【第十九話】 元教会騎士VS怠惰なる断罪者
結界を押し破り門から屋敷庭園まで進むと、嫌な空気が漂っている事に気が付いたクロウ。
並の人間では足を止める程の重い空気を気にせずに彼がしばらく歩いていくと辺りの霧は晴れてきていた、そして庭園の中央に見覚えのある二人が立っている事に気が付くと茶化す口調で話しかけはじめる。
「相変わらず元気そうだな......いや、元気じゃねーよな」
二人は顔を引きつらせると笑い始めるのだがそれが実に不快の有る笑いで彼の視線は変わる、そして暫くしてからローズが答える。
「こまっていたのです、ここにとじこめられて、あらあらら、あなたはなんですかね?」
「お、感じ変わったんだな、そっちの方がいい面してるんじゃねぇのか?」
バカにした態度の彼をよそにレベッカは口を閉ざすと片手に水で槍を生成するとクロウに突如襲い掛かる、それを彼は自身が生成した黒剣でいとも簡単に弾き返すとレベッカは後ろに跳び下がると首を傾げるとケラケラと口だけを動かすと。
「随分とぶっそうですね~、どこかで見た事があるような......」
その言葉に答える前に背後から微かに殺気を感じたクロウは上半身を使い確実にかわすと空を斬る鋭い音がした。
距離をとって深いため息を吐くと困った顔をしてすぐに両手を叩くと再びバカにしたかのように答え始めた彼の眼は笑ってなどいなく。
「なるほどな__断罪者って皮肉かよ? フンッ、笑えるなそれ」
「僕は機嫌が悪い......今日で二回目だよ、避けられたの」
「それだけ殺気をたててか? おいおいかわせねえ方が馬鹿なんだよ」
耐えの長いローブのような白い服の両袖から長い剣を伸ばす男、素顔は奇妙な文様で書かれた仮面で隠されている、身の丈は僚太と変わらないだろうか。
「なんだ今日はガキまつりか? ガキが嫌いなんだよ俺は」
「残念だけどハズレ、年月だけで言ったらキミより年上だと思うよ、まぁ人間やめてるから関係ないけどね」
しばらくの沈黙をへてローズが口を開くと目は正気を失っているのだがその瞳には涙が浮んでいた、その顔を見て状況の把握を終えるクロウは不敵な笑みを見せる。
冷たさの残る視線を向ける彼女の中身は坦々と己の自己満足を満たす為の発言をし始めた。
「あなたはできれば殺さずに私のコレクションに向かい入れたかったのですが、それは叶いそうにありません__残念。あぁ、ほしいほしい」
「だめだよ、カマロさん......元の体ならまだしも教会騎士はその体じゃ勝てないですよ、ここは僕に任せてくださいよ、こいつ気に食わないし」
クロウはあくびをすると手を開いて長い棒のような物を生成した、ローズとレベッカに問いかける。
「知ってるか? クソガキの奴な、お前らを助けたいらしいぞ......ピーピーピーピーわめくもんだからな、かなわねぇよな?」
「しかもなるべく無傷でだと......あのガキ無茶言いやがるよな? だからサッサっともどってきやがれっての__」
一歩、二歩目でレベッカまで近づくと手にする得物で腹部に叩きつけようとする、だがレベッカの反応が僅かに速くかわされて大きく空振りする。
ローズに関してはまるで糸の切れた操り人形の如く直立で、動かずにじっとしている。
レベッカが口を微かに開け何かを呟く、それをみたクロウは理解したのか笑いだした。
「おいおい魔術師ってのはそんなこともできるのか......」
徐々にレベッカの瞳に正気が戻る、当の本人は屈伸をするとクロウに指さし言い放った。
「はぁ~あよく寝たッておい!! おまえが何でここにいるんだっての!!」
「バカでかい声でしゃべるな......知りたきゃ後で自分で聞きやがれ、あの弱虫に」
「僚太か、シャルロットじゃなくてこんな変なの連れてきやがって......」
仮面の男は首を傾げている、だが思ったよりこの仮面の男は理解力があるらしい、すかさずローズの中身に声をかける。
「だそうですよカマロさん、そちらの方ぐらいなら相手できますよね」
「ええ? もちろんですとも、すこし想定外でしたがね、まさか自ら仮死状態にしていたとは、ぜひとも私の__」
レベッカは自分がなめられた事に気付いたのか眉をひそめるとクロウに声をかけた。
「あたしがローズを何とかするから、おまえが仮面を何とかしてくれ、速すぎてあいつ面倒だわ......」
指で耳の中を掻いていたクロウはそれを捨て答えようとしたところでレベッカが騒ぎ出す。
「人様の敷地でソレすてんなよ、きたねぇな、てか人の話をきけ!!」
「ッたく、いちいちいちいちうっせーな!!はいはいはいはい」
手をヒラヒラ振るとおどけて見せる、だが、次の瞬間はやって来た。
クロウは先程とは比べ物にもならないほどの速さで仮面の男に近付くと、いつの間にか片手に生成していた黒剣を脇の下から振り上げた。
それを簡単にかわされるのだが剣の勢いを落とさずに背中で持ち替えると再び切りかかる。
仮面の男もクロウの速さに合わせてその数多の斬撃を的確に弾き返すと、暫く激しい鉄の打ち合う音が耳鳴りに代わるほど繰り返される、緊迫の中で仮面の男がクロウに対して声を掛ける。
「キミ、ただの人間でありながら良くそこまで剣技を極めたね、まさに殺すだけに鍛えられたッて感じがヒシヒシと伝わってくるよ!!」
「ああ、だよな、だからてめぇら側についてる調律士に伝えとけ......かならずロイド達やレイナの仮はかえすッてな」
お互いの剣の速さは互角、いや、クロウの方が僅かにおされているが剣を弾き飛ばされると直ぐに新たな剣を生成する。
幾つもの折られた剣の切っ先が辺りの地面に突き刺さると黒い塵になり消え去る。
「教会騎士にもそんな芸当ができる奴もいたんだね、空気中の塵すら練生の対象にできる......だが体術のさばきかたもなかなかだ__」
「チッ見切られたか、めんどくせぇな!!」
すぐさま片手で顔面に掌底をはなつが仮面の男はそれを体を空中で反らすとかわすと体勢を変えると。
隙をついてクロウの懐に飛び込むと同じ体術を繰り出す仮面の男はクロウの腕を取ると膝を地面に着かせる。
「聖堂都市アルテラで、一生を祈りに捧げる聖女を守るだけに集められた八人の騎士......僕らの仲間も随分とやられたよ」
「悪いが僕の勝ちだ、また助けられなかったね__」
「てめぇかっこいいなぁ......そのセリフ」
クロウは躊躇することなく腕の関節を外すと耳障りな音と共に立ち上がりすかさず足で蹴り払うと、仮面の男のわき腹にそれが当たった、骨を砕く音がするころには屋敷まで吹き飛ばされていて姿が見えなくなると同時に壁が崩れた。
クロウの眼は怒りではい冷めた視線で土煙をあげる方を見ていた。
「てめぇは死んどけよ......ってやっぱりいてぇな」
そう言いながらぶら下がる腕をもとの位置にもどすが、今までの状況的にどちらに人間味があるのかと言われれば仮面の男の方がよほどあるのだろうか。
「あっちの方は大丈夫かねぇ.....」
クロウの視線の先にレベッカとローズがいる、ローズを気にかけているせいでレベッカがおされているようであまり状況がいいとは言えない。




