【第二十三話】 男同士の約束
折れた大木の上に座るクロウに声を掛ける僚太、視線をアルテラに向けたままのクロウは僚太が何を聞きたいのかをまるで知っているかのように。
「僚太......てめぇは行きたいんだろ? なら行けばいいじゃねぇかよ」
僚太は口を紡いだままクロウの脇に座ると拳を震わせる、心が折れそうになっていた、それはキーファに言われた事が原因では無く、それ以前に覚悟の決意が揺らぎそうになっていたからだ。
僚太はシャルロットに認めてもらうほどには強くなったと自分自身も自覚していた、だが此処に来て、彼は現実を見た。
頭の中では何度も自分を奮い立たせてきた僚太、だがシャルロットに付いて行く事がこれほどまでに恐いとは思いもしていなかった、一度エルフの森で死にかけた時、彼は心の中で後悔をしてしまったのだ。
「隠してきたんだ、本当は投げ出したくなってた、シャルロットに付いていくのがこんなにきついなんて思いもしていなかったんだ」
「だがてめぇは此処にいるじゃねぇかよ、何度お前が諦めかけたかなんてな、俺には知った事じゃねぇんだよ」
頭を掻くとクロウは僚太の肩を叩いて茶化したような表情を見せると、僚太の根の部分を指摘する。
「おッ、お前はそもそもシャルロットが好きなんだろ? それで付いて行こうとしてるんだから立派だよね~」
僚太の真面目な話をここまで駄目にしようとした大人は彼を除いてレベッカぐらいだろう、僚太は顔を赤くすると首を振る、それを見たクロウは鼻で笑うと。
「いいじゃねかよそんな理由でもよ、俺はいいと思うぞ? 簡単に言ったらな、どんなに諦めかけても怖じ気づいても、最後にシャルロットの側でお前が立ってればいいんだからよ」
クロウはそう言うと、自分の首に掛けられている十字架のペンダントを外すとそれを僚太に手渡した。
何時もの眠たそうな目つきになるクロウはペンダントの事をしゃべり始める。
「そのペンダントの石は聖女の祈りの力が込められた魔鉱石だ、それは精霊と波長があう僚太ならお守りぐらいにはなるだろう」
青く光りだすと静かに消えた、この十字架のペンダントの魔術の類を払いのける効果を受けるには、教会騎士が聖女と血の契約を交わした時に授かる時だと言う。
契約自体は酒に混ぜた聖女の血を口に含む事で完了する、つまり本来、このペンダントの力は教会騎士のみが得ることができるようだ。
例外もあって、精霊や英霊と繋がる者なら多少の恩恵を受けることも出来るのだと説明に付け加えられた。
「最後に決めるのは僚太、お前自身だ......この決断の後悔だけはするなよ」
「ありがとう、これはクロウの大切な物だろ? 必ず返すから......皆で帰ろう」
「当たり前だ、返さなかったらタダじゃおかねぇからな」
不意に立ち上がるとクロウは何かを決断したようで、静かに呟いた。
「レイナ、すまない、そしてありがとう、俺は守りたい奴等をちゃんと見つけたよ......」
その声が、ペンダントを見つめる僚太に届いたのかは誰にも分からない。
____クロウと僚太はキーファの所に居た、彼が僚太の願いを却下しようとしたところでクロウが口を挟む、だが取り合おうとはしない。
とうとうしびれを切らしたクロウが彼の首元を掴むが、お互いにその視線は逸らさず睨み合うだけだ。
周りの兵士達が異変に気が付いて止めに入ろうとしたその時、シャルロットの声がテントの中を駆け巡る。
「いい加減にしなさい!! クロウのそれも悪いクセよ、あとキーファ......貴方の意見もごもっともだけど僚太は連れて行くわ」
「ですが、僚太君に何が__」
言葉の端を折るようにシャルロットは軽く手を挙げて、制止した。
「僚太はいざとなったら頼りになるわよ、それに今の彼なら、下手したらこの辺りにいる兵士達より強いわよ?」
その話を聞いていた周りの兵士達は鼻で笑うが、シャルロットのその真剣な表情に加えて、彼女の脇に居たローズが腰の鉈に手を掛けるのを見るや否や黙る。
キーファが答えを聞く前に、シャルロットがローズに促すとエルフの森での事を話し始めた。
それを聞いたキーファは考え込むと、僚太に視線を向ける。
そして直ぐに頭を下げると謝罪と敬意の言葉を口にするが、頭を上げる彼の真剣な表情を僚太は黙って見続けると。
「僚太君にも今回、手を貸してもらいたいと思う......だけどこれだけは約束してくれないか? もしも途中で危険を感じたなら無理だけはしないでくれ」
キーファは僚太の役割を説明する、クロウとシャルロットがアルテラの中心部を目指すのをローズと共に露払いをする、簡単な内容には聞こえているが恐らく
アルテラ内部は今までの亡者とはわけが違うと言う。
そして先程確認された大罪者の名前をキーファが告げると、僚太達の表情が曇り始めた。




