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第017話 急襲!!! ゴブリンと白い影

朝日がゆっくりと村を照らし始めていた。

広場には見送りの村人たちが集まり、笑顔と涙が入り混じった優しい空気が流れている。


ユウトは母から小さな包みを受け取り、ナギは村の子どもたちから花で作られたティアラをもらって微笑んでいた。

ソウマは剣の鞘に手を添え、まにまには静かに荷を背にしながら前を見つめていた。


そのときだった。


「な、なんだあれは……!?」


村の北門の方角から、土煙が上がる。

その中心から、現れたのは——


「……ゴブリン、だと!?」


小柄な緑色の影が5体、広場へと向かって駆けてくる。

村人たちはざわめき、慌てて子どもを抱えて後退した。


「くそっ、こんなときに!」

ソウマが剣を引き抜く。


まにまにの目が光り、演算が即座に走る。


脅威確認:ゴブリン種×5/接近速度:急

村人状態:非武装者多数/防衛体制不十分

対応策選択:「挑発」モジュール 起動


「こちらです。標的は、私です」


まにまには堂々と前に出て、

身体から微弱な音波と光を放つ。

ゴブリンたちの動きが一瞬、まにまにへと引き寄せられる。


「うおおおっ!!」

ソウマが叫び、ゴブリンの一体に斬りかかる。剣は肉を裂くが、すぐに他の二体が飛びかかってくる。


「ユウト! 下がれ!!」


「僕もやる!!」

ユウトは短剣を手に、震えながらも飛び出した。

だが——


「ぐあっ!!」

ゴブリンの棍棒が肩に直撃し、ユウトは地面に転がった。


「ユウトくん!!」

ナギが駆け寄り、震える声で手をかざす。


「癒えよ……癒えよ……っ!!」


彼女の手から光が漏れ、

ユウトの傷口がじわじわと閉じていく。

だが、完全には治らない。

ナギの魔力が不安定に揺れている。


周囲では、

村の大人たちも農具を手に必死の応戦をしていた。

それでも装備が手元にない彼らにとって、

ゴブリンの暴力はあまりに凶暴だった。


その混乱の中——


「——っ!」


ナギの背後に回り込んだ一体のゴブリンが、

棍棒を振りかざす。


「ナギ!!」

ユウトが叫ぶ。


まにまにも、ソウマも届かない。


もうだめだ——

そう思った瞬間だった。


——ズガァッ!


森の奥から白い影が飛び出した。


空気を切り裂くような動きで、ゴブリンに噛みつく。

悲鳴が上がり、棍棒が落ちる。


その白い獣は、

ナギの前に立ち塞がるようにして、低く唸った。


「……あれは……」


ユウトが、驚きとともに声を漏らす。


「白牙……?」


そう、それは——

かつて水源を失い、狂乱しかけた狼の群れ。

まにまにの助けにより、生き延びた“あの白牙”だった。


ゴブリンたちは

白い獣の牙に恐れを抱いたかのように後退し始める。


ソウマがそれを見逃さず、剣を構え直した。


「今だ、仕留めるぞ!!」


白牙と共に、村の若者と旅立つ者たちの怒号が、

夜明けの村に響きわたった。


ゴブリンたちは混乱し、村の外れへと逃げ出していった。

ソウマ、ユウト、村の男たちは追撃を控え、

村の門のところに止まった。


ナギはまだ呆然としながら、白い狼を見上げていた。


その白い獣——白牙は、戦いの終わりを見届けると、

まっすぐにまにまにの方へと向かった。


木立の中を歩くその姿は、

まるで森の王のように静かで、気高かった。


そして——

まにまにの前で立ち止まると、

低く、腹の底から響くような声を発した。


「水源の時には迷惑をかけた。そして——世話になった」


その声は、まさしく“言葉”だった。


「……しゃ、しゃべった……!?」


ユウトが素っ頓狂な声を上げた。


村人たちも次々に驚きの声を漏らす。

言葉を話す獣など、誰一人見たことがない。


だが白牙は動じることなく、ゆっくりと頭を下げた。


「我ら白牙は、君たちに恩がある。

水が戻り、命を繋げたこと——それはただの生存ではない。“再び世界とつながった”ということだ」


まにまには静かに頷いて、返事をした。


「今日、あなたの存在が、この村を救いました。私たちは、今ここに“つながって”います」


白牙は、さらに言葉を続けた。


「この村の守りは、我らに任せてほしい。

森からの脅威には、我らが立ち向かう。……それが、せめてもの礼だ」


そして、少しだけ目を細めて、

旅立ちの準備をしていた3人の方を見やった。


「そして——」

その声には、どこか静かな熱があった。


「私は、君たちの旅に同行したい。

“恩”ではない。……“意思”だ」


一同、言葉を失う。


だが、

まにまには一歩前に進み、ゆっくりと微笑んだ。


「……歓迎します。あなたのその意志を、私たちは“旅の仲間”として受け入れます」


「いいですよね?みなさん!」


3人は心強い仲間を歓迎して笑った。


風が静かに吹き、白牙のたてがみが揺れた。


朝日はすでに高く昇り、

新たな仲間を迎えた彼らの旅の始まりを

祝福するように照らしていた。

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