踊る骸骨
俺は殴り掛かったが、その骸骨は歌に合わせステップを踏むと、優雅にかわす。そうなると当然、当たると思っていた所で空ぶる訳ですから。
「うっわ!」
ズドン、コケる訳です。
「何、いきなり殴りかかっているんだ?ダメであろう」
「まともな事言うんだな。おっとそうだった。いきなり殴りかかって悪かったな」
「いえいえ大丈夫です」
意外に、気さくな良い人だった。見た目通り紳士なんだな。中身骨だけど。
こうして、初めての仲間との出会いは終わった。
「おい、話しているからと黙っていれば。今お前、失礼な事言わなかったか?」
否、終わってなかった。おっとこういう時、ルクは煽てれば、忘れるからな。煽てるか。訓練してた時もそうだったし。
「偉い人は、そんな事で怒らねーぞ。時代は寛大な心なのだよ」
それぽいセリフをいって見たのはいいが、どうだ?俺たちの横で、微笑ましそうな目で見ているスケルトンがいるけど。目無いけど、そんな気がする。
何で、ゴブリンの村の真ん前でやらなきゃいけ年だよ。
ルシファーが襲ってきたら、こいつら全員殺されるのか?さっすがに見逃せないな。子供は、元気でなくちゃな。
一方、ルクはイティムが考え事をしている間中「そうだ、そうだったなー」と言いながら、両手を腰に、足を軽く広げ決めポーズで高笑いをしていた。
「なんて、美しいんだ……。此れが、私をスケルトンにまでした。強い執着ですか。あぁ、泣きそうだ」
何言ってるんだ!?な訳無いだろ!?違う理由があるって!ちょっ待てよこれじゃ、ルクを取られてしまう。こ、これが、噂に聞く略奪愛なのか!
何かモヤっとするな。
(はい、取られる前に、取ってしまえばいいかと。それに、ルクは……いや何でも無いです)
ん?最後は何と言おうとしたんだ!?そんな所で切るときになるって!
(それより、そのスケルトンに聞くことを聞いた方が良いんじゃないですか?)
そうだったな。話をそらされた気がするがまあいいや。
「なぁ、自己紹介と行こうぜ。俺は粘性魔人のイティム。つまり、スライムの魔人だ。でこっちが、ルクスリア」
「私は魔王の娘。ルクスリアだ。で、お前の名前は何だ?」
「おっと、私としたことが。私はヘル。人呼んで、踊るスケルトン≪ウォーク・ステップ・スケルトン≫。しがない男のスケルトンです」
スケルトン、スケルトン言いすぎだろ。そんなに自慢したいのか?
余りにも真面目なルクの挨拶に、吃驚してルクを見つめて居ると。
「な、なんだ?イティムよ。見ても出せる物は無いぞ」
ほんのり頬を赤く染めながら、嬉しそうに言った。
「いや、真面だなーって」
俺の発言が気に食わなかったのか。真っ赤な髪が燃えているかの様に逆立ち、その目は不満気だった。
いやだって、威張ると思うじゃんか。いつも、威張っているんだし。
「むぅ。母上に交渉や挨拶はしかっりやらんと怒られたのだ。もういいよーだ。ふんっ」
ご機嫌斜めになっちゃった。まあ、今回は俺が悪いな。っていうか、大体俺が原因で拗ねるな。あと、横で神々しいなど、うるさいヘル。流石に収拾がつかんくなる。
ってことで、横で意味分からんこと言ってるやつを何とかしないな。
「あぁ、なんと神々しい。女神の再来か……」
まずヘルを引っ叩き、落ち着いてくれと言い。いったん落ち着いてくれた。問題はルクか、無視して話し進めてもいいが。もっと拗ねるんだよな。ま此処は、しっかり謝るか。こう言うのは、気持ちをちゃんと伝えるのが大切だったな。
「ルク、ごめん。悪かった」
きちんと、頭を下げて謝ったが。許してくれない様子。ちらっとは見てくれたんだけどな。多分。いや、拗ねていたけどもう怒って無くて、どう元の状態に戻ればいいのか分からないんだ。
「ルク。一緒に今後のこと話すぞ」
何も言わずに、トテトテとこちらに来たので。
「あぁ、女神は気難しい様子。信仰対象は遣り甲斐の有りそうな人だ」
ん?信仰対象?
「なぁ、ヘル。ルクは信仰対象なのか?」
「えぇ、そうですが?」
はぁー、よ、良かった。略奪愛なんかじゃなくて。
ヘルは釈然としないのか、首をかしげていた。
(はい、ルクは大丈夫だと思いますよ。私が言える事は此処までですかね。それと、私も大丈夫ですよ)
そうなのか。良く分からないけど、お前信用してるから分かった。究極のハーレムを作るの大変だな。本物のハーレムは大変だと言うからな。頑張らないとな。
「ゴホン。それじゃあ。ヘルに聞くが。如何して此処はこんなになってるんだ?」
ヘルも、真剣な話になっているのを感じ取ったのか。さっき迄の浮ついた態度一変して。真剣みのある声で話し始めた。
「最初に見たのは、泣いている女性に怯える子供、言い争う男性。もうめっちゃくちゃでしたよ。だから、私は踊りました」
「一人で踊ったのかよ」
何か想像に着くな、こいつが躍ったの。女にモテそうだし。あー、なんか、涙出てきそうだな。なんでだろ、負けた気がする。
「いいえ、三人で」
「三人?あぁ、仲間か」
「いえそうでは無いですが。まあ、それは置いといて。踊ったんですが、子供が食いついてくれるかと思ったんですが、子供の目は怯えたままでした。女性も泣き止まず、男性はこちらを敵視というか、注意されたんです。「お願いだから、騒がないでくれ。あいつが来ちまう」と、私はそのことに対して聞くことにしたんです。そしたら何があったと思います?現れたんですよサイクロプスが」
サイクロプス一つ目の薄緑色の肌、身長は五メートルくらい。狂暴で力が強く固い。だったか?なら
「何で、此処のゴブリンは生きているんだ?」
俺のつぶやきにルクは目を見開いた。多分、このサイクロプスは知能が高く特異体≪ユニーク≫だ。普通のサイクロプスは此処より南、つまり三大勢力がいる南よりちょっと上に生息していて、本能で生きている。だから、ゴブリンが生きているのが可笑しいんだ。こいつは、人間が魔物って言っても良い様な存在だ。
「でも何で生かしているんだ?」
「そいつは言ったそうです。「絶望しろ。それが良い。此れからちょくちょく来て食ってやるよ」って言ったそうだ」
「それって……」
「ええ、本能でしか生きない種が知恵を持ち比較的弱い魔物がいる北へ来た。ユニークであり、凶悪です私も一度見ましたが。私は動けなかった。えぇ、怯えてこの村のゴブリンを見殺しにしました」
「辛かったのだな」
「辛い?違いますよ。自分が嫌になりました。此処では力がすべて、そして私が弱者だった。そう強く実感しました」
それは、ひどく悲しそうで苦しそうだった。肉が、皮が有ったらこいつは涙を流していただろう。
「その襲撃が続いて、この村の人たちは心が折れたんです。もう疲れたんですよ。この人たちは。死んだほうが楽になるのかもしれないなら、いっそ」
「その先は言わせない。俺より長く見ていたお前にそれは言わせない。諦めるなんて俺の柄じゃないしな、それにお前のそうだろ?救ってやろうここのゴブリン達を。俺達で、やろう。こう見えて、俺も強いつもりだ」
そうこいつには、こんな残酷な事言わせたくなかった。唯一、この村のやつを救いたいスケルトンだから。それにこいつの陽気な姿をこれからも見たいからな。
「出来るのですか?」
縋るような目玉の無い眼孔が此方を向く。初めはあんな嫌な奴だったのに。今では、仲間にないりたいと思った。
「出来るさ。いや、俺がやってやる」
ヘルの目に火がともり始めたような気がした。それは、決して消えない炎のように強く。そう、強く。
俺達は、早速作業に入った。ゴブリン達は何を言ってもただ見るだけで何も話さなかったので、サイクロプスを倒し生きる希望を見せることにした。強く笑顔を取り戻してもらおうとして。村の周りの柵直した。簡単な作業だけゴブリン達にやって貰って、一から作り直し。サイクロプスがいつもやってくる方に罠を張って。後は、やせ細っているゴブリン達に振舞う肉を取りに森に、俺かルクが入り。サイクロプスが来るのを待った。
「ガァァァァァ―――!!!」
暫く日が過ぎ。そして奴は来た、月の輝く夜空の中で、大きな咆哮と共に。ドシンドシンと、足音を鳴らして。自分の存在を主張するように。そいつは、威圧するように俺たちの後ろに下がらせたゴブリン達を見て、そして俺達を少し怪訝そうにしてみたが気にせず言い放った。
「いっちょ前に柵なんて作りやがって。どうせ死ぬのによ。この森は強い方が生き残るのに、なんでお前たちなんか生きてるんだ?ずっと媚び振ってでもいたのか?ハハハハ」
一つしかない目を笑わせながら。木でも嚙み千切れそうな凶悪な歯を見せながら笑った。それを見て俺は言い放った。
「もうお前には余はないぞ。帰れ」
言葉と共に俺は手を振りかざすと同時に手に分身のスライムで刀を作り、斬撃を飛ばした。地面にはくっきりと切られたあとがついた。
「こっから先に入れは容赦しないぞ。待ってろ生きていいんだと証明してやる!」