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普段は少女!?呪いを掛けられた剣聖麗人と共に!!  作者: 犬飼
第一章 上辻僚太の始まり
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【第三話】   仏頂面メイド現る

 馬車をしばらく走らせ街中から少し離れると大きな屋敷が見えてきた。

 シャルロットが馬車の主にコインのような物を渡していたのを見て今まさに自分が一文無しだという事を思い出す。

 だが、僚太はそれ以上に異世界転移のお約束すら守られてない事に愕然した。

  


「働かざる者食うべからずって親父がよく言ってたな......だけど異世界転移ってなんか神様的な奴からなんかくれないのか?」


 普段から神頼みしないのだがこの時ばかりは神に会いたいと切実に願う僚太であった、あとたぶん転生と転移をはき違えていた。



 馬車から降りた後でシャルロットについて行くと門の前で立ち止まる。

 呼び鈴のような物を鳴らすと幾らも待たずに門がゆっくりと開く、これだけ大きな屋敷なのだからそれは多くのメイドや執事がいるのかと思ったのだがそこには誰一人としていない。



「メイドとかって一列に並んで待たないもんなの......」


「えっ僚太の所ってメイドさん並んで待ってるの!?」



 質問を質問で返されて困惑していると屋敷の玄関の扉が開かれ誰かがこちらに来るのだが、出迎えたのは可愛らしいメイドではなくかなり仏頂面をしているメイド姿の人物である。


 特徴的な耳からしてエルフなのだろうか、白銀の切りそろえられた短めの前髪に束ねた後ろ髪と真紅の瞳のその出で立ちが異世界にいそうなエルフのそれとはちがう事が分かる。


 並みのエルフ以上に美人でスタイルも良さそうなのだが、仏頂面が全てを台無しにしているとは言えない僚太であった。



「シャルロット様お帰りなさいませ......あの」


「ローズどうしたの? え~と彼はね説明すると、かくかくしかじかでね?」


「かくかくしかじかって本当に使う人を俺は初めて見たぞ」


 

 ローズと呼ばれるメイドは表情に動きが無いせいで怒っているのか悲しんでいるのかまるっきり分らない。

 身なりを詮索していた次の瞬間、眼だけを僚太に向けると両手を後ろの腰に回し何かを掴んだようで僚太は注目するのだが、それはメイドには似つかわしくない随分と立派な(なた)であった。

 人の腕程の長さの鉈をレザーケースのような物から引き出すとシャルロットに問い始めた。



「私如きが差し出がましいのは重々承知で言わさせて頂きます......この生ゴミのような者をどこでお拾いになられたのですか」


「僚太は、大丈夫だから」


一月ひとつき前も、街中で助けた男に襲われたばかりではありませんか......その時も大丈夫だと、もしシャルロット様に何かあれば私はそちらの方を......」


「ローズが人間嫌いなのわたしが一番わかっているもの、そうならないようわたしも願うわ、ね僚太?」



 たぶんローズの言う事が正しいのだろう、なにせ会ったばかりの僚太でさえシャルロットに何かあれば怒りは沸くだろうしそいつを許すことは難しいと思う、詳細は不明だがきっとローズとシャルロットにはそれだけの絆が有るのだろうか。

 黙って聞いて終わるのができたらどれだけ楽か、くだらない戯言だとローズは吐き捨てるだろうか、それは大丈夫だとシャルロットは笑うだろうか。

 黙って挙手すると珍しく真顔で僚太は静かに口を開いた。



「シャルロットやローズさんに何があったとか俺はわからねぇし、今は証明できない......けど俺は助けてもらった恩だけは返したい、だから__」


「もうよろしいです、私はあなたを信用しません.....ですが取り合えずは様子を見る事に致します」



 今はそれだけで上々だろう、シャルロットに至っては終始黙って聞いていただけで何も言う事はしなかった。

 門から暫し歩いて屋敷の中に通される、何やら目につく絵画などが飾られていたりと随分豪華な内装だ、しばらく見渡しているとローズは会釈をして何処かに行ってしまう。

 そして代わりにシャルロットが客室まで案内してくれると部屋の中に入るや否や僚太はベットの上に飛び込む、そして今日の出来事を少しだけ整理する事にした。



「とりあえず今後どうするかな、いつまでも世話にはなれないしな」



 この世界でどうすればいいのだろうか、行く当ては無い金も無いし済む場所も無い、そんな僚太はいっその事シャルロットのもとにでもと考えていたところで部屋のドアを誰かがノックするとシャルロットの声が聞こえた。



「僚太? もしかして寝ちゃった?」


「シャルロットか、でもまだ寝る時間じゃないだろ? あっ__」



 一瞬でも寝落ちしていたのだろうか、部屋の中はすっかり暗くなっていて窓から月明かりが差し込んでいる。



「ドアあけるわよ?」


「ぁあ、開けるからちょい待って」



 ベットから飛び降りるとドアを急いで開ける私服のシャルロットが立っていた。

 その姿がまるで天使と見間違うほどでみとれると、口から何かがでそうになり慌てて誤魔化そうとして考えていたことを口に出してしまった。



「あのさ出来ればでいいんだけど、俺をさ、シャルロットの元で働かせてくれないか? 手伝いでもなんでもいいから」


「それは、力になれそうにないわね、ごめんなさい......」


「うわっこっちこそごめん、そうだよな何言ってるんだろうな俺は」



 淡い期待をしなかったと言えば嘘になる、げんにシャルロットは今まで僚太の聞く事を拒んだりしていないのだから今回もいいよと答えてくれると思うのは都合が良すぎなのだろうか、なんて自分勝手なのだろうと思うと恥ずかしくなる僚太であった。


___しばらく続いた二人の沈黙を誰かの怒号が終わりを迎えさせる。



「なんだ今の!? ローズさんじゃないな、まさかほかの人か?」


「それはありえないわ、この屋敷には僚太とわたしとローズの三人だけだもの」


「さッ三人? いや今はいい、なら外か!? まさかあいつらじゃ......」



 恐る恐る窓を覗くと、数人の人影が門をこじ開けて中に入ろうとするのがかすかに見える。



「アジェータ達だったらローズさんがあぶない、早く行かないと!!」


「仮に彼女達だとしても、ローズなら大丈夫よ」


「なに悠長なこと言ってるんだよ__」


 恐る恐るもう一度窓の外を覗いて僚太は口を開けたままその光景を眺める事しか出来ずにいた。

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