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AI将棋異聞録  作者: kou
1/8

いつか見た景色。

 パチ…

 

 パチ…

 

 パチン…

 

 「うーん…。」

 

 パ…チ

 

 「ん…。」

 

 パチ…

 

 夕焼けの差し込む畳敷きの部室に静かに響く駒音と微かな唸り声。

 そこに居たのは将棋盤を挟んだ男女一組の高校生。

 

 パチ…

 

 パチ…

 

 「む…。」

 

 数手進み、男子の顔が明らかに歪む。

 それは自らの悪手と、そこから導き出される対局の結末を予想してのものだった。

 

 更に数手進み、自らの読みが対局相手と噛み合っている事。

 即ち『敗北が避けられぬ事』を確信した男子は、静かに駒台の上に手を置き、頭を垂れる。

 

 「…負けました」

 

 「ありがとうございました。」

 

 

 

 「ふー…。

 あー勝てねぇなぁ…」

 

 「いやー、今回は大分危なかったけどねー。

 やっぱ穴熊は端攻めされると怖いよ。」

 

 「へん!勝ってから言われても嫌味にしか聞こえねーな!」

 

 「へっへーん!勝者のよゆーってーやつよ!」

 

 敗北した男子は悔しさを隠そうともせず、勝利した女子もまた喜色を隠さない。

 そこに居るのは、勝ち負けのみならず、将棋そのものを楽しむ一組の若い棋士の姿だった。

 

 「さて、そろそろ下校時間だろ。また明日だな。」

 

 「そうね。また明日。

 何度でもかかってくるがいいよ。何度でも返り討ちにしてあげるから。」

 

 「ふん。言ってろ。」

 

 手に各々の学習鞄を持ち、二人は部室を後にする。

 

 

 それはだれかにとって何よりも大事な。

 いつかあった、そしてもう二度と訪れる事の無い一幕。


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