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友への手紙 ~今は亡き君に贈る言葉~

作者: 渋谷

あの日、君は素足で校庭を駆け抜けていたね。

体育祭の練習の後、「靴下濡れちゃった」って笑っていた。

そんな些細な記憶が、今では宝物みたいだ。


君との最後の会話を、何度も何度も思い返す。

教室で交わした何気ない言葉、

下校時の「またね」という挨拶、

LINEの最後のやり取り。


全てが特別な意味を持って、

胸を締め付けるように蘇ってくる。


あの時、もっと気づけていれば。

君の「大丈夫」という言葉の裏側に、

どれほどの痛みが隠されていたのか。

今更わかったところで、もう遅いのに。


でも、あの日の君は確かに笑っていた。

文化祭の出し物を考えながら、

将来の夢を語りながら。

その笑顔は嘘じゃなかったはずだ。


だから余計に苦しいんだ。

その数日後には、もう会えなくなるなんて。

数秒の判断が、全てを変えてしまうなんて。


君が残したノートの隅に書かれていた

小さな詩のような走り書き。

今読むと、全てが叫びに聞こえる。

でも当時の私には、ただの創作としか見えなかった。


「今日が辛くて」

「明日が見えなくて」

「誰かに気づいて欲しくて」


今なら、その言葉の重みが痛いほど分かる。

でも、もう届かない。


君が目指していた場所は、

本当は暗かったのかな。

それとも、私たちには見えない

何か大きな光を追いかけていたのかな。


放課後の教室で、

君の机に向かって話しかけることがある。

「今日は寒いね」

「テスト、やっぱり難しかったね」

「新しい先生、優しいよ」

まるで、いつもの会話みたいに。


返事がないことを知っていても、

それでも話しかけてしまう。

君との思い出が、少しでも薄れていくのが怖いから。


今でも時々、

君の机に花を置いている子がいる。

きっと私だけじゃない。

君のことを想い続けている人が、たくさんいる。


あの日、最後に交わした「またね」は、

永遠の別れの言葉になってしまった。

でも、確かにあの時、

君と私は笑いあえる未来を信じていた。


その証だけは、

この胸に永遠に残っている。


また会えたら伝えたい。

「一人で抱え込まなくていいよ」って。

「君の明日は、きっと誰かが照らしてくれる」って。

「だから、もう少しだけ待ってほしかった」って。


今は、ただ祈ることしかできない。

君が、どこかで安らかでありますように。

そして、これからは誰かの小さなサインを

見逃さないように生きていきたい。


それが、君への私なりの返事だから。


[完]

好きな曲を元に作った小説です。

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