【第二十二話】 戦地アルテラ
聖堂都市アルテラに向かう僚太達、今回の戦闘は長引く可能性もあるため全員での移動となった。
いや、そもそも初めはフランカとローズを残すはずであったのだ、だがとうとう留守番をさせられてばかりで嫌になったフランカが暴走をしはじめて、食料庫に逃げ込むとそれを見かねたシャルロットがしょうがなく許可を下ろした事で決着がついた。
そして今の現状とはと言うと、アルテラに向かう馬車の屋根の上ではクロウがあぐらをかいて座っていてローズが手綱を引いてその脇にシャルロットが座っている。
レベッカは腕を組んだまま寝ていてフランカが寄りかかりながら眠っている、それを僚太は眺めながら少しだけ考えていた。
「クロウのあれを初めて見たな、どうしたんだろうな」
先日シャルロットに頭を下げたクロウ、だが僚太は彼が頭を下げた事なんかより何かに怯えていたような表情の方が衝撃的であったからだ。
ローエンが如何に残忍なのかはクロウから聞いていた僚太、だが本当にそれだけが彼の怯える要因なのか、それを最後まで聞けず仕舞いであった。
「てか今回って確か、キーファさん達も戦闘に参加するんだっけか」
彼は王子であるのと同時に騎士の戦闘団長でもあるのだ、その事実をシャルロットから聞いた時は流石に僚太も驚いた、普通は王子ともなれば城で足を組んで果物を食べている、なんて事を想像していたのだから。
「てかイケメンで優しくて戦えるってなんか腑に落ちないよな」
話を戻すと、今回の情報を手に入れた選抜隊の半数の安否は分からず、シャルロットの想定だと大罪者が一人の可能性は少ないと言っていた。
つまり乱戦の可能性もあるそうだ、シャルロットがハイネス達に手紙を出したがアルテラまで到着する頃には全滅の可能性もある、残りの調律士は遠征に出ているとの事で期待は出来ない。
今回もしアルテラを奪還出来ればそれだけで大きな希望へとつながるだろう。
色々考えている内に馬車が止まる音で窓の外を見る。
大勢の人達が馬車の脇を通過する、その中には患部を包帯のような物で止血されている者や荷馬車に乗させられて運ばれる者など様々だ。
この先で何が起こっているのかは想像するのは容易だろう、前の方に座るシャルロットが兵士達に声を掛けようとするがローズに止められた。
「シャルロット様、彼らの視線には増悪で満ちています......それはシャルロット様にも向けられています」
「うん、わたしも分かっている......だけど声をかけたくて」
その優しさは時に人の心を苦しめるであろう、それはお互いに言えるこではあるが。
それぐらいは僚太も察しっている、剣聖は嫌われる、彼女がどんなに傷ついても他の人間からすれば自分たちが生きれれば他人などどうなっても知らない、そんな心を持った人間に嫌という程出会った。
だから今の彼女は黙ったまま見過ごすべきなのだ、しかし。
「みんなッごめんなさい!! わたしのせいよね、あなた達が苦しむ必要なんかなかったのに!!」
やめればいいものを、本来ならそう思うだろう、だが僚太は窓を開けると大きく叫んだ。
「みんなッよく聞けよ!! シャルロット・ルリエ・アルカナハート様が必ず約束を果たすぞ!!」
何人かは無視をして何人かは睨む、だが今回はシャルロットに希望を託した者が多いのだろうか。
大柄な男と少し老けた兵士が敬礼をするとそれに連なるように兵士達が敬礼し始めた。
「シャルロット様!! あなたに後は任せました!!」
「シャルロット殿、今回は心から感謝いたします、どうかご無事で!!」
「仲間の仇を頼むぜ、剣聖!!」
シャルロットの顔が真剣になると同時に声をあげた。
「きっとあなたたちの期待に応えるから!! ぜったいに皆が恐怖に支配されない世界にするから!! だから__」
言い終わる前に大勢の男達が手を叩いたり声をあげたりしていた。
_____林道を馬車が抜けると辺りが開けてくる、馬車の中から見える光景は僚太の想像していたのをはるかに超えていた。
馬車の中からでも焼け付いた鉄や血の臭いが漂ってきて鼻につきそうになる。
辺りにはアルタイトの旗が至る所に掲げられていて、テントのような物も設置されていて大勢の騎士たちや兵士が話し合いをしている。
馬車を止めて、シャルロットが降りて行った。
その後を追うように僚太も駆け出すと、遠くの方で見覚えのある優男がいた。
「キーファさんか......でも本当にこの前の人なのかよ」
見た目には大きな変化はないが、顔の表情が、目つきにアルタイトで会った時のような面影が見当たらない。
キーファが指をさすとその方角の中心に大きな建物が見える、都市と呼ばれるだけあって大きい国の様だ、崩れた外壁の隙間から街の中が顔を覗かせている。
「シャルロット様、お待ちしておりました、現状は見ても分かるかと思いますが」
「ええ、もう少しわたしが早く駆け付けられていれば.....ごめんなさい」
大きく首を振るキーファはシャルロットをなだめる、僚太は辺りを改めて見渡すが最悪の光景には違いない。
現状は騎士団やら兵士団、傭兵騎士団、アルタイトのほぼほぼの戦力がアルテラを包囲した状態だとキーファが言う、街の中心に籠る大罪者が二名、反逆者が数名いるとの事。
いつの間にか後ろに居たクロウがキーファに問い詰めると、クロウはその答えを聞いてうつむいた。
「おい、うそだろ、そんな分けがあるか、よ」
「はっきり言うが手を貸してほしいのは言うまでもない、だが無理ならそれでもいいと思う、クロウ......きみにはこの戦いは辛すぎるだろうから」
ローエンをはじめ反逆者の容姿からするにクロウの戦友だと言う事が分かる、だが彼らはローエンの手によって死んだのだ、答えは簡単か。
「大罪者の腐れ野郎が、あいつらをおもちゃにしやがって」
アルテラの方を睨みつけるクロウは頭を冷やすと言って何処かに行ってしまう、シャルロットはクロウに視線を向けずにキーファに今回の作戦を聞いた。
魔王軍の兵士はほとんどが亡者達で騎士団の戦力でも大丈夫だと言う、つまりシャルロットが相手をするのが大罪者の二名になる、レベッカは魔術を使い外壁に穴を開けるのと辺りにいる亡者の清掃だ。
フランカは傷の手当、ローズはシャルロットに群がる者の排除、僚太は。
「きみは危険だからフランカちゃんと兵士と騎士の手当を頼むよ」
キーファの視線は鋭く刺さる、きっと彼は僚太の身を案じているのだろう。




