【第十三話】 ココリ村攻防戦2
クロウは黙りただその時を待つ、不気味な静けさは建物の壁が崩れると終わりを迎えた。
腹部が裂けた風穴が少しずつ閉じると、静かに怒りに似た唸り声を上げる。
その得体の知れない怪物に視線を改めて向けると、クロウは鼻で笑い巨体の動きをよく観察すると疾風の如く巨体へと近付いて。
「おら__これでもくらっとけよ!!」
片手に持つ剣を振りぬくと暴食者の腕が吹き飛ぶ、そして直ぐに再生し始めて傷が塞がると手を振り上げて叩きつける。
クロウが体を反らしてかわすと振り下ろされた拳が地面へと埋まり、辺りには地響きが鳴り響く。
「チッ!! 面倒だなてめぇはよ」
一呼吸して両手に短剣を生成するとクロウは暴食者に向けて視界に捉えることのできない程の無数の斬撃を放つ。
その斬撃はまるで疾風の如く音を立て始めると、暴食者の体の肉が次々にそぎ落とされる。
再生能力が追い付いてこれずに肉の塊へとなり果てる、クロウがとどめを刺そうとした時。
「んッ!? しまッた__」
決して油断をしていたわけではない、暴食者の背中から腕が伸びると足を掴まれたクロウが地面へと叩きつけられた。
暴食者の体は徐々に元の姿に戻っていく、叩きつけられたクロウは口を開けた状態でピクリともせず動かない、暴食者の胸が大きく口を開くと掴み上げる。
その口に押し込められる瞬間、遠くで声が聞こえた。
「ウラルゲイン!! そいつはダメよー!!」
気味の悪い少女の忠告が届く頃、足を掴まれてぶら下がるクロウの眼はウラル
ゲインの口を睨みつけながらほくそ笑む。
手には先ほどの黒槍をその体勢で構えていた。
「さッさとくたばりやがれ......クソ大罪者が__」
放たれる衝撃波がウラルゲインの上半身を直撃する。
しだいに膝を着くとその巨体が沈んでいく、そして手から逃れたクロウは後方まで下がると改めて影が帯状に変貌するとそこから大きめの黒槍を生成した。
「さて、てめぇが懺悔する暇なんか、与えるかよ__」
後ろ脚を踏みしめると右手に持つ槍を沈みゆくウラルゲイン目掛けて放つ。
放たれた槍は風を切る轟音を置いていくとウラルゲインの体がはじけ飛んで、跡形もなくなった。
「フンッ、少し本気だしたらすぐこれだもんな、まぁ疲れたが」
____レベッカと少女は村から少し離れた場所に居た。
涼しい顔をする少女は相変わらず気味の悪い笑みを浮かべているが、レベッカ
はただ、じっと、目をつぶったまま動かない。
時間にして数秒か数分かの静寂を、少女が口を開くと破る。
「お前ぇ確か、レベッカ・アリシアよね?」
「だから、どうしたんだ?」
会話に興味を持っていないレベッカをよそに、ただひとり言のようにしゃべり続ける。
「師匠殺しの魔術師さんに出会えるなんて光栄だわねぇ、まぁ、お前のお陰で随分と役に立つ駒が増えたからよかったんだけどぉね」
目付きが変わるレベッカは口を押さえると口尻から歯を見せると不敵に笑う、ただ眼だけは笑う事を拒んでいるが。
「そこまで知っていて、お前のようなガキを使いに出すなんて、嫉妬せし魔術師・アイルも大した事ないな」
「うるさい、うるさいうるさいうるさい、アイル様を馬鹿にするな下等な人間が」
「元々はお前らも人間だろ? まぁお前らがどうなろうが知った事じゃないけどなぁ」
適当に相手するレベッカを睨みつけると、少女の手には大きな火の玉を生成し始めた。
幾つもの火球を空中に放つとレベッカ向けて降り注ぐ、もちろんただレベッカ
が何も対応しない訳も無く。
水で出来た壁を辺りに作りながら避けると、走り出しながらあちらこちらにルーンを刻んでいく。
「あの女ちょこまかと目障り、アイル様を馬鹿にした人間には死を!! クスクスクス」
手を空に掲げると大きな火球を生成し始める、それはおよそ建物を超える程の火球。
少女が気味の悪い笑みを見せるとレベッカを見つめながら嘲る。
「後悔しなさい、それともその体を差し出す? 切り刻んで遊んであげるクスクス」
再びほくそ笑むレベッカは笑いを我慢できずに手で口を押さえる、そして片手で指を弾くと辺りに乾いた音が鳴り響く。
レベッカが刻んだルーンが青く光りだす、いつの間にか少女が立っている所から外側に幾つものルーンで囲われていた。
「何が可笑しいの.....おまえぇこれは」
「ククク、お前らって見下すの好きだよなぁ~、その火球がお前の自慢か?」
片手を天を掴むように伸ばすと、レベッカも火球を生成し始めると辺りは焼けるような熱さを覚える、次第にその火球は大きくなり、見上げる程にまで大きくなる。
最早視界から外れる程にまで大きくなる火球は少女が生成した火球を優に超えていて、その下に立つ少女の瞳孔が開くと。
「まッ、まちなさいこれをこんなところに落とせば、ぁあなたの仲間、村もろとも」
「だから馬鹿っていったんだよ、お前の周りのルーン、刻んだ理由を考えろよ」
外と内を遮断した、ただその一言をレベッカが言い放つとレベッカ笑いながらポツリと呟く。
「口の割には案外お前......弱いな?」
ゆっくり落ちる火球を眺める少女は何を懺悔したのだろうか、いや大罪者達に関わる者に懺悔などする心など持ち合わせていないだろう。
それに最後の一言などレベッカには興味もない、親愛の師匠を手に掛けた時、レベッカはは何を懺悔したのだろうか、炎がその想いをかき消すかのように辺りには焼けた臭いが鼻についた。
「終わりか、さて僚太達も気になるから戻るかね」
いつもの表情に戻るレベッカは革の手袋を外すと握りしめて歩き出すと、その彼女の背後では未だに炎が消えることなく、しばらく辺りは燃え続けていた。




