表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生英雄譚(裏)  作者: 甲 康展
第1章 これは、面白いことになりそうだ
6/28

俺、王都にて冒険者デビュー

 この、キンキンに冷えた兄妹イベントから3日後。


 家族会議が開催。

その様子をダイジェストでお送りします。


「ルリアは天才だから、王都の魔術学院に入りなさい」


「いてらー」


「お前も行くんだよ」


「え?」


 と、言う訳で王都アルサレムに到着。

馬車で約1日の距離にある。

そう、ルリアと一緒にストレスフルなギスギス空間を過ごしてきましたよ。

思い出すだけでも腹が立つので省略。


 ルリアの姿が見えない?

俺と一緒に居たくないんだとよ。1人でさっさと行っちまったよ。

まあ、俺も最初から面倒を見る気はサラサラ無い訳で。

あの自己中は世間の波に揉まれれば、いい薬になるだろう。


 さて、そんな事よりどっかで宿を取らないとな。

親からの軍資金は300リットあるが、王都の物価次第では早急に金策が必要になるな。


 俺は商店街に行き食料を買う。

さらに、そこで宿1泊の値段と場所も教えてもらった。


 食料が10リット、宿代が朝と夜の食事つきで45リット。

残りの手持ちが245リット、魔術学院の入学試験が明後日。

1日あたり55リット使うと考えても余裕はあるが、手持ちが多いに越したことは無いな。


 などと考えながら宿に向かう途中、武器を携帯している人が目立つ事に気が付いた。



「何か、あるのか?」



 周りを見渡すとすぐに原因が解った。



『冒険者ギルド』



 なるほど、金策に使えるかも知れん覗いていこう。


 ギルドに入ると多種多様な人たちが入り混じっていた。

戦士、剣士、魔法使い、装備も様々だが見ればどんな役を担えるかは判る。

パーティを組んでいる者達は机を囲んで飲み食いしている。

簡易的な食堂もあるようだ。

そんな中で入ってきた俺の服装は普段着。

水面に浮かぶ浮き輪もびっくりな浮きっぷり。


 しかし、不思議とじろじろ見られることは無いようだ。

皆、チラ見して自分の事に戻っていく。


 この反応、気にはなったが考えても仕方ないので無視することにした。


 受付まで行くと、カウンターのお姉さんに声を掛けられた。


「こんにちはー、冒険者ギルドにようこそ。私は受付のリリアといいます。

本日はご登録でしょうか?」


「うーん、先にギルドについて説明してもらっていいですか?」


「分かりました。ギルドは国境を越えて街や村に支部があります。

ですので、登録証は身分証明にもなります。

無くした場合、再発行手数料が掛かりますのでお気を付けください。

次に、冒険者となられた方には一番下のランク『G』が付与されます。

一応、最高ランクは『A』です」


「?、一応ってのは?」


「正確には『S』ランクまであるのですが、

これは何か大きな功績を残したAランクの方がなれるので、

実質最高はAランクとお考えください」


「なるほど、解りました」


「次はクエストですが、あちらの掲示板クエストボードに張られている紙が依頼書です。

クエストを受けられる場合は剥がして受付カウンターまで持ってきてください。

それと、受注できるクエストは自分のランクの一つ上までです。

もし、何らかの事情でクエストを放棄した場合、違約金が発生します。

この、違約金とはクエストを受注する際にお支払い頂く担保金の事です」


「受注するのに金が要るのか…」


「はい、あと注意として討伐依頼は討伐証明部位が必要になりますので必ず持ち帰ってくださいね」


「その討伐証明部位って言うのは、買い取ってもらえるんですか?」


「それは、物によりますね。爪や牙などの薬や武器になる物が含まれていたりすれば買い取れます。

逆に、買い取れない物としては、まとまった数が必要なものですね。

例えば、羽毛とか一定の数がないとダメですね」


「なら、倒したモンスターを丸々持ち帰ったら買い取ってもらえるって事ですよね?」


「はい、あちらに解体カウンターがあるので持って行って頂けたらと思います」


これは、オイシイかも知れん、利用させてもらうとしよう。


「ちなみに相場とか判ったりします?」


「すみません、私どもでは相場までは判りかねます……ですが、この周辺に生息しないモンスターとか

高ランクのモンスターは高い値段が付きやすいですよ。

詳しい相場は解体カウンターの受付で聞く事ができますので必要とあらば、そちらでお聞き頂けるとよろしいかと」


「解りました。最後に、ギルドに登録しなくてもモンスターの買取ってできます?」


「はい、受け付けております。ですが、登録して頂ければ解体費用の割引や冒険者向けのお店等で割引が受けられますよ」


「登録します!」


脊髄反射で答えてしまった。

割引って言葉自体に魔力が籠もってるって言われても信じちゃうわ、俺。


さっさと登録を済ませて、ギルドを後にする。


「ふふふ、若干14歳にして冒険者デビューとか、面白くなってきた。

早速、1狩行くとしますか!財布のために!ソロで!」


 だって仕方がないじゃん?冒険者になったばかりの雑魚と誰がパーティを組みたがるよ?

まあ、俺みたいにゲームで低ランクのハンターが高ランクのモンスターに挑む時、嬉々として助けに行っちゃう奴も居るけどね。


 等と考えながら人気の無い所に行く、飛行魔術を使うところを見られるのは色々と拙い気がする。

皆、飛んでないし。


 人の居ない路地裏、サーチの魔術で人が居ない事を確認。

重力と風の魔法を並列起動。

いざ、空の旅へ!!


(ぃぃぃぃぃぃいいいいいやっっっほおおおおぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!)


 本当は思いっきり叫びたいけど、見つからないように我慢。

空から獲物を探せば直ぐに見つかるだろう。気分は鷹になった感じ。


 気分の高揚もあいまって、まさに高(鷹)ぶってる。なんちゃって……。








 さて、獲物さがすか。


 この賢者タイムにも似たクールダウンの方法って意外と有効なんじゃないだろうか?

すこぶる冷静になったわ。


 しばらく飛んでいると魔力探知に反応が、何か向かってくるようだ。

かなり速い速度だ、いったい何が?


 浮遊状態にして水魔法でレンズを作り拡大する。

そこに映ったのは蜥蜴に角が生えて、前足が翼になったようなモンスター。


 どー見てもワイバーンです。本当にありがとうございました。


「って、ふざけんなよ!!ワイバーンって言ったら天空の狩人とか言われてる奴じゃん!?

確か、目を付けられたら逃げ切るのは絶望的とか……」


 ちらっ


 まだ距離はある、一か八か逃げてみる!!


 ワイバーンが来る方向と逆に逃げる。


 全力で逃げる!


 そして解った!風の抵抗が酷くて寒い!

思ったより速度が出せない!!


 しかもワイバーンそこまで来てるぅ!

めちゃくちゃ速い!


 あ、口あけた、何を……まさか!?


 ゴオオォォォゥ!!


 真横を炎の塊が通り過ぎていく。


「あっちぃぃ!!横を掠めただけでコレとか、直撃したらシャレにならん!」


 それに、あいつの射程圏内に捉まっちまった。

空中での運動性は完全にあっちが上、逃げるのが不可能って言うなら、やる事は一つ!


「腰を据えてガチでやってやんよ!!」


 重力魔法のみの浮遊状態にして魔術を使うためのリソースを確保。


「ぬ?」


 俺が逃げるのを止めたら警戒して近づいて来ない。

これはチャンス!今のうちに水弾を作って高圧を掛ける。

ただの水が鋼のような強度を誇る。


「さっきのブレスの仕返しだ、食らいやがれ!水鋼弾!!」


 超圧力を掛けた水の塊だ、食らえばだたじゃ済ま――。



 ひらり。



 避けおったわ。


「ギャアアアアアアォォォォォォォ!!!」


「やばっ、怒って突撃してきやがった!」


 回避行動、間に合うか!?


 すぐ近くをワイバーンが通り過ぎた。


「よし、何とか回避でき――」


 左側、腕から先の反応が無い。

視線を向けると、そこにあったはずの腕から先が無くなっていた。


「な!?くそっ!!」


 急いで右手を脇の下に突っ込み止血する。


「あいつ俺の左腕、持って行きやがった」


 今までに無い大怪我の所為か、頭がくらくらする。

気をしっかり持っていないと意識が飛びそうだ。


 ワイバーンに視線を戻すと旋回して再突撃してくるようだ。


 どうやら、俺を餌として喰うつもりか。

ブレスだと消し炭になっちまうからなぁ。


「そうかい…だったら宣言通り、お前の突撃力と俺の魔力。どっちが上かガチ当たりと行こうか!!」


 高速で突撃してくるワイバーン。

急速に俺との距離が縮まっていく。


「今だ!!」


 浮遊以外のリソースを全て突っ込み、今作れる最大強度の魔力障壁を展開する。


 これが破られたら死ぬ。


 ぐしゃぁ!!!


 鈍い音を立ててワイバーンが魔力障壁に激突する。

そのまま、力なく地上に落下して行く。


「はぁ…はぁ…勝った…のか…?」


 死ぬかもしれないという緊張感で、いつの間にか呼吸は浅くなり脂汗をびっしりかいていた。


 落下したワイバーンを見て、ゆっくり地上に降りていく。


 落ちたワイバーンの近くに降りて見てみると、ビクビクと動いていた。

死に際の痙攣かとも思ったが、まだ息がある。


「高速で壁に激突して、まだ息があるとは…なんてタフな野郎だ」


 息を吹き返されたら面倒だ、首を落としておこう。


 止血した状態でももちろん魔術は行使可能。

こういう時は、とあるロボットアニメを参考に編み出した魔術。


「光魔法・高出力ビーム」


 ただし、魔法は額から出る。


「これでようやく回復できる」


 木と火の属性、両方を起動させ回復魔術を使う。


「まさか、自分の体で人体実験する日が来るとはな」


 1年前、翼をもがれ地面に転がっていた瀕死の鳥に使ったときは翼が再生して元気に飛び立っていった。

人間に使うとどうなるかな?


「おおぉ!」


 見事に左腕が再生した。

手をグーパーして、グッと力を込める。

何の問題もなく使える。実験は成功だ。


 となると次は欠損してから日が経ち、安定してしまった欠損部位にも効果があるのかどうかだが……。


「まあ、それは機会があればやるって事で、とりあえず衝撃でぐしゃぐしゃになったワイバーンの内臓を治してきれいにしてから状態保存のために封印を施して、異次元収納にポイポイっと。

これで良し、ワイバーンか…いくらで売れるか、楽しみだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ