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転生英雄譚(裏)  作者: 甲 康展
第1章 これは、面白いことになりそうだ
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ロマンなら仕方がない

 日暮れ、空が赤く染まった頃に教えてもらった宿に着いた。


 報酬(と言って良いか判らないが)をもらってギルドを出るときに

チームに入らないか?とか、パーティを組まないか?とか、まあ、1通り経験してきましたよ。


 もちろん全部断って来た訳で。

目立ってきた分、多少は心象を悪くしないとバランスが…ね?


 宿に入り2・3日泊まれるように受付をしていると宿の女将に顔をじっと見られた。


「えっと…なにか?」


「もしかして、飛竜殺し(ワイバーンキラー)?」


 なん…だと…。


「ちょっと待って、何それ!どう言う事!?」


「やっぱりそうなのね!うちの宿はギルドとも繋がりがあってね、ギルドからお肉とか卸してもらってるのよ。

ついでに色々と情報が流れてくる訳。登録初日に飛竜を狩ってきて2階級特進した超大型新人が居るって聞いたのよ。

それで特徴が似てるから、もしかしてって思ったけど……へぇー。

あ、私がこの宿の女将、クレアよ」


「フィロウです、よろしく。それにしても情報の回りが速すぎるだろ」


「スクープは回るのが速いって事さね。その界隈じゃ噂で持ちきりだよ?」


 頭が痛くなってきた…どうしようか、コレ。


「とりあえず、今日はもう疲れたから、休みます。部屋に案内してもらっても?」


「じゃあ、早速案内するよ。あ、それと冒険者だから割引価格の40リットで構わないよ」


「それは、ありがたい」


 案内された部屋は小さいクローゼットと机とベッドが置かれた質素な部屋だが

掃除が行き届いてるのか清潔感はある。


「この部屋を使っておくれ」


「ありがとう」


「じゃあ、ごゆっくり」


 女将がドアを閉めると俺はそのままベッドにダイブした。


 おおぉ、このやさしく包み込んでくれる布団は正にご…く……ら………。


 思った以上に疲れていたようで、ベッドに倒れこんだら睡魔がスタンバってましたと言わんばかりに意識をかっ攫っていった。


 次に気が付いたのは女将さんに朝食を呼ばれた時だった。


 朝食を食べ終わり部屋に戻ってくると、昨日浮き彫りになった問題点について考える。


 空中戦について。

そもそも、飛行魔術は移動を主目的とした魔術で戦闘用ではない。

しかし、昨日の様に空中でモンスターと遭遇するケースは考えておいて然るべきだった。


 今からでも対策を考えなければ、昨日の二の舞は御免だ。

空中戦を行うにあたって、問題になったのは圧倒的なリソース不足。

まあ、この問題に関しては魔方陣に飛行術式を組み込んで、空間魔法で俺と魔法陣の相対座標を固定すれば良いとして……。

問題はもう一つ、空中での高速移動だ。

速度を上げすぎると、風圧で目が開けられなくなる上に風速冷却で冷える冷える。

コレでは自由に動き回れない、さらに高速で動き回るとなれば慣性も問題になってくる。


 さて、どーしたもんか…。


 部屋の中をウロウロと動き回りながら考える。

どうやって慣性を打ち消すかだが……。


案1 重力による加速。


 進行方向に落ちる感じだが、組み込む術式が複雑すぎて魔法陣の中に納まらない、却下。


案2 その時々において打ち消すような力を掛ける。


 却下。いちいち慣性が掛かるパターンを検出していたら切りが無い。


案3 人間、諦めが肝心。


 案じゃねぇし!却下。


 むう、何か魔法陣の研究をしていた頃を思い出すな。

あの時も、あーでもない、こーでもない、と試行錯誤しながらやってたっけ。

まるで昔に戻った(プログラマー)みたいだとか思ってやってた物だが……ん?プログラム?



 ポク…ポク…ポク…ポク…チーン!



 そうか、慣性の数値を物理法則にしたがって『打ち消す』のではなく、プログラマーらしく『書き換え』てしまえば行けるんじゃね!?


 よーし、ここさえ出来れば、後は簡単。

自分の周囲の空間ごと移動して直接風圧を受けなくして、それと保温と姿勢制御も必要だな。

うほー楽しくなってまいりました!!



 5時間後。



「出来たー!、思った以上に早くできたな!」


 時計を見ると12時ちょい前だった。


「ふむ、入学試験の会場を見ておきたいが、それは日が出てれば何時でも良いから、まずはテスト起動だな!!」


 自分に対する言い訳を並べ立てて、独り納得すると出来たての魔方陣を起動する。


「お?」


 魔法陣が見えないように光を透過する魔術を組み込んだのだが、何かが干渉しているのか魔法陣の円の外側が光っている。


「あー、コレはバグだな。まあ、隠すための術式に干渉してるんだろうから、機能は問題ないだろうけど…」


 とりあえず、魔方陣を自分の背中側にちょい離して固定してみる。


 神様とか仏様の後光っぽく見える。


 まあ、どー見ても某ロボットアニメのハイパーモードなんだけど。


「これは、いかん。いかんなぁ」


 と、ニヤニヤしながら言ってしまう。


 例えば、夜中にこんな物を使ったら目立って仕方が無いだろう。

それはつまり、相手から見れば狙いやすい的になってしまう事、間違いなしだ。


 しかし…しかしだ!

男の3大ロマン、変形(変身、合体含む)、スーパーモード、そしてドリル。

この内のスーパーモードを満たすことが出来るこの状態は、実に捨て難い。


 ちなみにこの3大ロマン、異論は認める。

男の数だけロマンがあるのだ。


「うーん、つまり戦略的優位性かロマンか、どちらか選べって事か……ロマンだな!」


 男の子だからね、ロマンを取るのは仕方が無いね。

解説


魔方陣について。

区切った図形の中に文字・図形・記号等を書き込み、展開して魔力を流すことで複雑な魔術を発動する術式。


メリット

術者のリソースを消費しない、どんな複雑な魔術でも組めば正確に発動する。


デメリット

効果発動までタイムラグがある、展開後修正できない(発動を取りやめると修正できる)


次回はフィロウが飛び回ります。

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