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鬼灯の袋の中の夢 グルぐる回る 

「たける、たける起きて、おきて」


 うええ?何!真っ暗?てか、ここどこ?まあくんの声が、すぐ側に聞こえた。そのままに上を見れば、まあるいお月さまが見えた。


 頭の中の『?』がキンキラキンになり、ピコーん!ぴこーン!とアラームまでなり始めた!何!なんでこんな所にいるんだよ。いててて、と起き上がる。肩に食い込むリュックのベルトが痛い。


 なんか起こされてばっかり?どれが夢か、どこが今か、回ってまわってわからなく、なっている。


「ここどこ?まあくん、アイテテ………」


「んー、井戸の中、てか、いーかげん目を覚ましたらいいのに、はぁ、どーすんだよもう」


「は?起きたし。えー!なんで?落ちたの?そうだよね、でも、全然覚えてない!井戸って………基地の!あれれ?なんで?ケガしてない!」


「うん?あー、うん……?ほら、ホオズキ、こんなとこにも生えるんだ。基地の井戸だよ、ぼくも………わからない」


 闇に目が慣れてくると、ぼんやりと、辺りが見えてくる。まあくんと、確かに、ホオズキがはえている。


「ほんとだ、でも色が薄いね、あれ、これなんだろ」


 ぼくはキョロキョロとした、狭い中には、ふたり、そして湿気った土の匂い、ひょろひょろなホオズキ、ぼくは、座り込んで、後ろ手についていた、手のひらの下に何か当たった。え、なんか固い………!


「ま、まままーくん!ここって井戸の中ってたよね、秘密基地の井戸ってさぁ、う、うう埋まってるの?ほ、ホネとか、こ、子供の、なんか手の下にある!ど、どうしよう」


「あー、そういや『子捨ての井戸』って名前があったっけ、そこに子供がいるんだ、はぁ、なんか笑いたくなっちゃった。あ、アハハハハ、へぇ何?見てみれば」


「う、うん、ほ、骨じゃないよね。あ、なんか埋まってる………骨じゃないよぉ、良かった、丸いおカネみたい、コインみたいなのが出てきた!ほら見て」


「わぁー、キッタネーけど………あれ?これ前に、たけるが拾ったのと似てるよね、ほらいつだっけ?磨いたじゃん、そしてたけるの宝物入れにのやつ、そういやぼくの宝物入れは秘密基地だあ…………はぁ」


「あ、そうだよ、似てるね、じゃぁこれで二枚になったよ、これも磨いて、一枚ずつ持とうよ、外国のお金なら、お母さんだいじょうぶじゃないのかな?」


 手のひらの一枚を二人で覗き込んだ、しばらく眺めたあとで、ぼくはそれをポケットに大切にしまい込む。まあくんがちょっと寂しそうに何かを思い出したあと、急に怒ってきた。


「…………お母さん……、ん、もういいんだ、何でもかんでも捨てて、ダメばっか、お勉強の邪魔!邪魔!いらない!お母さんがいるのはお勉強するロボットなんだ、だから、だからぼくは帰らない、たけるは?帰りたいの?だからそんなんなの?」


「まあくん、どうしたの?おかしいよ、それに帰らないと、お母さんに怒られるよ、ガッコも、塾の全国テストだって、頑張らないとまあくんと別のクラスになっちゃうし、それに、起きてるよ?」 


『??』なんか、ふたつに増えてピコピコサウンドと共にピッピッピッと光りながら、頭の中でぐるぐる動き出している。


 起きてるのに、まあくんが変な事ばっかり言うから、こうして話していても、みーんな『夢』みたい。


 どこか怒った様なまあくんは、よくわからない事をブチブチ言いながら、石の壁にもたれて座った、ぼくもその横に座り込む。荷物を下ろそうかと思ったけど、そのままにしておく。


 し、んとした。気まずくて、その辺りに生えていたホオズキをプチンと、とって外側の皮を剥いた。


 丸い実が出る。あれ……?と気がついて、そろりとポケットをまさぐる。


 カサと、別のそれがそこにはいっていた。どこで、これ摘んだんだろ、『図書館』?帰り道にそんな事、しょっちゅうしてた、けどあれ、夢だよなぁ、リュック捨ててたし…………。


『秘密基地』?あれもおかしい様な気がする………。その時から入ってたよね、摘んだ記憶無いし、それになんか、変!夢の中で夢なんて見るのかな?ぼくは、ぐるぐる回って出れない、輪っかの中に閉じ込められてる気がしてきた。


「あれ?まあくんどうしたの?」


「ん?ほらなんか聴こえてきた、たけるはやっぱり帰りなよ、起きたら?目を覚ませよ、ぼくのことはいいから………」


 怒ってたみたいだっけれど、そうじゃなかったのか、何か聴こえるようなまあくん、またしても、わからない返事が戻ってきた。


 もう、まあくん変だよ、家に帰りたくないのは知ってるけど、でもまだ小学生だから、仕方ないよ。帰らなきゃ。


「ほら、たけるは聴こえない?」


 黙り込んでいるぼくにまあくんが聞いてくる。ぼくはじっと耳をすませた。あれれ?おかしい、ぼくには何も聴こえない。うそ?と上を見上げた時に、


「あら、本当精霊送りの太鼓の音ね、嬉しいここから出れる、今までここまで届くことなんかなかったのに、そうか、………たけるくん、のおかけだね、やっと固まった!久しぶりに出て来れた」


「えー!やっぱそうなの?じゃたけるが、いないとだめなんだ、だってたけるが寝てたら、ここ………真っ暗なんだもん」


「あら、まあくんじゃない、びっくりしないんだ、なんで?」


「えー?うーん?おんなじだから?」


「まぁ、そういうことか、そういや明るいわね、真っ暗じゃない、光源はたけるくんか」


 ほえ?誰!って!ぼくは目を声の方に向ける、なんでもないように、まあくんは、声と話している。知り合い?そんな感じがした。


 そしてぼくたちしかいなかったのに、今目の前のぼんやりと明るい地面には、生えている様に、お姉さんがいる!胸から下は地面の中。腕は埋まっていない。こここ

 これは!ゆ、ゆゆゆユーレー!


「ま、ま、まあくん!ゆゆゆユーレー!がいる、え、それとも、よ、よーかい!て!え、え?ぼくの名前知ってる、何?コウゲン?あれ?おねえさん。あれ?どっかで見たよーな」


 驚くぼくに、うらめしやーってやりながら、話してくる。コワイよお、ユーレー嫌いだし。


「まあ!忘れちゃったの?小さい時に花火を一緒にしたよね、お隣の平瀬真由子、なんか聞いてない?私のこと」


「はえええ!ゆ、ユーレーがまた、し、喋った。まままあくん!まあくん!怖い!」


 ぼくはまあくんにがっちりと、しがみついた。ダケドまあくんは、怖がりだなぁって笑うと、真剣な顔をしてとんでもない事を教えてくれる。


「落ち着けたける、ここにいるのは、みんなゆーれーだし、真由子お姉ちゃん、こんばんわ、挨拶おくれたちゃった、それでこんなところにいたの?都会に行ったまま行方不メーって聞いてるよ」


 は、はい?どーゆー事?ぼくはそのまま固まってしまう。そんなぼくを置いて、二人で話しをする。まあくんとお姉さん。


「はい、まあくんたけるくんこんばんは、久しぶりだわ、こんばんはって………、くすん、行方不明のままなの?都会に出て、てそうだけど、帰ってきたのよ、夏休みにね、そしたらストーカー野郎も、ついてきちゃってさぁ、酷いことされて、殺されて、ここにポイされたのよ、帰ること誰にも言ってなかったから、サプライズでびっくりさせよーと思って、あーあ連絡しとけば良かった………」


「ええー!殺されてポイされたの?そういや井戸の蓋キチンとしてなかった様な?手をついたらグラッときたもん!『子捨ての井戸』」って、誰も近づかないし、気にしないもんな。大人が捨てられたんだ、そしてぼくたちも」


「えええー!私のせいで君達も死んじゃったのぉ!くすんなんかすごい罪悪感。『身体』を見つけて貰えたら、あの野郎も捕まるのに………、たけるくんのおかげで、あの世にイケテモ成仏デキない」


「大丈夫、お姉ちゃん、絶対に見つかるから、ぼくたち探してここに誰か来るから、大丈夫だよ!犯人のなんか持ってるの?」


「暴れまくって、抵抗したから、アイツの髪の毛握ってるの!ボサボサ頭が、幸いしたわ、ブッチブチに束で引っこ抜いてやった、これって状況証拠になるわよね、鑑定とかしてさ。君たちは?」


「うー、わかんない、いきなりだったから、スッゲー!真由子お姉ちゃん、髪の毛、束で引っこ抜いたんだ!どんな人なの?都会のストーカーって!ニュースとかで見るのといっしょなの?」


「一緒に決まってるじゃない、ニュースって現実よ、絶対捕まえて欲しいのよねぇ!あの野郎のせいで、君達もこんな事になっちゃって…………死んでも死にきれないよぉぉ」


「え、もう死んでるし、成仏するの?それとも怨霊とかになるとか」


「いやよぉ、怨霊なんて『身体』が見つかれば警察が動くからそれでいいの、怨霊なんかになったら、私があの野郎のストーカーしなきゃなんない、そんなの絶対にイヤー!顔も見たくなーい!」


 盛り上がる話しを聞いている。ふえ?なんかまあくんが、スッゲー事言っていた、そして言ってるような?みんなユーレーって!そういった、みんなユーレーって!だとすると。


 ぼくは、死んでるのかー!頭の中の『??』がクルンクルン回転してるぅ!落ちて死んだんだ!あまりの事に、ぼーと突っ立っていると、


「安心しろ、たけるは半分ゆーれーなだけだから、まだ完璧じゃない、だからいいんだ、だからぼくとお姉ちゃんは、ここから出れるんだよね、そうだよね?」


「そうよ!たけるくんだけが私の天使様、いや!勇者様よ!私を救って!あの世にいきたいのぉぉ、このままだと、ここの地面に一体化して、地縛霊になって、穴の底に落ち込んで、ずーと穴の底にいることになるぅぅ」


「えー!勇者じゃないよお、どっちかって言ったら聖者だよな!」


 なに、なに何!?ぼくって聖者なの?ゲームで聖者って、怪我なおすとか、呪文であっちに送るとか?は?聞かなきゃわからない!


「は?はい?どーゆー事?まあくん、ぐるぐるでわかんないそれで!あ、こ、こんばんは。真由子お姉ちゃん、そんな大変な事になってんのぉ?じじゃぁ、ぼくがいないと、まあくんも地面に埋まるのお?」


「うん、埋まっちゃうのかな、わかんないけど」


「ここに居る限り、頭迄埋まったら最後なのよ、あの世に行ければ、生まれ変わりってのもあるのだけど、行けなきゃずーとここの底のそこに、いーるーのー、真っ暗の闇の中をヒトリで、デロデロで永遠にさまようのよぉ、しくしくしく(チラ)、たけるくんの力がいるのよぉぉ」



 ………半分ユーレーなぼくが、何が出来るの?何すればいいのかな。ぐるぐる回っているぼくの頭の中。




 ポケットのコインが、くるりと回る様に動いた。



 ポケットのホウズキが、カサカサカサと揺れた。




























































































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