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社長面談

 期の終わり。


 人事評価の面談を終わらせて、都賀将斗は定時までの時間をどう潰そうか考えていた。仕事は残っていはするものの、今日中にやらねばならぬほどでもないし、何より面談で集中の糸はすっかりちぎれてしまっていた。


 適当にメールチェックとツールの確認でもしておこうかと思っていた所、ふいに声をかけてくるのは社長だった。ドアを少しだけ開けて、そこから顔と手招きだけを出していた。


 何をこっそりやっているのか。無視する理由もないし、評価後のそのままの足で役員室に入った。社内ではひとランク上の椅子に腰掛け、他愛ない会話を少しばかり。そうしてから口から出てきたのは。


「来月から別の部署に移ってほしくてね」


「来月ですか。ずいぶん急な話ではありませんか」


「そう、急遽決まった話でね。そっちの部署にいた社員が辞めることになってね、補充として君に白羽の矢が立ったのだよ。ほら君、ファンタジーとかそういうのが好きだとか」


「え? はあ、まあそうですが。それがどうしたのですか」


 確かにこの会社『流システム』、入社する時に変なことを聞かれた。役員面接でファンタジーものについて。興味とか作品についてとか、面接の合間の雑談と思うには不自然なほどの熱の入れようだったのを将斗は覚えていた。


 だからそこ、このタイミングで記憶の点と点とが結びつくようなことが起きて胸騒ぎがした。不安とか、ワクワクとかのはっきりとした感情ではなかった。曖昧だけれども、何かが起きてしまうような予感だった。


「ちょっとね日本離れしたような場所へ行くことになるから、楽しみにしていればいいと思うよ。まあ、いかんせん遠いけれど、敷地内に住む場所もろもろあるから生活には困らない」


「別に仕事であればどこでもいいんですが、今の仕事は」


「大丈夫。引き継ぎはしてもらうけれど、人員縮小の案件だからね。近い内に撤退する予定だから」


「それはじめて聞いたのですが」


「もちろん、話したのは君がはじめてだ」


「リーダーもまだ知らないことを俺が知ってもいいんですかねえ」


「結果的にみんな知るから大丈夫」


 ―――


 それから今の仕事の引き継ぎを終えて、月も変わり。


 異動先に向かったけれど、電車を乗り継ぎ三時間。聞いたこともない駅名の無人駅に足を下ろせば。


 駅前には会社のロゴがついている馬車が停まっていて、『おいでませ都賀さん』の文字。


 あの時の胸騒ぎは不安と相成ったのである。


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