なんでも初日ってのは緊張するよね
入学日の朝、フィロウが学園に行くと校門で人だかりが出来ていた。
どうやら、バッジを配っているようだ。
「ふむ、バッジでクラスが判るようになっているのか」
ここが日本だったらみんな整列して順番に並んでたんだろうな。
そんな事を考えながらボーっと待っているとフィロウの番が来た。
係員もこれだけの人数を捌くのは大変だろう。
「俺、Dクラスなんですけど…」
「ああ、Dクラスね。Dクラスはこっちの校舎じゃなくて、そっちの階段を上った先にある旧校舎が教室だから」
「ええ、知ってます」
見ると、学園の敷地の隣にある山の上にボロい建物があった。
当然、階段もボロボロで手入れなどされていないのが窺える。
「山の上まで登るとか…うへぇ」
などと言いながら登ること10数段、めんどくさくなって飛んだ。
「とう!」
上まで着くと3階建てのオンボロ校舎が出迎えた、夜中に来たら何か出そうな佇まいだ。
とりあえず中に入り、教室の前まで行くと、もう負のオーラが漂っている。
「うっ!」
中は何となく想像できるが、あけて入らなければ始まらない。
意を決して足を踏み込む。
『うううぅぅぅぅぅ……』
『もうだめだぁ、おしまいだぁ』
『奴隷クラスとか…』
『最悪……』
ものすごい陰気だった。
まあ、このクラスでやることが決まってる俺は、平気だがね。
にしても高々9人程度のクラスだが絶望感が半端じゃない。
たった9人で2万リットも稼がなくてはならないのだ。
何も知らなければ、絶望しかないだろう。
とりあえず、適当な机に行き椅子に腰掛ける。
リンゴーン、リンゴーン。
鐘の音が響くと、魔法師の女性が入ってきた。
「はい、みんな初めまして。私がこのクラスで魔法を教えるリーチェ・フェイルよ。よろしく。
早速だけど、みんなに自己紹介して貰おうかな。そっちの彼から」
覇気の無い自己紹介だったので名前と性別だけ網羅していく。
1アディン・ウェイバー 男
2ミルル・キグナン 女
3ユエ・レイザール 女
4シンクレア・フェルゼン 女
5ヴェルド・ジェイン 男
6グリム・コルギン 男
7メイジェル・ティンバー 女
8レイラ・エイカー 女
そして、最後に俺の番が来た。
仕掛けるなら初っ端からじゃないとね。
「俺はフィロウ・アレスタ。早速で悪いが、このクラスは俺が乗っ取らせてもらう!」
「は?」
うん、知ってた。何言ってんの?こいつ――的な視線が刺さる事は予想済み。でも痛い。
「はあ、あのねぇ。このクラス乗っ取ってどうするつもりなの?」
ため息と共に先生が食いついてきた。
「もちろん、俺が魔法を教える」
「なんで私たちがアンタに魔法を教えてもらわなくちゃなんないのよ、同じD組でしょ!」
金髪で高飛車のシンクレアが強気に言って来る。
「まあ、言いたい事は解るが落ち着け。お前らにもメリットはある」
「メリット?どんなメリットがあるって言うんだい?」
今度はさわやか系男子のアディンが食いついてきた。
「このクラスに課せられてる納付金2万リットは俺が受け持とう。当然払えなければ俺が真っ先に退学する。悪くない条件だろ?」
「ちょっと待って、何、納付金て?」
先生の疑問にはクラスで一番小さいミルルが答える。
「せんせー知らないの?このDクラスは実戦でせーとを鍛えるってゆーのをめーもくに、せーとをぼーけんしゃにして
ほーしゅうを巻き上げるクラスなんだよ?」
「そんな…」
「話、戻すけどよ。お前が2万リット持ってくれるのは良いとしてだ。俺たちに教えるって、それだけの実力はあんのかよ?」
ちょっと不良っぽい感じのヴェルドがもっともな疑問を口にする。
「ふむ、どうやって証明しようか…」
思案にふけっていると黒髪が印象的なユエが提案した。
「それならさ、先生とフィロウで競ってもらえば良いんじゃない?」
「それいいね、判りやすい」
「先生はオッケー?」
「私は構わないけど…?」
「よし、じゃあ校舎前の広場に出よう」




