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13回目の「もういいかい」

作者: 危ない村人B


 ・・・・・はじめまして。危ない村人Bと申します。

今日みなさんにお話しする内容は、風の噂で聞いた都市伝説に関する内容です。

 暑い季節ですので、片手にサイダー、あるいはビール、はたまた優雅にワインでも持ちながらお聴きください。


 これは、とある女子大生のお話です。

////////////////////////


 「何それ?なんか胡散臭いなぁ」


 「本当だって!最近これが本当のネタだーって騒いでる人結構いるよ!?」


 「はいはい、トイッターの一部の人がでしょ」


 この時の私は、こんな下らなくも平穏な毎日がこれからも続くと信じていた。

 これから起きる恐ろしい出来事に気づくことなく。



――――――――――――――――――――――――

・・・私の名前は犬神一家(いぬがみいっか)、小さい頃は名前のことでよくいじられていたけど、今では自らネタにする様になっている。

 親友の一葉とはインパクトのあるこの名前のおかげで仲良くなり、お互いの趣味であるオカルト談義によく花を咲かせている。


 そんなある日、一葉が持ってきたオカルトネタで盛り上がった。


 「ねぇねぇ、最近1人かくれんぼに新情報が出て流行ってるらしいけど、知ってる?」


 「?知らないけど、どんなの?」


 「なんか、基本的には1人かくれんぼと同じらしいんだけど、人形から離れる前に『まーだだよ』って言うのが最新の奴らしいよ」


 「へー、それでどう変わるの?」


 「それがさー怪しいんだけど、しばらくすると『もういいかい』って言いながら探しにくるらしいんだよね」


 「しかも、『もういいかい』は12回しか言わないらしくて言い終わった後に一般的なやり方で清めて終わりらしいよ」


 「何それ?なんか胡散臭いなぁ」


 「本当だって!最近これが本当のネタだーって騒いでる人結構いるよ!?」


 「はいはい、トイッターの一部の人がでしょ」


 正直、ものすごく胡散臭いし落ちも微妙だったけど、その時の私は何を思ったか口走った。

 

 「ねぇ、一葉。」


 「ん?どしたの一家」


 「試してみない?それ」


 我ながら馬鹿だとは思うけど、刺激が欲しかったのだ。それに、デマならデマで試してみるほうがスッキリすると思ったからだ。


 「え?一家マジで言ってる?」


 「うん」


 「珍し〜!こういうの話聞くだけで満足するタイプだったのに」


 「まぁ良いじゃん、今日の夜に私が試してみるから通話しよ」


 「りょーかい、一応いつでも助けに行ける様に準備しとくね」


 「ありがとう」


 その後は最近クラスの誰それが付き合いだしたーやら、学校の近くにクレープ屋さんが出来たーだのよくある雑談をして家路についた。


 その途中で猫を見かけて撫でに行ったり、旅行客らしきおじさんに道を聞かれたり、近所のおばさんに捕まって長話をしたりなどして家に着く頃にはすっかり暗くなっていた。


 玄関を潜る前にふと、視線を感じ後ろを見ると黒猫がこちらをじっと見つめていた。

 その時、頭に黒猫やカラスを目にすると不吉だという迷信がよぎったが頭を張って家に入った。


 その後、ご飯を食べたりお風呂に入ったりお気に入りのドラマを観たりして時間を潰しているうちに、1時50分を示していた。


 玄関前の出来事を思い出したことと、準備も終わり暇なこともあって私は一様に電話をかけた。


 『prrr、prrr、pr、ボッ』


 小さな没音と共に一様の声が聞こえてくる。


 「もしもしー、そろそろ始めるところ?」


 「うん、まぁ多分暇な時間になると思うし話し相手になってよ」


 「オーケー」


 その声を聞いた後、かわいいウサギの人形の腹を裂いて、そこに米と髪を入れお風呂に沈めた。そして、お前が鬼というおまじないを行い、最後に『まーだだよ』と告げ風呂場を後にした。

 その後、テレビのチャンネルを放送されていないチャンネルへと変え、隠れやすいタンスの中に隠れた。


 一息ついたところで、一様に話しかけた。


 「始まったよ、家中電気も消したし塩と水も用意済み」


 「おー!バッチリじゃん、一応ヤバそうになったら呼んでよ!完全装備で駆けつけるよ笑」


 「完全装備(笑)ね、まぁいざとなったら期待しとくよ」


 「ばれるの不味そうだし、一応ここからはLONEで話す?」


 「確かにね、じゃあLONEで」


 『ブッ、、』


 またしても没音を鳴らして電話が切れる。途端に辺りに静寂が宿り、家中に不気味な雰囲気が漂った。

 少し時間を置いてメッセージが送られてきた。


 『お腹が空いて夜食のチョコなう』


 それを見て緊張が逸れた私はクスッと笑いながら返事をした。


 『食べ過ぎると太るよ笑』


 その後も何気ない会話を繰り返していたが、突然にそれはやってきた。


 「もういいかい」


 


 、、、え?



 「もういいかい」


 、、、聞き間違いじゃない。

 確かに聞こえて来るその声は低く、男性の不気味な声だった。

 部屋に響き渡るその声は決して大きくはないが、直接語り掛けられている様な底知れないものを感じた。


 「もういいかい」


 1人暮らしには大きすぎるこの家の、リビング辺りから聞こえたその声は、着実に隠れている場所へと近づいて来ていた。

 恐怖でパニックになりかけた一家だが、なんとか恐怖を抑え込みLONEで急いで助けを求める。


 『一様!助けて!』


 『噂は本当だった!どんどん近くに来ててどうすれば良いかわかんない!』


 『一様?』


 『ねえ!本当だって』


 『返事して』


 、、、どれだけ送信しても一向に返事が来ず、それどころか既読すらも付かずに時間だけが過ぎていった。

 電話もかけようかと思ったが、かけると音で見つかってしまいそうという思いが押し留めた。


 それから数時間とも感じるほどの時間が経った時、


 「もういいかい」


 もう何度目になるか分からないその声は、一家の隠れているタンスの目の前まで来ていた。


 恐怖と疲労から、一家はただ最悪の瞬間を待つしかできなくなっていた。


 しかし、これまで1分に1回ペースで聞こえていた声がタンスの前に来て以降、うんともすんとも言わなくなった。

 そこで、これまで呆然とするばかりだった一家はあることを思い出す。

 

 「しかも、『もういいかい』は12回しか言わないらしくて言い終わった後に一般的なやり方で清めて終わりらしいよ」


 、、、そうか!ここから塩水を吹きかけて宣言をして清めることでこの悪夢は終わる!

 『もう、金輪際2度とこんな遊びはしない。あと、明日あった時に一様に未読スルーしたことをネタにクレープを奢ってもらわないと。』

 そんな事を考えながら、一家は思い切って扉を開いて飛び出した。

 

 、、、するとそこには、濡れ鼠の人形が横たわっていた。


 その姿に安堵するとともに、改めて危ないところだったと身を震わせた。


 しかし、そこで人形に違和感があることに気がつく。


 ―どうして、人形に握られた後がついてるの?―


 ―どうして、小さなウサギの人形の声が低い男の声だったの?―


 ―どうして、今なお気配を感じるの?―


 「もーいーかぁい?、、一家ちゃんみーーっけ」


 背後から聞こえる声に振り向き顔を見た瞬間、走馬灯の様に玄関前にいた黒猫の眼に映ったもの、帰り道で出会ったおじさんの顔が流れていった。


 ―暗闇の中、スマホの光だけが虚しく明滅していた。―


――――――――――――――――――――――――

 

 ・・・続いてのニュースです。X県Y市のアパートから二十歳前後と見られる女性の遺体が発見されました。遺体の損傷は激しく、、、、、


 私は流れてくるニュースを見ながら手に持った呪符を握りつぶし、ゴミ箱へと投げ捨てた。



 あの日、通話の後にいつでも駆け付けられる様に準備はしていた。

 もともと、家系の遠い先祖に名のある霊能者が新しく幼い頃に少し霊的なものへの対策は学んでいたため、当日も簡単な厄除の呪符を持って待機していた。


 そして、通話を終えた後LONEの既読が付かなくなった。

 最初はただ見てないだけかと思ったけど、いくら待っても返信どころか既読がつかない状況が続いたからおかしいとは思った。

 

 でも、どうしてもオカルトはファンタジーの様なものという考えが頭から取れずに1日を終えてしまった。

 取り返しのつかない事になると気づきもせずに。


 翌朝はいつもより早くに起きて直ぐにLONEをチェックした。

 最初に一家からの返信を見た瞬間に血の気が引いたけど、最終的には

 『びびり過ぎだった笑』

 『なんとも無かったから、学校で話し聞かせてあげる』

 と書かれたメッセージを見て安堵したのを覚えている。


 結局、全てを知ったのは警察からの事情聴取からだった。


 それから、色々な人に事情を聞かれたり励まされたりしたけど気持ちの重りが取れない。


 ただ、何より悔しいことが


 ―未だに犯人が捕まっていないこと―


 ―犯行方法さえも分かっていないこと―


 ―SNS上から例の1人かくれんぼが消えているー



by阿部一葉





////////////////////////



 いかがだったでしょうか?

良ければご意見をお聞かせください。


 頭の中ではタ○リになり切ってお送りしました。





 


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