ンサホッサ島原住民の行っているヌッサパホイ瞑想をやってみた結果
俺は自己啓発オタクである。自己啓発と聞くと顔をしかめる人がいるかもしれないが、俺は怪しいものだとは思っていない。むしろ自己啓発の知識を取り入れたことによって、1%でも人生が良くなれば成功だと思っているタイプの人間だ。
そんな俺には最近気になっている事がある。それがヌッサパホイ瞑想というものだ。
瞑想と言えば、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなど世界屈指の富豪が取り入れているとでも有名である。
その中でもヌッサパホイ瞑想はンサホッサ島という島の先住民が昔から儀式的に行っている瞑想で、非常にリラックス効果が高いのだという。
早速俺は書店でCD付きの本を買い、ヌッサパホイ瞑想を実践してみることにした。
以下
CD音声≪≫
主人公「」
***
≪このトラックではヌッサパホイ瞑想の神髄、ンサホッサ島の人々の呼吸法を伝授していきます≫
「そうそう。俺はそういうのが知りたかったんだよ」
≪では鼻から大きく吸い込んで≫
「すーっ」
≪口から大きく吐いて≫
「はーっ」
≪鼻から大きく吸って≫
「すーっ」
≪エラから大きく吐いて≫
「ねえよ」
≪もう一度鼻から大きく吸って≫
「すーっ」
≪耳から吐いて≫
「無茶言うな」
≪もし難しいようでしたら、呼吸をやめてみてください≫
「死ねってか!?」
≪はい吸って≫
「……まあいい続けるか。すーっ」
≪まだ吸って≫
「すーーっ」
≪吸って吸って吸って≫
「――っ……」
≪吸って吸って吸ってあと5分≫
「長い長い長い! 掃除機じゃねえんだぞ!」
≪はい、では息を止めて≫
「やっとか」
≪30分間≫
「クジラか! それも深海でイカ食ってるクジラか! もっとヒューマンカインドな設定に出来ねえのかよ!」
≪そのまま身体中をウォンパッパが満たしていくのを感じてください≫
「ウォっ……『気』みたいなもの、かな?」
≪それではゆっくりと息を吐いて行きましょう≫
「はーっ」
≪吐いて吐いて、体中のオドドンパを出していきましょう≫
「オドドンパって何なんだ。……はーっ」
≪貴方の身体は、どんどんヒャーピッピ≫
「日本語で言ってくれねえかなあ! さっきから肝心なところが分かんねえよ!」
≪ではここから、富を得るための誘導瞑想を行っていきます≫
「おっ、面白そうなのが来たな」
≪先ず、ゆっくりと目を閉じてください≫
「よし。お金のためならヤル気が戻って来たぞ」
≪想像してください。貴方は今、白い砂浜にいます≫
「あー。穏やかな海が見える、気がする……」
≪やっぱり貴方は公園の段ボールハウスにいます≫
「どっちなんだよ! あと何なんだその二択目は!」
≪やっぱり砂浜にしよっか≫
「彼女か!」
≪青い空の広がる砂浜にはあなた以外誰もいません≫
「プライベートビーチってやつだな」
≪鳥の鳴き声が聞こえてきます≫
「あー、心地いいな」
≪隣からチェーンソーの音も聞こえてきました≫
「俺の隣に何がいるんだ!?」
≪カツオを叩く音も聞こえます≫
「どんな音なんだよ!」
≪さあ、リラックスして≫
「出来るわけねえだろ!!」
≪海に目を移すと、キラキラと水面が光っています≫
「あー、眩しい、気がしてきた……」
≪一人のサーファーが波に乗っています≫
「穏やかな光景だなあ」
≪シャチに喰いつかれました≫
「サーファーああああ!!!!!」
≪海からはこんな音が聞こえてきます。バリっ! バリっ! ぐちゃっ!≫
「音がえぐいわ!」
≪気を取り直して、波打ち際まで行ってみましょう≫
「いやシャチに喰われるだろ!!」
≪目の前で穏やかな波が打ち寄せてきます≫
「全然集中できねえ……」
≪突然、海の水が全て味噌になりました≫
「味噌!? これお金の瞑想じゃないの!?」
≪さあイメージしてください。まるでウ〇コみたいです≫
「何イメージさせてくれてんだ!」
≪試しに、一口舐めてみましょう≫
「嫌だよ!」
≪これで誘導瞑想は終わりです。ゆっくりと目を開けてください≫
「終わった! 一切お金が出てこないまま終わった!」
≪次のトラックでは、体中のチャクラを開くエノゴッポリ体操を≫
「やりたくねえ!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!