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転生英雄譚(裏)  作者: 甲 康展
第1章 これは、面白いことになりそうだ
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実際、兄妹ってこんなもんだよね

「ただいま」


 ローウェルが玄関のドアを開けると、赤ん坊の泣き声が響き渡る。

妹、ルリアの泣き声だ。帰ってきた時の音で起きてしまったのだろう。


「あらあら、お帰りなさい」


 フィリアとルリアが出迎えてくれるとローウェルは今日の収穫を見せる。


「あら?それはホーンベアーかしら?」


「ああ、フィロウの近くに降って来たみたいだ」


「まあ、怪我は無い?フィロウ」


「うん、大丈夫!」


「それにしても、降って来たって言うのはどういうことかしら?」


「俺も目を離してた時だったから良く判らん」


 上手く言ったものだ、逸れたなんて言ったらどうなるか分からないからな。

まあ、俺としては余計なトラブルは避けたいので、空気をよんで黙っているがね。


「フィリア、解体を手伝ってくれ」


「ええ。フィロウ、ルリアを見ててくれるかしら?」


「わかったー!」


 子供の演技も手馴れたもんだろう?

それにしても妹とはかわいいものだ。


 この日を境に俺は父さんと狩りに出るようになった。


(と言っても付いて行くだけなのだが)


研究成果の実用試験も兼ねてしまえばいいと思い出る事にした。



あれから3年がたった。



 俺は6歳、ルリアは3歳になった。

この歳にしてルリアは魔法が使えるようになった。


 それを見た両親は――。


「まあ!この子は天才かもしれないわねぇ」


「きっとそうに違いない!」


「この才能は伸ばさないとね」


 こんな山奥で家庭教師でも雇うつもりか?


「フィリアが教えるのか?」


「もちろんよ、元宮廷魔法師の私におまかせよ」


 何ですと?元宮廷魔法師!?

この世界6年目にして母親の経歴が判明!

しかも、宮廷って事は王国的なものが存在するって事じゃん?

いや、それよりもだ。


近場に先生が居たんじゃないか!

独学でやってた俺の苦労は一体……。


まあいい、俺の知らない基礎って奴が学べるチャンスだ。

これを逃す手はない。



と、思ってた時期が俺にもありました。



 滅茶苦茶だ!基本属性が火、水、地、風の四大属性で理論展開してるから

例外規定のオンパレードだ。


 正直、自分の母親なだけに悪く言いたくはないが、元宮廷魔法師がこのレベルって事は

世間のレベルも押して知るべし。


 それと、今まで魔法が使える事をひた隠しにしてきたのが裏目に出ている。

何の実績もない俺が間違いを指摘しても全然、受け入れてもらえない。

悪いがこの授業は聞くに値しない。


 一回目にして早々に母さんの授業から俺は姿を消してしまった。

元々、魔法に関しては期待されて無いから、両親から何か言われることも無かった。



 ただ、妹のルリアは本当に才能があるらしく、母さんの知識をどんどん吸収していった。

今にして思えば、これが良くなかったのかもしれない。



 さらに8年後。

ルリアは自分が特別だと思い込んでしまっていた。


「ちょっと、そこのコップ取りなさいよ」


 リビングに入った瞬間、視線も向けずにこの物言いである。

兄の俺を完全に見下してやがる。

しかも、自分で取ったほうが近い。


さて、どうしてくれようか。


「……はあ」


 ため息と共に手から転移魔術を付与した魔力弾をコップにあてる。

はい、ヘタレました。


「私の話、聞いてた?コップ取ってって……あれ?」


「目の前にあるだろ、ちゃんと見ろ」


「でも、さっきそこに――」


 これ以上、ルリアと会話したくなくて自分の部屋に引き返してしまった。

ちなみに今の魔法はルリアの魔術理論では絶対に再現できない魔法の一つ。


 転移魔術は空間に座標を当てはめ書き換える事で成立する。

少し詳しく言うと転移させる物の座標をA、転移先をBとしてAをBに書き換える。

すると転移先の体積と入れ替わる。


 『空間』という属性として認識していないと成立しない魔法なのである。

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