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リーナの頼み

 エルムの村での生活に慣れ始めた頃、村の人々の頼みで薬草採取に出かけることになった。


「この辺りに生えている『ムーラ草』を摘んでくれる? 薬を作るのに必要なの。」


 リーナの頼みを受け、森の外れへ向かった。採取を終えて村へ戻ろうとしたとき——


「……ん?」


 草むらの奥で何かが倒れているのが見えた。


 近づいてみると、それは一人の少女だった。ボロボロの服に、薄汚れた肌。だが何よりも目を引いたのは、彼女の頭に生えた獣のような耳だった。


「獣人……?」


 思わず呟いた。少女はぐったりと地面に横たわり、微かに息をしている。額には傷があり、腕や足にも擦り傷が見えた。


『分析します……彼女は衰弱しており、早急な処置が必要です。軽い脱水症状も確認。』


「やっぱり放っておけないよな……」


 慎重に少女の体を揺さぶった。


「おい、大丈夫か?」


「……ん、ぁ……」


 少女が薄く目を開けた。琥珀色の瞳が揺れ、ぼんやりと翼を見つめる。だがすぐに、警戒するように小さく身じろぎした。


「大丈夫、俺は敵じゃない。」


 優しく声をかけたが、少女の目にはまだ怯えの色が残っていた。


「……っ」


 何かを言おうとしたのか、少女は口を開きかけたが、そのまま再び意識を失った。


「リーナ、手伝ってくれ!」


 急いで駆けつけたリーナが、少女の様子を確認する。


「この子……獣人族なの? どうしてこんなところに……?」


「わからない。でも、このままじゃ危ない。」


 決意したように立ち上がり、少女をそっと抱きかかえた。


「村に連れて帰ろう。」


 リーナは少しだけ迷ったようだったが、すぐに頷いた。


「……分かった。村長に相談してみましょう。」


 こうして、正体不明の獣耳の少女を抱え、エルムの村へと戻ることになった——。



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