩れ落ちるマントルピース
砕け飛び散るガラスの破片
柱が折れて
床が抜ける
さぁ──
滅びよ
滅びよ
全て滅びよ
あぁ──
なんと甘美な滅びの調べ
なんと清らかな虚無の喜び
今宵もオルゴールはまた歌う
白き月夜に滅びの調べを




