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普段は少女!?呪いを掛けられた剣聖麗人と共に!!  作者: 犬飼
第一章 上辻僚太の始まり
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【第十七話】  強欲なる貴紳

__日が暮れた頃、屋敷の厨房では血相を変えた僚太が息を切らせていた。


「ぜ、全力疾走、久しぶりだったぜぇ」


 前に立つローズは首を傾げている、何時ものような顔で見つめる彼女が今ほど頼もしいとは。


「なぁローズ、聞いてくれ......ここに奴らがいる」


「は? 何がですか......取り合えず落ち着いてください、どこかの誰かさんがいなかったので今から私が夕食の支度をしなければいけませんので」


「なに悠長なこといってんだよ!!」


 ローズの手にしている食器を奪い取る、なおも表情を変えない彼女はただジッと僚太を見るだけでそれが何故か嫌な気しかしない彼である。


「だから!! 大罪の名を持つ奴がこの国にいるんだっての」


「そうなのですか? それはいけませんね僚太は......」


 突然口を歪め微笑むローズは口をカクカクと音を立てながら僚太へと近付きはじめる。


「おっ、おまえ、おまえだれだよ......」


「なにを言ってるのですか私は__」


 違う、ローズはそんな高笑はしない。

 違う、ローズはそんな気味が悪い表情をしない。

 違う、ローズはそんな剣を持ってはいない。


 唐突の耳鳴りが体を反らせと言ったような気がした僚太は体をそらす、何があったのか分からずにいたが伝わる痛みに気が付くと僚太の肩をローズが持っている剣が一貫いていた。

 

「いてぇな......クソッ」


「あら......はずしましたかね、いけませんね__まだ体が言う事を聞きませんですね」


 肩からは血が流れているが痛さより不安が頭をよぎる、ローズじゃないのならこいつはいったい誰なのかと。

 色々なことが頭を駆け巡る、ローズはどこ行ったのかとそれはしだいに怒りへと変わりはじめていた。


「ローズをどこにやりやがった!!」


「フフフ、いやわたしは、わたしがローズですとも」


 耳障りな笑い声、目障りな手の動き。


「エルフの体はじつによろしいですね、ええええ、実に快感です快適です素晴らしい!! 素晴らしいですよ」


「お前はいったい......だれなんだ」


「あぁ申し遅れましたすみませんです!! みな私の事を、強欲なる貴紳・カマロ、以後お見知りおきを......」


「返してくれ、ローズの体を返せ!!」


「お断りいたしますです、えええ、なにせ私は人の物はもちろん、ありとあらゆる物、者、が私は欲しいのです」


 顔も声もローズのままだ、そしてゆっくりと肩の剣が抜かれていくと骨の間を抜ける嫌な感触、今はそんな事どうでもいいと呟くと僚太は抜かれる剣を力いっぱい掴む。

 片方の手には爪が食い込み血が滲む、そんなことどうでもいいといわんばかりに拳を振り上げて僚太はローズを勢いよく殴りつけるとドスッという鈍い音がした。


「クソッたれが!!」


 屋敷の外へと走り出す。

 



「あぁ~いけませんですよ、大切な物が、なんでこんな酷いことをするんですか」


 鼻から血を流すローズの体、彼は後で謝らないといけないなと思いつつ隙を見て屋敷から飛び出すとそのまま庭園まで飛び出していた、見た事のある姿が見えてきたのはレベッカだが果たして彼女は。


「レベッカ......まさか__」


「おまえな~どこに目をつけてんだッ!? バカヤロどけッ__」


 唐突にレベッカに突き飛ばされる僚太は顔をあげる彼の瞳には剣先を掴むレベッカの姿が映りこむ。


「おい僚太!! 状況がわからねぇー教えろよ」


「俺も分かんねえよ、レベッカは平気なのか」


「いや、今はそんな事なんかどうでもいいか、とりあえずここからおまえは離れろ」


 反射的に掴んだ剣からは血が滴っているがレベッカは掴んでいないほうの片手を広げると水球を生成する、そのまま彼女に向けて投げつけたのだが手加減したのか。

 ローズは後方へ飛ぶと水球をかわし口をカタカタとさせていた、かと思えば突然微笑んだかと思うとレベッカの背を見始める。


「遅いです、貴様は何をしていたのですか!!」


「僕も忙しいんですから、あぁ手を出すの早すぎですよカマロさん、まだダメって言ってあったじゃないです、かッ__」


 レベッカが反射的に避けると僚太の腕を掴んでなんとか後方へ投げる。

 血の付いた片方の手で素早くルーンを刻むとしだいに辺りは霧のようなもので包まれはじめていた、しばらくして霧の向こうからレベッカが声をあげて叫ぶ。


「僚太、こいつらは......あたしにかまうな、それよりも離れろおまえじゃどうにもできない」


「でもそれじゃレベッカが!!」


「うだうだ言ってる暇あるなら、中心部にある、あの城をめざせ!! そこにシャルロットがいるはずだ!!」


「レベッカ......連れてくるからもちこたえてくれ!!」


 僚太は急いで門を抜けると再び走り出す、シャルロットに助けを求めると頭の中では理解できているのだが体は予想に反して言う事を聞いてはくれずその足は震えていた。



「それはキツイな僚太......悪いがお前らにはあたしに付き合ってもらう......」



____僚太はどれだけ走ったのか、あまりにも遠く感じる城、入り口の門すら見えてはこなく心が悲鳴を上げていた。


 「はやくしねぇ~と、間に合わなくなるってのに」


 二人の顔を思い出してか目から何かが出そうになるのを必死にこらえ走る僚太、心臓はとっくの前に悲鳴を上げていて足を止めればどれだけ楽になるのだろうと思いはじめていた。

 そんなどうしようもない考えを振り払うようにすれ違いざま声をかけられる、その声の主はフランカであった。


「僚太様、どうしゅたんですか......この傷、なにかあったんでしゅか」


「フランカか!? た、たすけて__」


 少女にすがろうとなんて無様なのだろうか、わずかな理性がそれを閉じさせると口を押さえる彼はどうにか言葉を濁した。


「なんでも......ないよ、ごめん何でもないから」


「僚太様、嘘をついていましゅね」


 彼女の人を見る眼には嘘は通用しなかったようで必死にこらえていたのに目から大粒の涙がこぼれ落ちるのを我慢できずにいた、袖で何度も何度も、何度拭いても止まらない。

 

「助けが欲しいのですね、まかせんしゃいです!! 付いてきてください」


 フランカに手を引かれ走り出す僚太は先ほどアジェータといた所まで戻ってきている事に気が付いた、フランカはそのまま僚太の手を放さずに薄気味の悪い小さな建物の中に入る。

 中はうす暗く周りがよく見えないが木を叩くような音や微かに喋り声が聞こえていた、そしてフランカが声を掛けると辺りはおもむろに明るくなり数人の男女が壁や椅子に腰を掛けている、そして。


「フランカ、どうしたんだ」


 一人の男が話しかける、腰に大きな剣を携えていて明らかにヤバイと思わされる感じをかもしだしている。

 だが今はどうにかしないといけないと思わされていた僚太は男に寄ると頭を下げる。


「たすけてくれよ、誰でもいいんだ」


「なら、もちろん金はあるんだよな?」


 金なんか持っているわけがない、いや、おおよそ此処がどういう所かは分かっている、金で依頼を引き受けてくれる所だ、だが今の僚太には首を横に振るしかできずにいた。


「なら、他をあたれよ......」


 冷たくあしらうと男は手を払いながら彼は黙り込んでしまうと僚太から目を反らしてしまった。

 そんな僚太をただ見ていたフランカは彼の前にでると腰の袋をとりだして中身が見えるように差し出した。


「皆さん聞いてくだしゃい、私がお金を払いますです、なのでこの方をどうか救いください、お願いしましゅ」


 だがその握られた小さな袋の中身を見て男はため息を吐くと口を再び開くがそれは二人が期待していた言葉などでは無く。


「無理だ、いくらフランカでもこれじゃあ引き受けられねぇよ、金貨十枚からだ、お前でもそれぐらい知ってるだろが」


「お願いしましゅ!! 助けてください__僚太様をどうか皆さん助けてください」


 床にばらまかれた金貨三枚に銀貨が数十枚は行く当ても無く散らばっていく、きっと死に物狂いで稼いだフランカの財産なのにこれでも足りないというのか。

 そしてどうしてフランカは助けてくれるのか、僚太は申し訳なささでフランカを見れず謝る事だけで。


「フランカ......ごめんな、もういいよ俺がいけないんだ」


「俺もおまえらがちゃんと金さえ払えばたすけたんだ、しごとを選ぶ権利はあるからな、悪く思うなよ__」


 言い終わると建物から出て行こうとした男が振り返る瞬間に後ろから蹴り飛ばされると壁に頭を打ち付けて気を失ってしまう。

 蹴り飛ばした人物はなにやら文句を言っている、その姿は僚太にとっては最悪でもあり最強で恐らくシャルロットに匹敵するアノ男であった。


「さっきから入り口で邪魔だぞクソ野郎が消え失せろ......ん? てめぇは確か......あんときのクソガキか、なんだそシケた面はよ」


 何が起こったのか反応が遅れるフランカと僚太はただその男を見つめるだけであった。

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