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追放された死神ですが人間が汚すぎて魔王になりました  作者: 雪だるま


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2

 冥界第七管理局。


 深夜三時。


 本来なら静寂に包まれているはずの死神本部は、現在――地獄のような有様になっていた。


「第三魂魄倉庫が満杯です!!」

「だめだ!! 第五搬入口も詰まってる!!」

「誰だこんな数持ってきたの!?!?」

「知るか!!!!」


 廊下を大量の下級死神が走り回る。


 積み上がる書類。

 鳴り止まない警報。

 青ざめる管理官たち。


 そして。


 巨大な魂輸送コンテナの山の上で。


「のだっ♡」


 銀髪の死神レイが超ドヤ顔で座っていた。


 ふんぞり返っている。


 めちゃくちゃ偉そうである。


「うむ!頑張ったのだぁ!吾輩、超働いたのだぁ!」


 周囲の死神たちは唖然としていた。


「……」

「……」

「……おい」

「何人分だこれ」

「まだ集計中です……」


 事務官の死神が震える声で答えた。


「現時点で……約百三十万人です……」


「…………は?」


 空気が止まった。


 レイはニコニコしていた。


「のだっ♡」


「いや待て待て待て待て!!!!」


 監察官イリゼアが絶叫した。


「何をした貴様ァ!!!!」


「のだっ?未処理案件を終わらせてきたのだぁ!」


「規模がおかしいだろうが!!!!」


 レイはえっへんと胸を張った。


「うむ!吾輩、考えたのだぁ!」


「嫌な予感しかしない」


「一人ずつ刈るから面倒なのだぁ!」


「当たり前だ!!!!」


「だから王国ごと刈ったのだぁ!」


 沈黙。


 完全な沈黙。


 数秒後。


「……………………は?」


 イリゼアの声が裏返った。


 レイは得意げに説明を始めた。


「まずぅ!寿命近い人を探すのが面倒だったのでぇ!」

「王国の上空から超広域死霊術式を展開してぇ!」

「“寿命判定省略・まとめて刈り取りモード”を使ったのだぁ!」


「何を使った!?!?」


「便利だったのだぁ!」


「禁術だぞそれ!!!!」


 周囲の死神たちも騒然としていた。


「お、おい……」

「冥王戦争時代の術式じゃねぇか……」

「しかもあれ、一級災厄指定の……」


 レイはキラキラした顔で続けた。


「そしたら超早かったのだぁ!

 一瞬で終わったのだぁ!

 うむ!効率化なのだっ♡」


「効率化で国家滅ぼすな!!!!」


 イリゼアの怒声で窓ガラスが割れた。


 レイはビクッとした。


「のだぁっ!?」


「貴様、自分が何をしたかわかってるのか!?!?」


「仕事したのだぁ!」


「やり過ぎだ!!!!」


 レイは不満そうに頬を膨らませた。


「だってぇ……未処理案件を全部終わらせろってぇ……」


「“普通に”終わらせろ!!!!」


「説明不足なのだぁ!」


「常識で考えろ!!!!」


 下級死神たちは遠巻きに震えていた。


「王国って……あの……」

「ベルグラン王国ですよね……?」

「人口百万人超えてるぞ……」


 レイはニコニコしていた。


「のだっ♡」


「褒めるな!!!!!!」


「まだ褒めてないのだぁ!?」


 イリゼアは頭を抱えた。


 胃が痛い。


 本気で痛い。


「ちなみに……どうやって刈った……?」


「のだっ?」


「詳細を言え」


 レイは嬉しそうに説明し始めた。


「まずぅ、王都の真上でぇ!」

「超巨大死神モードになったのだぁ!」


「は?」


「身長300メートルくらいなのだぁ!」


 周囲がざわついた。


「馬鹿か!?」

「霊力どうなってんだよ……」

「そんなの維持できるの冥王級だけだぞ……」


 レイは気にせず続ける。


「それでぇ!空から鎌を振ったのだぁ!」


「…………」


「そしたら王国全域の魂が“スパァン!”ってなったのだぁ!」


「雑すぎる!!!!」


「超気持ちよかったのだぁ!」


 イリゼアは震える手で机を掴んだ。


「その後は!?」


「のだっ?」

「当然大混乱になっただろ!!!!」


「のだぁ。人間たち、みんな空見て固まってたのだぁ」


 レイは妙に嬉しそうだった。


「なんかぁ、“終末だ”とかぁ、“神罰だ”とか叫んでたのだぁ!」


「当たり前だ!!!!」


「うむ!吾輩、超怖かったと思うのだぁ!」


「自覚あるのか!?」


「のだっ♡」


 最悪だった。


 すると。


 奥からヨロヨロと老死神が歩いてきた。


 魂管理局長・グラドール。


 数千年生きる大物である。


 そのグラドールが。


 積み上がる魂コンテナを見て固まった。


「……何じゃこれは」


 全員が静かにレイを指差した。


「また貴様かァーーーーーーッ!!!!!!」


「のだっ♡」


「可愛く誤魔化せる規模ではない!!!!」


 グラドールは杖を振り回した。


「国家一つ消えておるではないか!!!!」


「仕事したのだぁ!」


「限度を知れ!!!!」


 レイはキョトンとしていた。


「でもぉ……未処理ゼロなのだぁ?」


 その瞬間。


 事務官が青ざめた顔で走ってきた。


「た、大変です!!」


「今度は何だ!?」


「急死者数が多すぎて輪廻システムが詰まりました!!」


「は?」


「転生待機列が二百年待ちになってます!!!!」


 全員が静止した。


「……………………」


 レイだけが首を傾げていた。


「のだぁ?」


「貴様ァーーーーーーーーーーッ!!!!!!」


 次の瞬間。


 冥界全域に怒号が響いた。


 レイはものすごい勢いで逃げ出した。


「のだぁあああああ!!怒るななのだぁあああ!!効率化なのだぁあああ!!」


「待て!!!!」

「拘束しろ!!!!」

「今月の始末書全部こいつに書かせろ!!!!」


「嫌なのだぁあああああ!!!書類は嫌なのだぁあああ!!!」


 黒翼をバサバサさせながら逃げ回るレイ。


 だが。


 下級死神たちは別の意味で震えていた。


「……でも」

「ああ……」

「やっぱレイ先輩……」

「スペックだけは化け物すぎる……」


 たった一晩。


 それだけで。


 王国一つの命を刈り尽くしたのだから。

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