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転生英雄譚(裏)  作者: 甲 康展
第1章 これは、面白いことになりそうだ
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プロローグ

 深夜2時、草木も眠る時間にふらふらと帰る男が1人

ヨレヨレのスーツに生気のない顔、疲れ切ってるのが一目瞭然な歩き方

しかし、その表情は焦点のブレた目に口の端が上がって引きつった異常な笑顔だった。

昼間に人に見られたら通報されてたであろう状態でも今は深夜、みんな夢の中だ。

周りに人が居ないのもあって、自重しようという気もない。


「やっと…帰れる、明日は…休みだ…へへへ」


 深夜のテンションと休みが重なった所為で間違ったことをつぶやいていた

正確には『今日』が休みだ。


 普通なら間違えない、いや間違えても気がつく――普通の状態ならね。


 今回は2週間、会社に泊まりこみ。その前は――忘れた。

もう気づいてると思うが俺はブラック企業勤務のサラリーマン――というかシステムエンジニアだ。

薄給で激務、残業代はもちろん満額で出る訳がない。


 満額じゃなくても出るだけマシだって?

残業代は払ってますよアピールに決まってるじゃん。


 そんな所は辞めてしまえばいいじゃないかって?

その意見は正しい――俺が若かったらね。


 今から仕事やめて次の仕事探すにしても39のおっさんを雇ってくれるかって話

まあ、仕事を選ばなければ何とかなりそうな気がしないでもない――が!

いかんせん残業続きで動き回れるだけの体力が残らないのだから仕方ない。

人生()んでる。


 ふらふらと歩き、安アパートの階段を上がりドアの前で鍵を取り出し鍵穴に入れて回――らないだと!?

力を入れてもガチャガチャと鳴るだけで回る気配がない。

部屋の前まで来て抜きかけた気が一瞬で戻る。


「そんな馬鹿な…」


 冷静になれ、落ち着いて原因を探すんだ。

俺自身に言い聞かせ鍵を抜いて部屋番号を確認する。


『203』


 間違ってんじゃん。

俺の部屋番号は204だ、もう1個隣だった。


 部屋のドアを開けて敷きっぱなしの布団に倒れこむ。

漸く(ようやく)眠れる。

俺は抜いた気と意識を放り投げた。

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