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普段は少女!?呪いを掛けられた剣聖麗人と共に!!  作者: 犬飼
第二章 戦いの中で分かる事
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【第一話】 運の使い処

__街の市場、雑踏のなかで僚太は独りで頭を悩ませていた。

 手の平の上には金貨が一枚ある、この一枚で数日分の食料を手にしろとの事だが。


「だいたい金貨って一枚でどれくらいの価値があるんだよ? 円かドルくらいしかしらないぞ」


 僚太は考えながら金貨を親指で弾ているとなにか違和感を覚えた。

 それは別にお金を指で弾き遊んでいる事への罪悪感ではなく、一回、二回と弾かれた金貨が常に表になる事への違和感である。

 最終的に計六回ほど繰り返して打ち上げられる金貨はどれも表。


「なんだこれ? どれも表なんだけど、どんなところで運を使ってんだ俺は」


 思い当たる節が無いわけではない、僚太はよりいっそう考えると前々から思っていた事を呟いた。


「あれか? 金精霊さんの効果か? ん」


 そういえばクロウと初めて会った時に僚太は精霊の加護の事を指摘されていた、その話の意味が今になって繋がる。

 操られたローズに襲われたの時の耳鳴りはまさかと思うと見えない空間に話しかけ始めた。


「見えないキミのおかげなのか?」


 手で辺りを探るが何も触れず、恐らく周りからすればただの変人にしか見えないであろう光景。

 ローズ曰く金精霊は気分屋らしいが、もしこれが今までのが死に直結してしまう事を避ける能力であるなら。


「俺、まさか授かってるのか幸運ってやつを!!」


 しかし、この考えは僚太の身を滅ぼしかねない事件の助走にしか過ぎなかった。


__日が傾いた夕暮れ時、僚太はうつむいたまま一人歩いているがまるでこれから死んでしまうのではないかと思われる程の重くて暗い雰囲気を放っていた。

 げんに僚太とすれ違う人達がおおきく避けて歩くほどで顔には力が無い。


「やっ......ヤベぇ、どうしよう」


 どうやら巷では最近、この世界で最速の生き物である土トカゲの子供を使って競争させる賭け事が流行っていた。

 そして彼は幸運を豪語しその遊びに参加して、無様に哀れにも負けたのだ、そもそもローズが()に言っていた助言を忘れたこの男がいけないのだが。

 近くの広場で腰を下ろす僚太がしばらくうつむいていると視界に影が入り込んだ。


「僚太......こんなところで何をしているのですか?」


 僚太を見下ろす声の主はローズであった、彼女は僚太の隣に座ってしばらく遠くで行きかう人達を眺めている、間が開くと彼女は視線を変えることなく静かに口を開いた。


「どうかなされたのですか? 元気がないようですが......」


「実は......金貨一枚つかっちまったんだ」


「ぷっ......失礼、そんなことですか、私はてっきり誰かを手にかけたのかとおもいました」


「いやいや、そんな度胸ないから__ッいて!!」


  それを静かに聞いていたローズは口を押えた、そんな彼女の片手を振り下ろしたチョップを額に受ける僚太、赤くなる額をさすりながら彼女の方を見直すと彼女の手には金貨一枚が握られていた。


「これで今回は許すとしますか、ぷッ、まさか金貨一枚をまるまる使う人がいるなんて」


 小ばかにした彼女は僚太に金貨を手渡すとそのまま立ち上がる、それと同時に手を引かれた僚太も立ち上がる。

 

「さぁ行きましょうか、また僚太が使ってしまったら今度は私までシャルロット様に怒られてしまいますからね」


「この金貨、どうしたんだよ」


「それは私からのお給金ですよ、それで食料の買い出しをしましょう」


 本来はローズからもらうべきではないソレ、そのまま手を引かれ僚太はローズと共に市場へ再び戻る。



____買い物を済ませて屋敷の近くの街はずれまで来た頃にはもう日はすっかり落ちてしまっていて、辺りは外灯のようなもなく暗闇に包まれるが幸いなことに月明かりで辺りの確認はできている。

 だが彼は辺りを気にして見渡しながら歩いていたため前を歩くローズが立ち止まっている事に気付かずにぶつかってしまう。


「あぁごめんローズ......ん? どうかしたのか__」


 ただならぬ雰囲気を放つローズは腰に手を掛けると錆び一つ付いていない二本の鋭利な鉈を取り出した。

 逆手に持って構えたローズの視線は左右や後方を確認しているようで、僚太もそれに気が付くと辺りを再び確認する。


「ローズ......この状況ってあんまよくないよな?」


 ただ静かに頷くとローズの姿が一瞬見えなくなった、僚太は後ろから迫り来る殺気に意識を向ける、男が手にする短剣の斬撃が僚太の脇の空を斬っていく。

 両手の荷物が邪魔で腰の剣を抜けはしないが足で男を蹴り転ばすとローズが走り抜きざまに男の首を切り裂いて行くと鮮血をまき散らし男は倒れた。

 一人二人、三人と次々に手際よく仕留めていく姿を目にして彼女の強さを改めて認識する僚太。


「ローズの動きが分かる、目がなれたのか?」


 確かに僚太の瞳はローズの動きを確かに追えていたし男たちの挙動も何となくではあるが理解できていた。

 その殺戮は数分もかからずにローズが片を付けたようで、最後に近くで倒れている虫の息の男にローズは近付くと質問を投げかける。


「あなた方......なぜ私達を狙ったのですか」


「チッ__ぐふぁッ」


「そうですか......まぁよろしいでしょう」


 男は自らの舌をかみ切ったのか、血の塊を吐き出すと気を失い静かに息を引き取ったのを確認するローズは整えた息と共に小言を吐き捨てる。

 

「ええ別に構いませんよ、あなた方の詳細はこちらも把握していますし、手を加えてゴミを放置するのもたまにはよいでしょうね」


 僚太の所に戻ると前を歩くように促すローズが、後ろで何かをしていたのだが僚太は振り返ることなく前を進む。

 この世界に来て間もない頃は何も知らなかった彼だが、今はもうその立場にはいないのだ、知ってしまった世界で生きていくと決めた彼である。


「殺すな、なんて綺麗ごとなんかもう言ってらんねぇよな......ローズはやく帰ろう」


「はい帰りますか......そういえば僚太ちょっとだけ背が伸びましたか?」


「えっそれマジで!? やっぱ稽古とか頑張ってたからかな__」


「フフッ、嘘ですよ」


 意地悪く微笑むローズとふてくされる僚太、そんな二人の会話を月明かりだけがそっと見守っていた。

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