追い出されちゃった。テヘ
時をさかのぼって2日前。
ギルドのクエストボード眺めている魔法使いの女性が居た。
名前はリーチェ・フェイル。
Cランクの冒険者だ。
後にDクラスの担任になるのだが、今回は彼女の生い立ちを少し覗いてみよう。
「この出来損ないめ!!」
広い訓練場で男の罵声が響き渡る。
そこには、横たわる女と見下ろす男が居た。
2人の外観は似ていて兄妹だと解る。
手に剣を持っていて訓練中だった。
「我がフェイル家は代々、騎士の家系。だと言うのにお前の剣は一向に上達しないではないか!」
いつもいつも飽きもせず、まあダラダラと家系がどうの剣がどうのと私には関係ない話だ。
家に縛られて騎士になるのなんて、まっぴら御免よ。
「なんだ、その目は!悔しかったら俺に一撃でも入れてみろ!」
ん?今、面白い事を言ったわね?
「一撃…入れればいいのね?兄さん」
私は剣を構え、ぼそぼそと詠唱に入る。
「ふん、少しはやる気に――」
「ストーンバレット!」
「うお!?」
飛んできた石を切り払う。が、それが命取り。
振り切った剣を戻すより私の剣の方が一瞬速い。
「チェストォォ!」
私の一撃が兄の頭に炸裂、そして私は――スカッ!とした気分になった。
「お前!騎士たる者が魔法を使う等、言語道断!」
「だから何?そもそも私は騎士になるつもりなんてさらさら無いのよ」
「まだ、そんな事を言っているのか!!卑怯な手を使わないと俺に一撃入れられない等、恥ずかしいと思わないのか!」
「アホなの?兄さん」
「なに!?」
「さっきみたいな攻撃をしてくる奴なんて、いくらでも居るわよ?そいつ等に負けたら同じようにのたまうつもりなの?
そもそも今まで、剣だけでやってたのは兄さんの土俵に合わせてあげてただけなの。でも、もう止めにするわ、悔しかったら兄さんも魔法使えば?使えたらだけど」
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
声を張り上げて向かってくる兄を魔法と剣でボコボコにした。
当然、剣一筋の脳筋一家でそんな事をすれば、破門が待っている。
私も例に漏れず、家を追い出された。
ここまで予定通り。
家を追い出された私はその足で魔法の師匠であるウエイン・ネスト宅を訪ねる。
「しーしょーお、私です。リーチェです」
家の扉をドンドンと叩くと、中から白い髭を蓄えた老人が出てきた。
「……その荷物、追い出されたのか。やれやれ、魔法はお主が思って居るほど便利なものではないぞ?」
「それでも、私は魔法を選びました!」
「はあ、人生の真際に大変な拾い物をしてしもうたわ。まあ、初めて会った時の様に虚ろな顔をしとるよりはマシかもしれんがの」
「師匠?」
「立ち話も何じゃから家に入るぞ」
「はい!」
師匠に招かれて家に入るとお茶を出してくれた。
「家を追い出されたと言う事はもうフェイルの名は名乗れんじゃろう」
「いえ?名乗れますよ?追い出されはしましたが、『名乗るな』とは言われませんでしたし」
「いいのか?それ?」
「それに――」
「それに?」
「私が魔法主体のフェイル家を勃興して、あてつけにしてやるつもりなので」
「お、おう。ワシの想像の遥か斜め上の回答に驚いたわ」
驚く師匠をよそに私は気合を入れた。
目的を達成するためにはまず、魔法を十分に使えるようにして冒険者になりSランクを目指す。
Aランクまではただの冒険者だが、Sランクは権力者でもある。
家の勃興など容易く出来る。
「ワシも歳を取った、無理の無い範囲で良ければ教えてやるわい」
こうして、私は師匠の家に泊まり込みで魔法の修行をするのだった。




