【第十四話】 アルタイト大国へ
昨日の戦闘の爪痕はかなり酷く寝床が失われた為に一時的にアルタイトの屋敷へ向かう事になった僚太達は荷馬車に揺られて移動の途中であった。
もちろんシャルロットの用事が優先で遊びに行くわけではない、ちなみにレベッカに至っては散々駄々をこねる始末でローズが機転を利かせて気絶させやっと今の状況になったのである。
「ところでなんでレベッカはあんな騒いでたんだよ」
僚太の何気ない一言に気絶させたローズ本人ではなく側で小さく座るシャルロットが代わりに答えた。
「んー、レベッカって引きこもりさんなのよ」
その言葉を聞いて多分引きこもりは決して魔術を使ったり襲ってなど来はしないだろうと思う僚太、その一方で確かに普段から部屋にこもって魔術の勉強をしてるみたいであったのを僚太は知っていた。
「引きこもりって、俺でも流石にあんな駄々をこねたりしないけどな」
「へぇー以外ね、僚太って引きこもりだったんだ?」
「まぁ今は命かけてるけどさ、色々とな__」
命をかけた彼が手に入れたのは何だったのかをきっとここにいる者達は分からない、だが僚太があの時になにか行動していなければ失うだけであったのは間違いないだろう。
そこで僚太は一つ疑問を思い出す、なぜ傷がふさがったのか、レベッカ曰くシャルロットの剣の影響なのではないかと言っていたが理由は今も分からず仕舞いでそれを聞いてみようと静かに挙手する。
「そういえばケガの治りとかって金精霊の可能性もあるのか」
「あくまで噂話ですが、過去に精霊に好かれた若者が死から蘇ったと聞いたことがありますね」
「その人はどうしたんだ? 今も生きているのか」
「さてどうでしょうかね、詳細を聞こうにも彼らは死んでしまいましたから」
そう言ったローズの声はどこか悲しそうであったのを僚太は感じ取っていた、静かにしていたシャルロットが機転をきかしてなのか僚太の方を見ながら首を傾げていた。
「金精霊......僚太、随分めずらしい子に好かれたのね?」
「めずらしい......金精霊って珍しいのか、シャルロットには見えないのか?」
どうやらシャルロットには見えてないみたいでまだ首を傾げている、なぜ彼女に見えないのかシャルロットはローズに理由を促した。
恐らく精霊に関しての情報はローズが適任だと判断したのだろう、たまにみせるシャルロットの機転や状況の鋭い見極めには驚かされっぱなしの僚太である。
「私は、森の__んッん、これでもエルフですから精霊などは聖約を受けずに見れるのです」
「聖約? なんか複雑そうなはなしなんだな、精霊の種類が多すぎで覚えきれないかもな」
精霊には人との相性があるそうで本来は一種類の精霊を目にすることができないという、エルフはその聖約を受ける事は無いそうだ。
ちなみにローズ曰くシャルロットの身の周りには羽虫の如く光精霊が飛び回っているらしい、うざくないのかなんて聞けはしない僚太であった。
「でも俺は精霊自体が見えないけどな、どこにいるのかわかんね~わ」
「もちろん必ずしも好かれたからと言って見えるわけではありませんよ」
そして一つ思い出したことがあるようで僚太は慌てて口に出す。
「だからローズってたまに違うところ見てたり、手で払う仕草してたのか!!」
「ええ、ずいぶんなゴミがあちらこちらに飛んでると思ってましたから」
ローズの発言でエルフの印象駄々下がりである、手に乗せて戯れる姿など想像できなくなった僚太は頭を抱えているが口の悪さが戻った彼女は前を向くと舌を出して悪戯な笑みを見せていた。
馬車を暫く走らせると二つ目の村に到着する、そこで食料などを手に入れ再び馬車に乗り込もうとするが。
「みなさんこんにちは、おかまいなくです」
「おかまいなくって__どこのだれだよきみは!?」
理解出来ずにシャルロットを除く一同は目が点になる、自分の体より大きな布袋を背負う一人の女の子が勝手に乗り込んでいたからだ。
容姿は茶色の瞳に短く切られた灰色髪、使い込まれてくたびれた服を着ている。
だが普通の女の子と違うのは、大きな犬のような耳にふわふわで綺麗に手入れが行き届いた尻尾がついている。
そしておもむろにシャルロットが目を輝かせるとその少女を構いはじめた。
「あなた獣人さんね、お名前はなぁに?」
「わたしゅはフランカといいますです」
「わたしはシャルロットよろしくね、ところでね......あなたを乗せていってあげるからお願い聞いてもらえるかな?」
固まって動けなくなる僚太はなにを言っているのかと思っていると、シャルロットは突如フランカの耳と尻尾をこねくり回したのだった。
レベッカと僚太は、微動だにしない、それは僚太に至っては先日ローズに脅されたばかりでレベッカに関しては何故なのか分からない。
そして散々構っていたシャルロットはローズに止められるとひたすら駄々をこねていた。
__村を出てからしばらく馬車を走らせること数時間、手綱を握るローズを除き一同は荷台に詰め込まれていた。
「あの......フランカちゃん? どうして俺の脇に座るのかな」
そう聞きながらフランカの顔を覗くとぴったりと脇に張り付いているフランカは眠っていて目には涙を浮かべるとそれが頬をつたっていた、夢でも見ているのだろうか。
暫くフランカの様子を見ていた僚太は妹達を思い浮かべ懐かしむと静かに微笑むと本音が漏れた。
「さすがにこの子は怖くないかな.....俺だったら一人でだなんて__」
だが未だにレベッカは固まったままでフランカをずーっと擬視している、ローズはたまにこちらを振り向くとシャルロットに危ないと注意されていてしばらくすると前の方から脇にきて座るシャルロットが静かに口を開いた。
「獣人でも今じゃ珍しいウルフ族の娘ね」
「ウルフ族? 名前だけ聞くと恐そうだな」
「まぁ基本的に、人にはやさしいのよウルフ族は__」
「あのさ、確認したいんだけどさ、ところでやっぱり獣人って人の腕、たべるのか?」
僚太の質問にシャルロットの首は横に振られる、そしてローズがこちらを見なくなるとあの時に笑えない冗談を言われたのだと気づく僚太は恥ずかしくなると顔を両手で覆った。
だが補足として付け加えられるがどうやら大昔の話では確かにあったらしく、昔ばなしのすべてが嘘ではないらしく先代の魔王との契約で人を襲うべからずは今の獣人たちも守っているとシャルロットは丁寧に教えてくれた。
「でも今は時代が時代だから獣人全般を嫌う人も多いのよ、こんな少女にさえ冷たくあたる人間は多くいるわ」
「どこの世界でもあるんだな、関係なくてもすべて一緒くたにする連中ってのは」
「そうね、本当に裁かれるべきなのは......人間側なのかもしれないわね」
再び沈黙が続く中で顔を引きつらせるレベッカが静かに口を開いたので僚太はレベッカがなにか知っているのかと耳を向けてみるがそれは望んだ答えなどではなかった。
「おぃ、腹いてぇんだけど、どうしよう__」
「さっき売り物にならないやつだからからやめなよって言ったおばちゃんの話を聞かないで食うからだろうが!」
「やめろ......腹に響くだろうが」
前でローズがこそこそ笑っているとアルタイト大国の門へと差し掛かる、すると橋の際に数人の兵士が立っていてシャルロットが立ち上がる。
「あっ、わたし行かなきゃ、ローズはこのまま屋敷に行ってね__」
「シャルロット様、お気をつけて__僚太は降りちゃダメですからね」
馬車から飛び降りたシャルロットを追いかけようとした僚太をローズがすかさず制止した、考えは見え見えなのだろう。
それから屋敷に到着するといちはやくレベッカが馬車を飛び降りてずっとなにかを我慢していた彼女は何処へと走り出す、やはり哀れな人なのだろうと思う僚太であった。




