アインスレイヴ幕前~裁きの刃、起動~
※夢現投稿ゲーム『人型の器』の先の時系列の話にして、ハンゲブログにて『tubasanokage』として投稿している習作漫画『アインスレイヴ』の前日譚となります。
ブログ内でもなろう投稿作のキャラクターの絵を描いている関係で同一人物証明の為の記載となります。
アインスレイヴ1へのURL:https://blog.hange.jp/L355413674/article/43949900/
アインスレイヴ幕前~裁きの刃、起動~
神野刃の両親は、エネルギー実体化技術『マテリアライズ』の第一人者だった。
実験段階のマテリアライズは不安定で、実体を為すために高出力が必要で、一人息子の誕生日に両親共に休暇をとった際、危険な起動実験を禁じていた。
だが、あっけなく禁を破った者の所業によって、核爆発が起きた。
研究者は全滅、市街に広がらない位置に作られた孤島の研究所とはいえ水質汚染等の問題によるバッシングを受け、神野夫妻は研究者の座を追われた。
そして…
「よしっ…完成。どう?サヤ。」
地下室でエンターキーを軽快に叩いて、カメラ付きのPCに微笑みかける少年、神野刃。
若干10才ながらに既に常人を逸脱した頭脳を用いて、一人AIをくみ上げていた。
「…こんにちは。」
「うん、返事はいいね。思考回路になってるかは生活してみてそのうち…かな。」
「はい。」
素焼きで基礎知識のみを持っているせいかあたりさわりのない返答を繰り返すサヤを見ながら、ゆっくり様子を見ないとな、と思いながらモニターを持った。
ノートPCで処理しきれる性能ではないサヤの本体は配置されている高性能PC内にあるが、端末越しに通信で映像、音声を確認する事は出来る。
スマートフォンを手に籠っていた地下室から出る為階段を上る刃。
木の軋む音。
その先の光景を知る者なら、不穏な音の積み重ねにも思えるそれを、刃は淡々と登っていく。
扉を開いて、地下室を出て…
腐臭が、少年の鼻を突いた。
割れたガラスが飛び散った、砂利だらけの部屋。
元々が重要な役職だった事もあって設置されている固定電話がけたたましい音を響かせ続けている中、少年はそれを見つけた。
天井からつられて動かなくなっている両親を。
呆然とそれを眺めて硬直していた刃は、両親にサヤを紹介するつもりで持ってきていたスマートフォンを取り落とす。
派手な音を立てて落ちたスマートフォン。サヤはそのカメラから、硬直する刃の顔を見た。
起動にあたって、その前からPCに入ってきていた刃の表情。
その中の何処にも存在しない、感情が何処にあるのかも分からない顔。
壊れた家、響く電話、やがて聞こえる悲鳴とサイレン。
その間も立ち尽くす刃。
侵入してきた警察によってふらふらと連れられて車両に乗り込む間すら一言も発さずにいた刃とスマートフォン越しにサヤに届く言葉。
『自殺ですって!あんな幼い子を残して!』
『どこまでいい加減な奴らなんだ!国中滅茶苦茶にしておいて!』
『株価下げやがったのに死にやがって責任取って金払ってから死ねよ!!』
力が入っているのかも怪しい足取りでパトカーに乗り込む刃。
事情聴取他の為に落ち着かせるつもりで連れてきていた婦人警官を隣に、刃は涙も流さず表情も変えずにいた。
「…誰のせいで。」
ポツリ。
小さく一言漏らした刃。
誰に聞かせるためでなく漏れたその言葉を、その表情を、スマートフォンのマイクとカメラ越しに見つめるサヤ。
それが、起動初日にサヤが見た『人間』の姿だった。
幸いに押収されずに済んだサヤの入ったPCと共に遠縁の親族に引き取られた刃は、早々にネット上で可能な仕事を常人離れしたステータスで捌いて稼いだ金を取引材料に、僻地の家を買わせて一人移り住んだ。
感情を見せない刃を不気味に感じていた親類は金を得て厄介払いができると大人が必要な手続きを済ませ…
カミノヤイバは起動した。
全ての人々を裁く為に。
「いやーいよいよって奴だね、腕が鳴るなぁ。」
「調子に乗るな、我らが如何に高い能力を誇っていようと世界対個人に変わりはない。」
黄色の髪…に似せた金属装甲の少女機体がソファで槍を手に楽し気に笑う中、銀の少女機体が黄の少女の傍らに立ち、彼女をいさめる。
彼女達はナイトユニットと名付けられた戦闘用人型機体。
同サイズでは既に現行最強と呼べる性能を誇る上、それだけで済まない切り札を内包している。
黄の少女はミュゼル、銀の少女はファーエルと言う。
「その前に主の仇である妖怪さんの事もあります、彼女を無傷で討てなければその後の全てに支障が出ます。」
「もー、ファー姉もエクセルも心配性だなぁ。」
四方から注意されている状況を嫌がるように目を閉じたミュゼルは、エクセルと呼んだ向かいに座る黒い機体少女を適当にあしらう。
いい加減なミュゼルの様子に、忠告を流されたファーエルとエクセルは肩をすくめる。
「うん、稼働からそれほど日も経ってないのに皆自然体でいいね。」
三機で会話する地下室に、二人の人影が下りてくる。
一人は桜色の機体、以前PC内でのみ存在できていたAIサヤ。そのボディ。
もう一人は彼女たちの創造主、青年となった神野刃。
「あ、マスター。ヤッホー!」
「主に対してそんな適当な声かけをするのはお前だけだぞ…」
「あはは、まぁ気にしなくていいよ。」
刃にすらお気楽なミュゼルに若干の怒りを瞳に見せるファーエル。
サヤはそんな様子を気にもかけず、刃の傍らで彼の顔を見ていた。
「さて…まずは工場占拠か。フレンドユニットのフリをさせるつもりで武器すらまともに揃ってないからね。」
「ボクとファー姉はいいけど、エクセルは何にもできないしね。」
「エクセルは火器管制タイプだからな、銃や乗り物が手に入ってからが本領だ。それよりも…姉上は大丈夫なのですか?」
手持ち武具が主体であるファーエルとミュゼルは、それぞれに、ファーエルは大剣、ミュゼルは槍と盾を既に持っていたが、個人で銃火器を保有する訳にはいかなかったため、そもそも銃火器を使う前提で作られたエクセルと、空戦の為に作られたサヤには現状使える武装がなかった。
だが、問いかけられたサヤは小さく鼻で笑う。
「私の心配など不要だ。それよりもいよいよ作戦決行となる、準備はいいな?」
「はっ!」
「オッケー。」
真っ直ぐなサヤの問いかけに、直立で答えるファーエルと、続けてヒラヒラと手を振りながら答えるミュゼル。
この場に集う機体は四機。
一人沈黙しているエクセルに一同の視線が集まる。
「戦いたくないかい?」
刃から投げかけられた問いに反応して顔を向けるエクセル。
口を少し開きかけ、それを噤んで首を横に振った。
「嫌なら嫌でどうせ武器もないんだしボクに任せてのんびり」
「いえ、行きます。」
ここまで通りのテンションでエクセルを休ませようとしたミュゼルの言葉を断ち切るように立ち上がって強く答えたエクセル。
少しの間をおいて、刃は微笑んで小さく頷くと、小さな端末を取り出す。
「それじゃ、行くよ。」
取り出した端末を握る刃は、その起動スイッチを見据えて深呼吸を一つ。
そのスイッチを押した時点で最早一切の取り返しはつかない。
一瞬、躊躇うように指を止めた刃は、振り切るように強く端末のスイッチを押した。
宇宙を舞う人工衛星全てをハックしてその軌道を操るウイルスプログラム。
流星にあわせて軌道とタイミングを調整されたそれは、小さなドミノからやがて大きなドミノを動かすように隕石同士の流れを操作して、最終的に巨大隕石を地球に落とすためのメテオピンボールプログラム。
天体移動の計算が少しでも狂えば上手くいかない筈の、異常な才覚故に完成してしまった狂気のプログラムだった。
しかも、それだけではなかった。
人と同じ機材を動かすことが可能な自動機械、フレンドユニットと呼ばれるそれが普及しているこの世界。プログラム次第で車両の運転や料理まで人がこなせることは大体可能なそれらを…
衛星経由のウイルスプログラムによって一斉に『人間を殺す殺戮兵器』に変えた。
発展著しい都市ほど多量に配備されている人間の友として作られた自動機械が一斉に殺戮兵器になる中、少し遅れて巨大隕石が計算された壊れ方で振ってくる。
主に海外の主要都市目掛けて。
世界を繋ぐ通信網として利用していた人工衛星が使い物にならなくなった中で降り注ぐ隕石の正確な位置もタイミングも分からず迎撃ミサイルなど基地にしかなかった状況で降り注いだ隕石は、まともに防ぐこともできずに町ごと人々を破壊しつくした。
がれきを避け、地下に隠れ、避難していた人々も、寸断された道で車両も使えない中で痛みも感じない身体で襲い掛かってくるフレンドユニットに悉く殺されていく。
その惨劇が露見する少し前…
日本のある孤島に刃を連れた三機が乗った船が乗り込んでいた。
違法、未認可の代物を開発している極秘研究施設のある島。
その中に強行侵入した刃達は、並居る警備を悉く壊滅に追いやりながら突き進んでいた。
フレンドユニットと別の、全身に機銃がついた四足歩行機械や超振動ブレードを持った警備兵などが散見する施設内部、人間では例えどれだけ鍛えていても一瞬で挽肉に変わる魔境だが…
銃弾より速く移動し、人を骨ごと握り潰すような力を持っている刃作の三機のナイトユニット相手では武器すら持たずに来たエクセル相手ですら損傷させることもままならなかった。
「うん、そこの上部にシャッター。それから壁の中からウォーターカッターかな?」
「了解!」
起動条件や配線こそ分からないが、配置されているトラップなどの物そのものは、多少の大きさがあれば、刃は手持ちの端末で施設内部の解析が可能だった。
手持ち端末に仕込める機能など、人型機体の三機も起動する事での使用が可能だ。しかし、コンマ何秒で飛来するような火器や爆発物に反応するにあたって常時起動するには処理が増える事で戦闘能力に直結しかねないので、今回は同伴している刃に後方から指示を貰う形で解析機能を切っている。
場所さえ聞けば、起動する前に悉くを大剣を持っているファーエルが壁ごとトラップを斬り裂いてしまう。
形状を維持できないほど壊されて動く機構など化学薬品の爆弾位しか存在しない。位置が分かってしまえばコンクリートや石壁どころか鉄材すら障害にならないファーエルの大剣の前には存在しないも同然だった。
「施設内の連中を逃がすのもマズイ、ファーエルは掃討を頼む。」
「了解、お気をつけて。」
返事を返すやいなや一人離脱するファーエル。
通路を一つ曲がった結果姿が見えなくなるが、所々聞こえる爆発音や倒壊の音が派手な立ち回りを伝えてくる。
「さて…僕たちは、この先に行こうか。」
隠されてもいない最下層への階段を指し示すと、エクセルとミュゼルは頷いて、刃に先行する形で歩を進めた。
爆散して煙を上げる警備システムや、原型をなくした人だったモノが白い床を黒や赤に彩る中、壁を背に辛うじて立つ少女と向かい合う刃の姿があった。
「…ったく、これでも隠し研究施設だってのに、たった三機で制圧してくれるとはね。」
「こっちも驚いたよ、まさか危険視して切り捨てたマテリアライズを使ってるとはね。ふざけた妖怪ババアだ。」
どう見ても中学~高校生相当がせいぜいにしか見えない少女をババア呼ばわりする刃だが、誇大表現ではない。
彼女は永遠の命を目標に、クローンを作り自身をそのクローン体に移して生きながらえている天才研究者。
神野夫妻にマテリアライズ実験事故の全ての責を負わせて免職に追いやった張本人でもある。
挙句、彼女は携行装備でマテリアライズによる防壁発生装置を所持していた。
銃弾を防ぐ光の壁を展開した彼女だったが、ミュゼルの攻撃で防壁ごと破壊され、盾で押し飛ばされて壁に叩きつけられていた。
その上で刃が道中で奪った銃を撃たれた腕からの出血が止まらず、放っておけば長くはもたないと見えた。
ミュゼルの手にした槍の刃は青い輝きを纏っている。
エネルギーの物質化技術であるマテリアライズを利用した強化武装。
纏う形で起動する事で既存の物質を上回る強度や破壊力を持つ事ができ、展開中であれば余程の事がなければ破損する事は無い。
「で、ここまでぶっ飛んだ技術を使ってやる事はパパとママの敵討ちかい?」
「まぁね。最もお前一人で済ませる気もないけど。」
「…はっ、トチ狂ってるわね。」
嫌味な言い回しを意に介さず冷めた目で返す刃の短い言葉からこの先に察しがついた彼女は、獰猛な笑みを浮かべて返す。
「で、トドメも刺さずにノンビリしてていいのかい?」
「ここの異常を感知して航空戦力が向かって来てるからか?」
暗に自分を殺すように告げる彼女を前に、誰が告げた訳でもない策を言い当てた刃。
過度に狼狽はしなかったが、口を噤んで眉を動かした一瞬で侵入後の状況からの予測を確信に変える。
「ただの人間が使う航空戦力ならサヤの相手じゃないさ。」
「おいおい…航空機兵まで作ったのかい、とんでもないねアンタも。」
揃えた戦力も読みも当てて状況も完封と言っていいにも拘らず、刃は凍り付いたような変動を感じさせない表情のままで、刃が引き金を引いただけで死ぬにも拘わらず笑顔の彼女。
「…なんか表情がまるっきり逆だよね。」
「姉さん、お願いですからこんな時位警戒を厳にしておいてください。」
邪魔せず戦力として付き添っているミュゼルが耐え切れずに口を開き、一応は敵地なのに呑気なミュゼルにエクセルは肩を落とした。
緊急用の基地の『後始末用』空爆機。
核でこそないが強力な弾頭を持ったソレは、小さな影を見つける。
桜色の小さな影。
宙を舞うソレは、眩い光を放つと共に、一瞬で空爆機のコクピットにつかまっていた。
何が起こったのかを理解するだけの間がないまま、コクピットを破った手に頭を捕まれたパイロットは、操縦桿を離す訳にもいかずに現実を処理できずに固まる。
「安全圏から基地内の味方ごと消去する仕事…自分の死は予定外だったか?」
そのまま掴んだ頭を握りつぶしたサヤは、積んである爆弾に衝撃を加える。
爆風を受けながら離脱するサヤ。
流石に爆炎の中に覆われるが、それも一瞬の事で煙を切り裂いて桜色の光を全身に纏ったサヤが姿を見せる。
空を染める爆炎に手の甲を翳すようにして、自身の血濡れの掌を見つめるサヤ。
思い出すのは、無実の罪を世界中に捺されて死んだ刃の両親と、その死を眺めて一人残った刃を放り出した親などと称した群衆。
「協力が、善意が、正義が美しくて強い等とほざくなら、我々を止めて裁けばいい。主に絶望を押し付けたこんな世界に、そんな強さなどあるものか!」
追加で飛来する複数の戦闘機を見据えて手の中の血を握りつぶすように拳を握ったサヤは、光を纏って戦闘機に向かって空を翔けた。
島規模とは言え施設丸ごと破壊するための爆弾の爆発音は、地下施設内でもその鈍い音を遠くから届かせた。
「やれやれ…航空機に対応するレベルのマテリアライズ…核融合炉クラスの出力は最低限必要だろう?」
「よく知ってるじゃないか盗人猛々しい。だが、これで終わりだ。」
壁に血の跡をつけながら座り込んだ彼女に対して歩み寄った刃はその額に銃を向ける。
「しかし…見事な頭のくせにつまらないボーヤだ。」
「何だと…」
「この私を出し抜いた褒美って訳じゃないが、ウチの娘と楽しむといいさ。」
流れた血だけで既に意識も薄いだろう中で尚も笑みを崩さない彼女を前に、銃を握る手に力を込めた刃は、その額に押し当てるように銃口を押し付け、引き金を引いた。
施設に残っていた唯一の敵対生命。
その消失を仕事として冷静に眺めていたエクセルは、直後に発生した強い信号に気づく。
「主、彼女の死に反応して信号が発生しています。」
「気づいてはいたさ。まぁ爆撃機が来た時点でこの施設の解体にリンクした代物じゃないだろうし、然程気にする事…」
冷静さを欠いてはいない。そのつもりで説明をしていた刃だったが、途中で言葉が止まる。
ウチの娘。
世界を手玉に取って最新技術をかき集め、それらを超える人間であった彼女に、娘…そもそも同じ道を歩く男など存在しない。では娘とは何のことなのか。
「主!」
考えを整理している最中に、施設の制圧調査を行っていたファーエルが呼びかけながら紙束を持って駆け寄ってくる。
「外部に発信された信号を感知したので届けに来たのですが、此方を。」
「ありがとう。」
紙束を受け取った刃はそれらをはためかせるように振るう。
それだけで中身の確認を終えた刃は、資料が示す事実に硬直する。
「初回突破クローン体、ケイトを採用…」
資料を握る手に力を込める刃。
それは、住民手続き擬装用の資料だった。
世界中の要人を手玉に取っているような下手をすると世界の支配者とすら言える存在である彼女が、自身の為に利用する予定で作ったクローン体を、人間として登録した資料。
「アイツが…娘だと?」
刃の頭の奥に冷たいものが走る。
全てを出し抜き自身の両親を使い捨てて研究成果を奪い、そもそも大量生産したクローンを使い捨てにして自身を生きながらえさせようとした人の形をしているというだけの化物。
そんな存在が、娘などと言う言い回しをする相手。しかも使い潰していたはずの道具の一体。
得体の知れない病にかかったような、そんな冷たさに刃は微笑んだ。
「三人とも何処かにいるアイツの人形を探し出してほしい。マテリアライズに関してはまだ安定してない筈だから安易に使わないように。」
「どーやって探すの?流石に人間一人日本中から探すなんて」
「馬鹿かお前は。死んでいなければ今発生した信号を受け取って何か動いている筈だ。奴の縁者ならばフレンドユニット程度なら上手く立ち回っている可能性が高い以上、破壊されたフレンドユニットや戦闘音、通常発生しない熱源を追えば見つけられるだろう。」
面倒そうに言いかけたミュゼルの言葉を遮って説明を行うファーエル。
現状の機能で出来る上に視力…カメラアイの視認範囲とて人間と桁違いの彼女達であれば、散開すれば一機ごとに大分広範囲をカバーする事が可能だ。
ミュゼルはバカ扱いされてむくれつつも、方法としては妥当なものだった為口を噤んだ。
「僕はこの施設を使ってサヤとエクセルの武装を用意する。三人とも頼むよ。」
「はっ!!」
「りょーかい。」
「分かりました。」
それぞれに返事を返した三人は、常人からしてありえない速度で施設を駆けて姿を消す。
瞬く間に静まり返った施設。
『ウチの娘と楽しむといいさ。』
結局笑みを崩す事もなく死んでいった仇敵の最期の言葉。
それを思い返しながら刃は自身の表情を考える。
無。
引き金を引く瞬間位であれば目つき位憎悪が見えたかもしれないが、復讐を終えて、人間を殺しつくす計画を実行している中で、その悲鳴や苦痛、優位をとったことを楽しむような事も怒りをぶちまけるような事もなかった。
「つまらない…か、確かにね。」
両親を死に追いやった彼女と世界の流れそのものに対しての敵対、敵討ち。
その実行に迷いはなく、しかし、それを完遂しても得られるものはない。
「楽しめる程まともなものに会った試しもない…すぐにお前の人形も同じ場所に送ってやるさ。」
仇敵の遺体を前に言い捨てた刃は、一人開発室に向かって歩き出した。
既に形状機構のみは設計済みであった武器のパーツを生成するために成型機に材料とデータを放り込んで起動させた刃の元に、ふらふらとおぼつかない様子のサヤが姿を見せた。
「ん…マテリアライズのフル稼働はやっぱり無茶みたいだね。動力回りのメンテナンスするから横になって。」
「は、申し訳ありません…」
空戦機であるサヤは背中にブースターがついている関係上背中から内部を弄る構造になっている。
サヤがうつ伏せでメイン動力をを止めた所で、手早く背中の部品を弄り始める刃。
「…ごめんね。」
素人目には手が見えない速さで整備を進めながら、呟くように謝罪する刃。
予備電源で思考や音声は機能しているサヤは、少しの間を置いて答えを返す。
「私は主の為であれば、妹たち三機と戦う事も自身が壊れる事も問題ありません。」
「だからさ。あの妖怪ババアのせいで気付くって言うのも癪だけど、僕はこの先に『得る』物を持ってないみたいだ。」
身を焦がすような念に動かされてここまで来た刃だったが、当然ながら人類全てを滅ぼして『得る』物はその世界に残っていない。
刃のプラスの為であれば何でもできると豪語するサヤに、それが存在しない事の謝罪。
「主周りに限らず、あの日からこの時まで、戦火から犯罪まで止むことなく、何より一般人を名乗る連中も止める為に動いている者等ほぼ見えない有様。私心でも人間の味方は出来ません。落ち着いてから主の望む技術を極める手伝いでもさせて頂ければ。」
「…そっか。」
迷いなく答えるサヤに短く返した刃は、メンテナンスを終えた部位を改めて固定していく。
全てが終わると共に、武器の部品を生成していた機器が完成を知らせる通知音を鳴らす。
サヤ用の二丁銃剣。
マテリアライズに対応したそれは、距離があっても使えて接近も一瞬で済むサヤにとって利便性の高いものと言えた。
「エクセル用の装備も作らなきゃいけないから、それが完成するまで施設の掃除を頼むよ。」
「はい。」
銃剣のパーツを取り出してエクセル用の拳銃のデータを入力する刃に、短い返事を返したサヤは空気の動きだけで突風がおこるほどの速度で部屋を飛び出した。
「張り切りすぎて出撃前にまたメンテナンス必要にならないといいけど。」
高いパワーを誇る機体とは言えフレーム、関節部は最高格なだけで地上現存の金属。
フルパワーで走りまわったり重い荷物を持てば最悪歪む。
この施設にも幾らか材料があるとは言え、細かいパーツだけならともかくフレーム回り丸ごと交換するとなると手間が酷い。
自分の為に駆けずり回るサヤの出て行った扉を見てどうなるか想定している刃は…
家族を見送った自身が微笑んでいる事に気づかなかった。
えー…大分期間開いてて何ならこんなタイミングで投稿する気でいた訳ではないのですが…
前書き通り、各方面で自作キャラクターについての絵やらゲームやら投稿している為、こちらに一切つながる情報がないと言う状態が不安になった為急遽この前日譚を描き上げる事と相成りました。
メールアドレス消失からアクセスできなくなりかけるとか言う大失態を犯し、どうにかなったまでは良かったのですが…完全にアクセスできなくなった際に此方に繋がりの情報が無いと、『あちこちでなんか勝手にやられてる挙句同じ人と証明できない』状態になりかねないと大慌てw
以前は、『借りてる場所以外の宣伝になりそうな事は避けよう』とか馬鹿みたいに殊勝な事考えてた訳なんですが、上記証明方がない方がよっぽど大問題なので記入しとこうと…万一問題なら大丈夫なつながりの残し方を聞こうと思います。いや、リンク貼る事自体は質問版にあったし、直接とかじゃなさそうだから大丈夫だと思うんだけどね(汗)
さて、ここまでは諸事情。ここから普通に本作あとがき。
話自体は漫画だろうがゲームだろうが構築するもんだから大丈夫だろ…と高をくくってたのですが…
いや、小説書くにしても久々だとどうしていいやら戸惑うもんですねw
絵の練習のつもりでお絵森で投稿してみたはいいんですが、この世界線禍々しいはドロドロしてるわで向こうのパステル空気で詳細描いたら怒られる代物だと思ってまして、『その内小説で投げるか』と思ってはいたんです。
が、まぁ上記事情から早急にとなって前日譚を。
おかげさまで超重要人物なのに妖怪ババアの名前すらまともに決まってないw
適当に決めるのもやだったし、『あの人』みたいに公開されないままシナリオが進む事もあるので、無理矢理今決めなくてもなってなったもんでw
刃君、現代的には天罰覿面倒されてないと苦情来そうなレベルで暴れてますが、あんまそんな気なかったり…『敵の事知らん討伐大好き』な空気嫌なもんで近年の人気作に手を出せない所あるんですよねー…新作触れてるときに味方陣営にツッコみたくなること何度もあったし(汗)
まぁ近年も何もずっとこんな感じですね。言の葉に踊るから。




