表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

森の奥へ

 翼たちは森の奥へと足を踏み入れた。


 昨夜の襲撃者たちの痕跡を探しながら進んでいくと、地面には踏み荒らされた跡や折れた枝が点々と残されていた。襲撃者たちがここを通ったことは間違いない。しかし、それ以上に気になるものがあった。


 「翼、こっち!」


 エルナが指さした先には、焼け焦げた地面が広がっていた。まるで何かが燃え尽きたかのような痕跡だ。


 「……これは?」


 リーナが不安そうに翼の袖をつかむ。

 本当はリーナを連れていくつもりはなかったが、どうしても気になると言う事を聞いてくれなかった。

 翼はしゃがみ込み、地面を慎重に調べた。


 「ただの火じゃないな。炎で燃えたというより、何かが高熱で焼き尽くされたような感じだ。」


 エルナもその場にしゃがみこみ、地面を指でなぞる。


 「しかも、焦げた跡の周りに魔力の残滓がある。誰かが魔法を使ったんじゃない?」


 翼は考え込む。リーナが襲われたこと、そしてこの異常な痕跡——何かが関係しているのは確かだった。


 「この痕跡、リーナが助けられた日にもあったのかな?」


 翼が村の老人の話を思い出しながらつぶやくと、リーナは小さく首を振った。


 「わからない……私は倒れていたし、意識が戻ったときには村にいたから。でも、もしかしたら……。」


 リーナは何かを思い出そうとするように目を閉じる。そして、しばらくして再び目を開いた。


 「……誰かが、私を狙っていた気がする。でも、それが誰なのか、何の目的なのか……思い出せないの。」


 翼はリーナの言葉に耳を傾けながら、周囲の様子を改めて確認する。


 (リーナの記憶が戻れば、もっと手がかりが得られるかもしれない。でも、今は情報が足りない……。)


 そのとき——。


 「っ!? 誰かいる!」


 エルナが突然ナイフを構え、木々の奥を睨みつける。翼もすぐに警戒し、リーナを守るように立ち位置を変えた。


 ガサッ。


 木々の間から現れたのは、フードを深くかぶった人物だった。その人物はゆっくりと歩み寄り、静かに口を開く。


 「……探していたよ。」


 低く、落ち着いた声。それは明らかに、リーナに向けられたものだった。


 「あなた……誰?」


 リーナが警戒しながら問いかける。しかし、フードの男は答えず、ただ静かに彼女を見つめていた。


 翼はその男の動きを観察しながら、手をゆっくりと剣の柄に伸ばす。


 「リーナを狙っているのか?」


 男はしばらくの沈黙の後、ふっと笑った。


 「狙う、か……そういうわけではない。ただ、お前たちがどこまで知っているのかを確かめに来た。」


 「何を知っているのか、だと?」


 翼は警戒を強める。しかし、男はそれ以上何も言わず、ただじっと彼らを見つめ続けた。


 「リーナ、お前は——」


 男が言葉を紡ぎかけた瞬間——


 「危ない!」


 エルナが叫び、翼とリーナを後ろへ押しやる。同時に、男の足元から黒い影が這い上がり、彼を包み込んだ。


 「くっ……!」


 男はその影に飲み込まれるように消えていく。その直前、彼は最後にこう呟いた。


 「……リーナ、お前は“鍵”だ。」


 そして、完全にその場から姿を消した。


 「今の……何?」


 リーナが震える声で尋ねる。翼は剣を握りしめながら、消えた男のいた場所を睨みつけた。


 (“鍵”……? いったい、どういう意味だ?)


 謎はさらに深まるばかりだった——。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ