プロローグ ◎
背後の二人の心配をする暇も、視線の先に立つ男は許してはくれない。
男があざ笑う、そしてお前は無力だと、だから助けられないのだと言う。
自分の無力さはこんな奴に言われなくても誰よりも分かっているつもりだ。
ふつふつと無能じゃない事を思い知らせてやりたい気持ちでいっぱいになると、僚太は剣の柄を握りしめる。
「クソガキ、相手に剣先を向ける意味をわかってないな......邪魔だから、さっさと死ぬかそこから失せろ」
「ここからは死んでも通すつもりはないし、あんたがこの場所から消えるまで俺は何度でもたつっての!!」
男の持つ黒い剣の切っ先は僚太の首先へと向けられる、息を吸う事すらためらうほどに男の視線は鋭く刺さる。
ここから逃げ出したくなる気持ちを無理やりねじ伏せ笑みを見せ、自分が手にしたボロボロの剣を振り上げると走り出す。
「俺にはハッピーエンドがまってんだから、あんたには退場してもらう」
「さっきからベラベラと、はったりもここまでくると感心するな、なら望み通り死ね__」
剣を弾かれた僚太は体勢を立て直すと目を瞑り、剣の裂く風の流れを頼りにして次の斬撃を体感でかわした。
「ふん、まぐれなら笑うが、さては精霊の加護をうけてるのか?」
「加護だか籠だかしらねぇけど、あんたの剣は見切ったぜ」
「フン、舐めたのは謝ろう、そうかそうかッ__」
次の瞬間、僚太は脇腹に焼けるような熱さを覚える、地面に転がり倒れると裂かれたのだと分かるのに数秒掛かる、その場所を抑えるのだがどす黒い血はとどまる事を知らない。
「つッてぇーなクソッタレ!!」
「なんだ、たつんじゃなかったのか? 拍子抜けだな」
僚太はそれが自分の最後なのだろうかと思う、もっと他に出来たんじゃないのかと後悔の念が押し寄せると悔しくて噛みしめる。
意地だ、どうせならこの男の顔を目に焼き付けて死んでやる。
だが、運と呼ばれる代物はまだ僚太を見捨てていないのだろうか。
「僚太、時間稼ぎありがとうッ__わたしは僚太も二人も絶対死なせはしないからそこで待っててね......」
意識が遠退いていく最中、現れたその後ろ姿に恋い焦がれていたのだと想うと彼は意識を失った。