【第十二話】 ココリ村攻防戦
その大剣を振る速さを視界に収めてかわすが、徐々に速さが増していくと空を斬る音も大きくなる。
地面ではシャルロットが右に左に飛んでみたりしゃがんで体勢を低くくしたり回避に専念している、攻撃のチャンスはそう多くはないだろう。
「だけど仮にあてたとしても弾かれたら意味ないわよ、クロウでも置いて行ってもらえれば良かったかも」
俺は物か、とクロウが聞いたら言っただろうがシャルロットからしたら戦闘に関しては一目置いているので馬鹿にした発言ではないようだ。
それにこの速度でについて行ける者は今のところクロウしかいないだろう。
「わたしの大切な人が......こんなところであんたみたいな奴に殺されてたまるもんですか」
彼が聞いたらどんな顔をしたのだろうか、出会った当初はただの可笑しな少年だと思っていたのに、彼は諦めずに付いてきてくれてる。
ならばその気持ちに逆らわずに生きていきたいとシャルロットは決めた、アルカナハートではなくシャルロット・ルリエとして見てくれる彼、上辻僚太の為に。
「だからわたしもこんな所でやられるわけにはいかないのッ__よ!!」
ふるまわされる大剣を弾き上げるとシャルロットはすぐに後方に下がるが距離を詰められる、距離の取り合いをしていると巨体が急停止して辺りには砂ぼこりが巻き上がる。
「いったい何かしら....」
しかしシャルロットの不意を突いて走り出す、地面をえぐりながらすすむ巨体を止める事が出来ずに後方のココリ村まで追走する。
追い抜いては斬撃を浴びせるがまるで興味を示さずに、とうとう村についてしまう。
「まずいわね、村人達は避難できたのかしら」
ココリ村の人々の避難は完了できていたようで、もの家の殻になっていた。
よく見ると辺りには焼け跡と煙のような霧で覆われている、その巨体は足を踏み鳴らすと再び地響きのするうなり声を上げた。
「ちょッ、さっきからうるさいわね......ん!?」
大剣を振り回し始めるとものすごい勢いで風を切る斬撃の音が鳴り響く。
力いっぱい地面を蹴るとシャルロットめがけて飛び掛かる、振り下ろされた大剣をシャルロットが紙一重でかわすと大剣を振り払う。
それが民家の壁に刺さると大剣の勢いが止まる、シャルロットはそれを見逃さずに壁を駆け上がり大剣へと飛び移る。
器用に大剣の上を駆け出して剣を構えながら飛ぶと暴食者めがけて振り下ろす、その一撃を受けると膝を着く。
「これでやれるわけないわよね__」
暴食者の後方に立つシャルロットは続けて向き直すと天高く構える。
その剣には青い光の帯に包まれると辺りの霧が掻き消えた、暴食者が振り向く頃にはシャルロットが剣を振りおろすと今度は眩い光が辺りを覆う。
暫しの静寂の後、シャルロットは剣を横に構えなおす。
「まだ、やれてないわよね」
唐突に後ろの方で声が響いた。
「シャルロット、上だーッ!!」
僚太の声に反応するかのように体を捻るとすぐその横で大剣が重い音と共に突き刺さる。
体の一部を欠損した暴食者はただ唸る、右腕には赤い炎のようなものが空へと上る、すると二階建ての建物の屋根の上からさきほどの少女が立っていて気味の悪い笑みを覗かせた。
「あらぁ、お前ぇアイル様が言ってたほどには、やるわねクスクスクス」
「あら、あなたそんな所で立っていると危ないわよ?」
シャルロットの忠告が終わる前に少女まで近づいていたクロウとローズの二人が切りかかる、だがそれを知っていたかのように、当たり前のようにかわす。
地面に着地するとクロウの方に視線を向けると手をかざす、大きな文様が現れると突き刺さりそうな氷の刃を放とうとする。
「目障りな教会騎士から殺すとしましょうかぁ」
薄ら笑みを浮かべる少女の背後をローズがとった、が、横から飛び出してきた僚太がローズを突き飛ばすと間一髪でソレの一撃を免れる。
少女の背後で僚太が膝を折って地面へと倒れ、少女が僚太の髪を掴むと顔を近づけて頬を触る。
__シャルロットの中で何かが音を立てて壊れる。
僚太に突き刺そうと氷の刃を持つ、その片手めがけて駆け出しながら剣を斜めに振り上げると。
「おまえ......薄汚い手で掴むな、その手で触るな__僚太からッッ離れろ!!」
その斬撃を誰も視界に収めることはできないだろう、シャルロットの殺気に気が付くが時すでに遅し、少女の体が真っ二つに裂けた。
少女などお構いなしに僚太を抱えて、その場を離れると体勢を整えて振り向くと身構える。
少女の体が溶けるように地面へと沈むと離れた所から再び現れる、本体は別の所にたのだ。
だがシャルロットにはそんな事どうでもよかった、現れるなら叩き伏せるまでと言わんばかりに走り出そうとした時、いつの間にか体の一部が戻る暴食者が体を揺らしながら突っ込んできた。
シャルロットはタイミングを計りながらその巨体の懐に潜り込んで切り上げる。
「まさか体を修復できるの? いいわよ、ならもう一度ッ!?」
体がとうとう悲鳴を上げる、そろそろ体力の限界を迎えたのかシャルロットは
意識が飛びかけると目の前には大剣が音を立てて迫る。
体が言う事を聞かず心の中ですべてを懺悔する、いや、彼に恨まれるかもしれないと悲しくなる。
「僚太......ごめ__」
大剣を弾く音が辺りに鳴り響くと後ろ姿を眺める、クロウか、いや。
「シャルロット、諦めるなんてお前らしくないじゃんかよ」
倒れかかるシャルロットを僚太が受け止めた。
「クロウごめん、シャルロット連れてはなれるから頼む!!」
「あとは任せてさっさと行け、はなすなよ」
巨体の手をすり抜けるように僚太がシャルロットを抱えて走り出すと、クロウがその脇を通過する、そして槍のような物を生成するクロウが一閃放つと轟音と衝撃が巨体を吹き飛ばす。
巨体が建物の壁を突き破り土煙がたつと静寂が襲う、クロウが先ほどの少女の行方を確認するとレベッカが少女を相手取り魔術の攻防戦が始まっていた。
ローズと僚太はシャルロットの様態を確認している、クロウがほくそ笑みながら壁の向こうに視線を向けて黒槍から黒剣へと生成しなおす。
「さてと、この状況は少しヤバイか、レベッカの方はなんとか、だがあのデカブツはまだ僚太じゃ不安だしな......」
大きく息を吸うと走り出すクロウ、僚太はこのあと彼の本気を目の当たりにする。




