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転生英雄譚(裏)  作者: 甲 康展
第2章 フィロウ編 学園生活
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奪ったものは返してもらう

 ポルテ村。

冒険者や商人、旅人などが休むために作られた村。

人口はそんなに多くないが、訪れる人は多く活気がある。


 空を飛んで村の中に降りるのは問題があるので、ちょっと離れたところに着地する。


「あはは……本当に着いちゃった」


「先生、村に入るよ?」


 村に入ると人だかりが出来ていた。

揉めている雰囲気ではないが、厄介事が起こっている様だ。


 近づくと、村人が俺たちに気づいた。


『リーチェさんだ!』


『リーチェさん!?』


『おお、このような時に来て下さるとは』


 みんな、口々に何かを呟きながら集まってくる。


「何か、あったんですか?」


『それが――』


『助けて下さい!家の娘がゴブリンに攫われてしまって…どうかお願いします!!』


「何ですって!!」


「先生、これはかなり不味い状況になってるよ。人の娘を攫ったって事は……」


「間違いなく集落か拠点が出来ていて、しかもそれなりの規模があるわね」


 ゴブリンが女性を攫うのは繁殖をするのが目的で、その為には攫う時に襲撃する頭数と監禁する拠点か集落が必要。

攫われたって事は、今の条件が揃ってるって事で、問題なのはその後だ。

ゴブリンは繁殖力が高く、妊娠させられた女性は数日で出産しゴブリンの数が爆発的に増える。

そうなる前に手を打たないと、とんでもない被害が出てしまう。


「どうしようか?先生」


「どうするって言われても……」


「選択肢は二つ。助けるか、助けないか」


「……軽々しく、助けるなんて言えないわよ」


「じゃあ、見捨てる?」


「私にどうしろって言うのよ?拠点の場所は?規模は?何一つ判らないじゃない、どうやって助けるのよ」


「拠点の場所はこの村から北東に1キロちょっと、崖際にある洞窟を拠点にしている様だ、運がいいな人質はまだ拠点に着いていない。

数は100前後と言った所だ。で?何が判らないって?」


 ポカーン。


「……な、何でそんな事が判るのよ!?」


「先生、俺が飛行魔術を使えるのはさっき体験したよね。空から地上を攻撃する時、森の中だったり草むらに隠れられると相手を見失うでしょ?

そこら辺を絨毯爆撃で更地にする訳にもいかない。だったら状況を把握するための魔術は必須だと思わないかい?」


「言われれば、その通りだけど!……その通りだけど!!」


「で、やるの?やらないの?」


 ニヤニヤ。


「あーもう、やるわよ!やってやるわよ!!悩んでた私、馬鹿みたいじゃない…」


 よし来た!これで功績を先生に(なす)り付けられる。

ゴブリンの集落を潰して攫われた娘を救出。

良いじゃないか!ガンガン目立つ功績を立ててくれれば、相対的に俺の存在は目立たなくなる。

俺の目的に1歩近づく訳だ、ヌフフ。


「みんなー!『先生が』何とかしてくれるって!もう大丈夫だ!!」


『おおー!!』


『流石、リーチェさんだ』


『これで娘も村も救われる』


 ガシッ!


 ん?何やら肩をつかまれ――。


「勿論、フィロウもやるわよね!?あれだけ私を焚きつけておいて自分は高見の見物とか許さないからね!!」


「だ、大丈夫だから、俺も手伝うに決まってるから」


 どうやら、余計な心配を掛けてしまったようだ。


「で、フィロウ。言い出したからには作戦とか、ちゃんとあるんでしょうね?」


「もちろんだ!まず、俺と先生で人質を奪い返して村に戻ってから拠点に奇襲を掛ける。

村の皆はこれ以上被害が出ないように、防備を固めてくれ」


『リーチェさんとお弟子さんだけで仕掛けるんですか!?大丈夫なのですか?』


「心配は要らないわ、こう見えてもフィロウはワイバーンキラーの通り名を持ってるから

ゴブリンなんて物の数じゃないわ」


『ワ、ワイバーンキラー……そりゃすごい!』


 くっ!この際、俺が目立ってしまうのは目をつぶろう。


「いやいや、そんな大した事ではないですから…それより、村の防備は任せましたよ?

俺は先生と攫われた娘を奪還して、拠点を潰しにいきますから」


『分かりました、どうかお気をつけて』


………

……


 と、いう訳で娘を担ぎ上げて運んでるゴブリン3匹発見。

あっちはまだ俺たちの存在に気づいてない様だ。


 ぶっちゃけ、体の小さいゴブリンが人を担いで足場の悪い森の中を移動する速度は遅い。

ゆっくり来ても間に合うわ。


 焦らず、茂みに身を隠し様子を見る。


「簡単に追いつけたわね」


「そうだね、この調子で奪還しよう」


「って、どうするつもり?」


「俺が人質を取り返したら、先生が攻撃して殲滅する感じで」


「分かったわ」


(フィロウが助け出すのね、私が援護しなきゃ――)


「じゃあ、カウント3から……3…2…1…0!!」


 担いでいた人質が消えた。


 はい、人質を俺の後ろに転移して救出完了。


「………え?」


「ギ?」


「ギギ??」


「??」


 あれ?ゴブリンはともかく先生も何が起こったか理解してない!?


「先生!攻撃!早よ早よ!」


「うぇ!?あ、は…はい――氷結の力よ我が前に集いて敵を討て!アイスバレット!!」


 お?この前教えた氷属性を使うとは、さすが先生だ。


 ゴブリンの方は風穴を開けて転がっている。


「人質は!?」


「ここに居るじゃん」


「あたし…どうなって…?」


「ゴブリンに攫われたんだよ。すぐ村に連れ帰るからね」


「え?」


 ワームホールを開いて村まで戻る。

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