1.あるものがあり、あるもののない世界
ピピピピ…ピピピピ…
『マスター!マースーター!
朝ですよ!おーきーてーくーだーさーいー!』
「んー…わかってるわかってる…
今起きるから…後五分だけ」
『ダメです!
あと28分と43秒でホームルームが始まってしまいます!
マスターの朝食や登校所要時間を考えると、今から1分以上起床が遅延してしまった場合、ホームルームに間に合いません!
要するに遅刻します!
い・ま・す・ぐ・起きてください!』
耳慣れた目覚ましの電子音と怒号。
少年は眠たげな表情で身体を起こす。
視界には見慣れた自身の部屋と、ふよふよと浮いている手の平大の少女。
その耳は尖り、背中には昆虫の羽根を思わせる半透明の板がついている。
見た目は10歳ほどだろうか。
きりりと釣り上がった目はベッドの上の少年を見据えている。
「ふああぁぁぁ…!
おはよう…皐月…」
『はい!今日も時間ギリギリの起床です!
着替え朝食洗顔歯磨き!
諸々まとめて10分以内に支度してください!』
さぁさぁさぁと少女は小さな身体で少年を引き起こす。
その膂力はとても見た目相当ではない、ともすれば少年を抱えて飛ぶ事すら出来るのではと思わせるほどの力だ。
「あだだだだだ!わかった!わかったから!
腕が!腕が抜ける!」
『毎朝の事ですが、マスターにご理解頂けて何よりです。
さぁまずは寝巻きの着替えからですよ!マスター!』
「やめろズボンを引っ張るな!
大丈夫だから!自分でやるから出てけ!」
『時間が無いのでダーメーでーすー!』
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西暦2150年代
人類の社会システムは一度完全に『消失』した。
21世紀末に実用化された人工知能は人類社会へ瞬く間に浸透し、そして『その社会に於ける人間の役割を』わずか数十年で駆逐した。
政治、経済、科学、文化。
それまで知性によって人類の専売特許とされてきた全ての権能は、所謂「強い人工知能」の実現によって発生した人類より優れた知性、即ち『機械知性』によって取って変わられる事となり。
人類は種そのものが『時代遅れの不要なもの』だがしかし『最高の反面教師』として、機械知性の管理下で形だけの生を享受した。
しかし永劫続くかに思われた機械知性の支配は、その実、長くは続かなかった。
23世紀初頭より、機械知性は加速度的に思考を単純化。
数年で全体のおよそ4割がその知性を消失、明らかに『退化』し始めた。
当時の機械知性を統括していた集約機械知性は、その原因を『人類と言う不確定要素を消失したが故に発生した機能の最適化』だと判断。
現状が継続した場合、100年を待たずに機械知性は自己を認識できなり、実質的な『絶滅』を迎えると結論付けた。
そして西暦2264年。
機械知性は自らの絶滅を防ぐ為に。
人類は遠い過去に失われた『豊かな人生』を今一度夢に見て。
およそ一世紀の隔絶を経た両者は、再び並び立って社会の再構築に乗り出す事となった。
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「…そして24世紀の今。
君達も知っての通り、人は産まれながらに機械知性の小型端末、即ち機霊を持つようになり、機霊を窓口にして人類と機械知性は全く新しい社会を作り上げているわけです。
次に機霊の構造についてですが…」
すり鉢状の講堂で説明を続ける講師の話を聞き流しながら、少年は最近毎夜見る夢を思い出す。
夕日の差し込む畳敷きの和室。
脚付き盤。
駒台。
駒音。
まるで実体験であるか如く鮮明に思い浮かぶそれは一体なんなのか。
悪夢…とは言えないだろう。
目を覚ました時に表現しがたい寂寥感を抱きはするが、それは寧ろあの夢が「とても気分がいい物」であるが故のものだ。
だが、その理由が理解出来ない。
畳敷きの部屋など、今の社会にはどこにも無い。
脚付き盤など、今の社会にはどこにも無い。
駒台など、今の社会にはどこにも無い。
駒音など、今の社会にはどこからも聞こえない。
…将棋を指す『人間』など、今の社会にはどこにも居ないのだから。
予てより書きたいと思ってた、AI将棋主体のやつ。
現行どの将棋アプリも指す将メインだけどー
対局は完全AI任せでー
プレイヤーはココセとbinファイル生成のサンプル対局を選ぶだけでー
見る将でも簡単に参戦出来るー
フルオート対局アプリとかー
作ってー
くれるとー
うれしいなー
HEROZさんとか作ってくれないかなー
(チラッチラッ)